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無色とは言わせない

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詩集。誰でも観られる。しかし更新頻度低め。
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記事一覧

墜落

愛は重力
ともするならば
やはり我が生は人の為などにない
さするば暴力
景色は少しずつ項垂れる
音を立てて
空が虹んでいく
幸にも不幸にも
大変に短い夜であった
人を救うのは暴力か
いやしかしと振るう手が
指し示す無実
我こそはと手を挙げた彼や彼女を
一人ずつ撃ち殺して
ここに立っていた木か何かを
尊みやがて墓になれ
愛がそこにあったと
呟いて

僕の僕の話

死にかけの虫けらにも
僕と同じように
笑いかけてくれないか
優しいつもりなのかい
殺してくれても構わないのに
君は俯いて黙ったまま
そのまま

鳴くことができれば
春を感じられたかしら
あの花が枯れた後にしか
出会えない私たち

夢写し
明星を焦がす
筒の向こう
星屑の花火
僕は人

ざっくばらん

数の数を数えられない
問題の問題が解けない
明日の明日は目指せても
昨日の昨日には行けない
次の次

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東に降りていく

手厚い歓迎には慣れたもので
いいえ以外の選択肢を覚えなかった子供たち
序盤で最後の展開まで読んでしまえば
面白くないしねと思考を殺して大人になる

成る程どうして時計を疑わない

共鳴に感じた声は精神性のバグでしかなく
山彦よりもずっと確かな方法で
最期まで貴方が存在してくれないなら
其の前に死んだ方がマシです私

花瓶に残った水を棄てなければ
次の花は咲かないという与太話

食い違えたふたりは死

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何周目?

ご利用分の料金をお支払いください

加湿したことで乾く喉
連ねた日々に精算などなく
強張った筋を切るのはいつも自分自身だ

不特定多数に向ける花は要らないが
せめて花束にしてしまったなら
守ってやりたいとは思う

どうすれば宝物になれたかな
水の泡を掬い上げるたびに絶望をして
洞窟の中で光る石を思い出すのをやめたい

つくしが鳥と遊んでいるのを見て
陽に焦がされた僕は木でした
お粗末さまです

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花冠

引かれたら押すしかないと彼は言う
目眩く一瞬に巡ってきた正に千載一遇
薔薇の花束は腐ってからが好きなのに
あの人のことは今日のうちに棄てておきなさい
共鳴で壊せるのは居間の小窓くらいだから
本当に幸福が欲しいのなら鍵を探すべきだって
本当に?

眠れないのは片頭痛のせいじゃない
ラム酒を少し混ぜたココアに酔う程度の夜
横暴な態度では白馬だけが逃げて平凡な王子
知った気になどなれる筈もなく何も知りま

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plane

少年少女の躍るランドセルが遠目に苛立つ
夕暮れのバス停に定刻通り現れた薄紅のワゴン
信号機の黄色だけがレーザーの様に目を焼く
「待たせてごめんね、さあいこうか。」
懐かしい匂いとは裏腹に知らぬ人のふりをした
涙目ではあったが笑うことには成功

黒っぽい烏が実は茶の鳩だったことに気がつく
空はすっかり煤けたようなparadox
振り返るにはとっくに手遅れだと判る
壊れるくらいなら失くしてしまえと思っ

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