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香川 隆登/GOCKO
2021年4月10日 02:05
『門野推し』本作は、重苦しいテーマを扱いながらも登場人物の心情が、花やその花の香り、その色と共に鮮やかに描かれている。父に呼ばれ佐川の娘を貰うよう言われた後、気分の優れない代助は真っ白な鈴蘭を鉢に漬ける。そしてその花の香を用いて世間との調和を図り、眠りに落ちる。そして白い大きな百合は代助と三千代にとって特別な花だ。その花の香りと共に、二人の思いが何度もこの花の存在を通して描かれている。
2021年1月19日 19:30
およそ100年前の日本のとある夫婦の話。テレビやラジオといった電波に惑わされる事もなく、日々の暮らしの中に行事があり、秋の日和には太陽の日射しを感じ、冬になれば毎晩寄り添って仲睦まじく火鉢で暖をとる二人の生活は、とても静かで新鮮極まりなく、私が日々過ごしている時間とは異なる時間を二人の生活に感じた。そして多くの豊かな時間を現代は失っているのだと思った。しかし、互いに寄り添い合いながらひっそり
2021年1月19日 19:26
10代の頃、初めて『こころ』を読んだ。当時どんな感想を抱いたのか明確には覚えてはいないが、恋を知らない"私"や、先生が告白する若かりし頃の恋のいさかい、Kの苦悩、に感情移入していたのだろう。若さというものは経験が乏しく、分別がなく、未熟だ。今になって思えば、当時の私にとっては"恋愛の苦悩"みたいなありがちで定型化されたものしか、この物語からは感じられなかった。(引用始め)汚くなった年数の多