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世界遺産を守るお金を集めるために

今朝未明に発生した火災は、瞬く間に、世界遺産としても知られる、沖縄のシンボル 首里城を焼失させてしまった。

思えば、今年は5月にも、同じく世界遺産のノートルダム大聖堂(仏パリ)の火災もあった。いずれも人々の心の拠り所として愛され大切にされてきた史跡だ。今回、沖縄の方々の悲嘆は想像するに余りある。

ノートルダム大聖堂の火災の際、こちらの記事を書いた。

この時は、大聖堂の再建に向けた寄付が集まっていることを題材に、日本の寄付文化前進の必要性について書いたが、今回の首里城火災に接して、改めて、日本、そして世界にとって大切な史跡をどのように守り、次の世代に引き継いでいけるのか、を考えた。

何はともあれ、やはりお金だ。

とにかく、史跡の管理維持にはお金がかかる。これは洋の東西を問わないと思う。歴史的な背景を大切にする為に近代的な防災設備の設置が限られる、管理維持のコストが高く対策が十分にできない、観光地として不特定多数の人が来場し警備の目が行き届きにくい、などの事情があることが多い。このnoteを書いている時点では、首里城の火災の原因はわからない。開催されていた「首里城祭」で何らかの電気系統の問題があったのかもしれないし、乾燥の為に自然に火災したのかもしれないし、ひょっとしたら不審火かもしれない。いずれにせよ、管理維持にもっと予算があれば、もしかしたら火災を未然に防げたかもしれないし、火災が起きたとしても全焼を避けることはできたかもしれない、とも思える。

行政からの支援や、史跡を管理する団体・組織の日々に努力(入場料など)だけでは、日々のオペレーションだけで精一杯かもしれない。まして、防災・防犯の為に大きな設備投資をすることは容易ではない。資金調達の裾野を広げ、予算を確保する点では、クラウドファンディングの流行は記憶に新しい。

クラウドファンディングとは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(Crowd)と資金調達(Funding)を組み合わせた造語(Wikipedia)

クラウドファンディングは、一般的に、寄付型・購入型・融資型・投資型に分けることができる。株式会社矢野経済研究所によれば、国内クラウドファンディングの市場規模は2017年度は約1,700億円、2018年度は約2,000億円(当時見込)で、その9割ほどは融資型という。

史跡の管理維持には、クラウドファンディングのような、広く資金を集める手段が適しているのではないかと思う。史跡は人の想いを集める場所・モノであり、人の想いから生まれた資金で守っていくのが理想だ。

一方で、人は善意だけでそれなりの金額を拠出しにくいのは事実だ。街角募金に10円や100円を寄付することの心理的ハードルは相対的に低いが、調達する側としては、コストや管理の観点で、ある程度まとまった金額(数万円、数十万円)を出してもらう人を集めたい。一方、資金の出し手としては、数十万円を出すとなれば、何か見返りが欲しくなるし、急にお金が必要になった時には資金を引き上げたい、と思うのは自然だろう。今後、資金の出し手の裾野をもっと広げ、リピーターを増やしていく為には、どのようにしたらいいのだろう。

今のクラウドファンディングの仕組みでは、原則として、一度資金を拠出したら、そのプロジェクトの満期(半年〜数年など)を迎えるまでは資金を回収することはできない。満期までに配当が得られるケースもあるが、元本が毀損するケースもある。長期間資金が引き出せないなら、相応の見返り(投資型であれば高い配当、融資型であれば高い利率)が必要となる、これは資金調達をする側には好ましくない。

長期間資金が引き出せないというボトルネックは、この持分を誰かに譲渡することができれば、ある程度解決することができるかもしれない。例えば、プロジェクトの満期は3年だが、半年で持分を誰かに譲渡して、資金を引き上げる、ということだ。譲渡できるのであれば、資金の出し手としては、もう少し見返りが少なくても納得できる。

こうした観点で、デジタル証券(もしくはセキュリティ(証券)トークン)への注目が集まっている。これは、ブロックチェーン上で発行される電子トークンのうち、証券性を有するもので、ブロックチェーンの特性を活かし、不動産受益権やファンド持分を国境を超えて安全に移転することができる。国内では金融商品取引法改正法案において「電子記録移転権利」と定義されている。まだ詳細な法規制は定まっていない為、国内での実現については不透明な部分も多いが、証券化ビジネスやクラウドファンディングに携わっている企業にとっては、既存事業の高度化可能性を見出すことができるかもしれない。