見出し画像

無心になると吠えるヤツも怖くなくなる

コーヒーと紅茶のどちらが好きかと言ったら、私はコーヒーが好きだ。特に豆から自分でガリガリ挽いて粉にして、紙フィルターにお湯を注ぎこむとカカオ豆の香りやフィルターを通してお湯がプツプツと泡立ちながらコーヒーになる瞬間を見つめているのが何とも もどかしくて濃い茶色の液体にますます愛着が湧くのである。そして無心になれる一番の作業行程が、コーヒーを挽く時だ。何も考えずひたすら無になる時間は、偉いお坊さんには怒られそうだが、座禅をしている感覚ってこんな感じなのかもと思う。

画像1

ヨドバシカメラのポイントで買ったカリタ製のコーヒー豆ゴリゴリ機。
本当の名前はもはや憶えていない。

無心が私を成長させたのは、中学生くらいの時だ。私は性別上は女子で、学生時代は女子高に通っていた。女子高といえばキラキラしていそうだが、実は女子独特のルールがあり、私には本当についていけない世界であった。
例えば、職員室、トイレ、購買にパンを買いに行く、など一人で行けばいいものを必ず誰かとツルんで行動を共にする。また友人グループの一人が掃除当番だったり、クラブ活動で遅くなると言ったら、他のメンバーは終わるまで何するわけでもなくただ待っているのだ。今こうやって書いていても恐るべし集団行動なのであった。トイレにひとりで行けないなんて、小学生レベルだ。それでも<いやひとりで行って来たら>なんて言おうものなら、次の日からはグループ女子からは無視され、顔を合わせるとコショコショ耳打ちしながら、<ねーーー!そうだよねーーー!>とわざとこっちを見ながら大声で卑下するのだ。まるでプチいじめ、昔のドラマ中学生日記の様だ。

しかしそんな集団の中にも孤立を楽しみ、1匹オオカミのように気ままに過ごしている女子もいた。集団女子達はそんな彼女を見ると、いつもの様に<いやーねーー!そうだよねーー!>とわざとらしく大声でまくし立てていたが、全く動じずむしろ<馬鹿ね>と言わんばかりに堂々としていた。最初の頃は仕方なくグループの一員になっていた私も、自分の時間がどんどん奪われているのがおかしいと感じ始めていたため、そんなクールな彼女がカッコよすぎて憧れていた。

ある時思い切って、彼女に<あんな風に、集団にコソコソ言われて嫌じゃないの?>と聞いてみたら、やっぱり彼女はカッコよく答えてくれた。
<あのさ、無理して集団に入るも嫌だし、トイレだって職員室だって1人で行ける。時間も大事だから人の用事で待つなんてもったいない。あの子たちがぎゃんぎゃん言うのは無心になれば何とも思わないし、弱い犬ほどきゃんきゃん吠えるのよ。>

もう目からうろこでしたね。【無心と弱い犬】そっかー何も考えなきゃいいんだ、犬が吠えてると思えばいいのか。私は彼女のおかげで、目が覚めた。ドラマでも必ずこうゆうクール女子が登場して、一番人気の男子とツンデレ恋物語が始まるのだが、残念ながら女子高なのでそんな発展はなかったのだが、彼女のおかげで私もめでたく2匹目のオオカミになれたのであった。そしてやっぱり、ツンデレ恋物語もなかった。

大人になった今でも相変わらず、ギャンギャン、キャンキャンという輩は後を絶えない。客にどんなに理不尽なことで怒らたり、上司に嫌味を言われても、私は頭の中で<ゴーリゴリ>と無心にコーヒー豆を挽き続けるのである。



面白かったら、ぜひサポートお願いします★頂いたサポートは、コンパ道場の活動費として使わせていただきます。 Twitter:@dojochogo