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(連載84)視力がどんどん低下して、月が8個になった:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2015年

今回は、今までの創作活動の話からちょっと離れ、

別の種類の戦いの話

です。

何と戦うか????それは

肉体の劣化

わかりやすく言えば、

「老い」 ってやつです。

苦笑


若い皆様には、まだまだ遠い未来の話、人ごとでありましょう。

私もそう思ってました。30歳、40歳、50歳、、、、

まだまだ現役大丈夫!!

っていうか、

そういう「年齢」などというものを考えたこともありませんでした。

30代初めから、アメリカに引っ越したというのもあり、外部からのプレッシャーはゼロ。人に(特に女性)年齢を尋ねるというのもタブーな国であります。

なので、自分が生まれて何年たっているのか? 

病院などで、生年月日を尋ねられた時でさえ。。。えっと。。。って考えるくらいに、忘れてた。(本当です)

しかし。。。。これが、いやでも考えさせられる事となりました。

それは視力の低下というものです。

つまり、それって老眼でしょ? と。一言で言ってしまえば、終わりですが。苦笑 やはり人生の一大事であります。


この案件、経験のあるの方々には、すぐにわかっていただけると思いますが、私の場合、50代前後から、どんどん、視力が低下してゆき、年ごとにそのスピードが驚くほど加速度的になってゆきました。

最初は、レストランのメニューが見えにくくなった。(あるある)

それで、でっかいシャーロックホームズのような、虫眼鏡をいつも持参するようにした。

それはそれで、友達なんかに、いちいちウケたので、しばらくは、この方法で、なんとかキャラを保った。笑

それから半年くらいしたら、ケイタイが見にくくなった、、、、、

友達からケイタイの写真を見せられても、実はよく見えないのだが、話の流れを折るのは、ちょっと悪い気がして、見たふりして「すごいね〜」と答えていた。(あるあるでしょ?)


単に、まあ、老眼鏡を使えば、解決するのでは?と思われるでありましょう。

そうなんです。。。。

ただ、老眼鏡を作ればいいやと、

それで、眼科にいって、老眼鏡なるものを作ってもらって、しかも、初めはプラダやディオールのフレームを選んだりなどと、身分にふさわしくない事をやったり、

また少しでも、会話中にかけかえたりする手間を省こうと、遠近両用などにしてもらって、、、見た目、ルックスにこだわったりしていました。

それがだんだんと、半年ごとに使えなくなり、どんどん作り替えないといけない状況に。

しかもですよ。遠近両用とかでは追いつかないレベルになってきたんです。

つまり、

人間の視野というのは、距離は遠いと近いの2種類では、ないですからね。

その間に無限の距離のグラデイションがあるわけですよ。

つまり、むちゃ遠い風景、空とか山とかに始まり、通りの向こう、10メートルくらいから、家の中でも 反対側の壁、5メートルくらいとか。

近くなってくれば、もっと小刻みになり、

2メートルくらいのテレビとかスクリーンを見るくらい距離

1メートルくらいの距離、人の顔とか。

そして、50センチくらいのパソコンの距離、

20センチくらいのケイタイの距離、

15センチくらいの、針仕事とか読書の距離。。。。


こんなふうに、いちいち自分の作業に応じて、結局はメガネが7個くらいが常時、必要というレベルになっていきました。

映画館に行ったときなどは、座る位置によって、スクリーンがボケるので、毎回、最低でも3種類くらいのメガネを持参せねばなりませんでした。

これだけの別々のメガネを、その場に応じて使い分けるという、ものすごい面倒くさい時期がもう、何年も何年も、、、つづきました。

また、メガネだけではありません。

私の場合、メガネだけで解決できない事もありました。

たとえば、バンドのライブはどうする?問題


基本、メガネがないと何も見えないのですが、いくらなんでも、ライブの時に老眼鏡て???笑

一応、ロックですし。。。。爆笑

この頃は、もうメガネがないと、アンプのメモリも読めない状態になってました。

演奏曲目のリストなども、ものすごい巨大なフォントで書いて、ステージの床にはったりなどしてましたが、それも限界になって、

結局、ライブの時だけのための「老眼用のコンタクトレンズ」なるものがあると知って、それを作ってもらいました。

それをステージに出る直前に着装する。終わったら、すぐ外して、メガネに。

しばらくはこれで、なんとか、やっておりましたが、

しかし、、、、、これもまた、コンタクトレンズの経験がある方はわかると思いますが、、、、、結構、大変ですよね?


あのレンズを湿らせて、目に入れるっていう、細かい作業!!

片手で、レンズを微妙に指の先にのせて、片手では、目を広げて。。。っていう。

それにまず第一、目に入れる時は目が見えませんからね。

指の触感などを覚えて、練習して、なんとか方法を習得。

もちろん、これも半年くらい毎に、度をやりかえた新しいコンタクトレンズと作り続けていきました。


語るだけでも、面倒くさいこの大変さ。。。。つまり

めんどくささとの戦いです。


しかし。。。。。こんなに、一生懸命、戦っているのに。。。。


時間の経過とは、残酷なもの


事態はどんどん、悪くなってゆきました。

家の中でメガネをかけていても、物体の前後関係が、わかりにくくなった。

そして、だんだん光自体がやばくなってきたんです。

対向車の車のライトが異常に眩しいので、夜にはメガネの上からサングラスをかけて運転するようになった。

そして、コントラストのある光景、たとえば光と影が同時に目にはいってくるような時に、どちらに焦点を合わせたらいいのか、わからなくなり、、

その結果、夜になると信号がどこにあるのか、わからなくなり、、、

なので、夜の運転はやらなくなり。。。。

そして、ついに。。。。


裸眼で月をみると8個になっとりました。。。。

それも、全体的に月がボーっとなってるんじゃなくて、

ちゃんと一個づつ数えられる状態で、くっきり8個ありました。


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ここまでくると、ついには、眼科の先生が、手術をした方がいいと。

つまり、白内障になってるという決断をくだした。


あ、うちのばーちゃんもやったやつだ。。。。

よく、ききますよね。「白内障の手術って、すぐできて、すぐ、見えるようになる」って。

もう、だったら、さっさとやっときゃ、よかったと思いましたよ。


しかしながら、目の手術、思ったより、怖かったです。


これですよ。まさに。

作品解説-ルイス-ブニュエル-サルバドール-ダリ-アンダルシアの犬


もしくは、軽く見ても、これ。

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実際に、麻酔をしてますから、まったく痛くないですが、なにやら、刃物のようなものが近づいてくるのは、わかりますから。

しかし、目を閉じる事ができませんので、かなり怖かった。汗

人間て、恐怖の瞬間は目を閉じるものなんだな。と、あらためて実感。


私の場合、片方ずつわけて、やりました。

まずは右目。そして、ある程度回復してから左目という感じです。

2回目の時には、右目がある程度見えるようになってたので、眼科の先生が手術室にはいってきたとき、手術着がVネックで、それまでは見えてなかった胸毛がボーボーにはえていたのをわかって、ちょっとびっくりした。

つまり手術中、ずっと男の胸毛に自分顔が埋まってる状態、、、。苦笑


そして、無事両方の手術がおわり、両目が見えるようになった瞬間。

結果は、もう、言葉に表せないくらい、感動でありました。

目にはいる全てのリゾリューションが倍増して、隅々まですべて見える!!

なにもかもが、薔薇色!!となった。

人生、文字通り薔薇色です。

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それまでのメガネにさようなら。合計すると30個くらい。

全てを段ボールにぶち込んで、ガレージの隅へ。



これで世界が、生活が、人生が変わった。。。。。

目にはいる、全てのものがイキイキと、生命力に溢れ、色そのものがまるで、今、生まれてきたようにみずみずしく、輝いて、美しく調和している!!

空気さえも、見えるように思えた。


自分のなかのクールベが、そして、ルノワールが、スーラが、一気に、立ち上がった!!

クールベの、この波の泡の一粒一粒に、やどっている生命のエネルギーが、体をふりかかってきた。(見たのは本物ではなく、印刷ですが)

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ルノワールの、移ろいやすい瞬間の光のもろさが、理解できた。(これもネットで見た程度ですが)

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スーラの、純粋な色の粒度がはっきりと感情をもって伝わってきた。(これも小さな本でも確認できた)

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同時にモネやセザンヌは、、、、後期は白内障だったのかもしれないなーとも思った。(個人的見解ですよ)

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眼科の先生いわく、これからも加齢は続くので、老眼鏡は、また必要になるだろうが、しばらくの間は大丈夫だと。(これから7年たっている現在も老眼鏡は、一個だけで、すんでいる)

もう、眼科の先生と、テクノロジーに感謝するしかないです。。。号泣


加齢というものは、これ以外でも、毎日のように進んでいる。

更年期障害やら不眠症やら、関節の痛みやら、いろいろあるのだが、もうこの視力が回復したという事だけで、私は十分だ!!


このリセットで、私は、再び年齢を忘れた。笑

そして、私のやりたい放題人生は、これ以後も続いていった。。。。。

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これからも引き続き、よろしくお願いします!

読んでくださって、どうも有難うございました。

L*


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