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安寧よりも眠れぬ夜を

湿度の底に沈む月
舞い上がった雲に隠れる
唸り声は嗚咽おえつにも似て
竜胆りんどう色の雨が降る

夜半のしとねに積もる闇
澄ました耳朶じだを雨が叩く
勝手に軒を楽器に騒いで
眠気は浅瀬を行ったり来たり

こんな夜に考える
考えても仕方のないことを
嫌々ながらに考える
眠れぬ夜に拍車が掛かる

答えを探している
何度も打つ寝返りの先で
見つかるはずもないだろう
こんな冴えぬ思考と冴えた目で

きっと、明日は大変だろう
諦めて褥に胡坐あぐらをかいて
まあ、そういう日もあるだろう
雨音に浸って眠気を待つ

悩まぬ日が来たとして
それを安寧あんねいと呼べるだろうか
何も考えずに生きれたとして
それを私と呼べるだろうか

雨に感謝を
悩みに向き合う時間をくれた
誰よりも私が望んでいたのだろう
安寧よりも眠れぬ夜を

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