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読書好きによる選書②

 こんにちは。noteを初めておよそ1か月。毎日の更新がないにも関わらず、多くの方に読んでいただき、有難い限りです。フォローもいただき嬉しいです。今日は、ミステリー小説の選書を、第2弾としてお送りしたいと思います。


祈りの窓が呪いの窓に

 1冊目のご紹介するのは、夕木春央さんの『方舟』です。「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞をした作品とのことです。

ああ。してやられた。美しさを感じさせるほどの残酷さと潔さを持ち合わせていた犯人との推理ゲーム。救われるのは、誰か。犯人がわかったあとのラストでのどんでん返し。「私、生きて帰りたいな、どうしても。」犯人のこの言葉は憎いほど人間らしくまたあざとい。究極のデスゲームに巻き込まれたとき、自分だけ生き残ることをなんのためらいもなく選べるだろうか。タイトルの方舟、旧約聖書に出てくるノアの方舟には天窓がつけられたとあるが、残されたものにとっての天窓的存在は、地上を映すモニターだったろう。祈りの窓が呪いの窓になるとは。

『方舟』|本のあらすじ・感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

 旧約聖書に出てくる方舟を彷彿とさせる内容展開が、一番の見どころですが、それに付随して犯人の「私、生きて帰りたいな、どうしても。」の言葉は、ずしんと響くものがある。
 シンプルなのに、シンプルゆえに言葉の表面をさらっただけでも、これほどまでにあざとく、人間の醜さ、恐ろしさが伝わるところが、作者の表現の巧みさを示しているのではないかと思います。

あなたの十戒は・・・?

途中から犯人がわかったのだけれど、なぜ犯人が殺人を犯さなければならなかったのかが、最終的に作者によって明かされて少しスッキリした。同時に主人公·里英を含め、人間の闇つまり追い詰められた人間の浅ましさや、本能的な部分の残酷さ、残忍さに恐怖を感じた。個人的には、前作の方舟の方が好きだが、宗教的な価値観と人の心の闇の深さや複雑さを感じられる本作もなかなか読み応えがあった、と思う。方舟→十戒→次作といった三部作的なイメージで次回作も書いてほしいなあと思う。

『十戒』|本のあらすじ・感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

  1つ解せなかったのは、「なぜ、犯罪に手を染めなければならなかったのか」ということでしたが、最後の最後に作者によって明かされてスッキリしました。

ミステリー小説の醍醐味は

 ミステリー小説を読む醍醐味は、物語の進行と同時に自分自身も、探偵のように謎解きをすることができるところだと考えています。そして、その謎解きが自分の手ですべて解き明かされることを期待しながらも、作者や主人公に裏切られたりすることに、面白味があるのではないでしょうか。

選書第3弾に向けて

 次回の選書は「美味しいものシリーズ」でお届けできたらと思っています。読書版孤独のグルメを体現したいです。

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