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ギフテッドの子どもが経験する「積極的分離」について

京都大学 教育学研究科 認知心理学講座の修士課程を休学し、京大生で運営するGOALOOK学習塾の副代表に就任。現在はギフテッド教育に関心を持ち、オンライン教育サービスdialogueの立ち上げに取り組んでいます。(サービスの詳細はこちらから)

今日はギフテッドの子ども及び青年の発達過程を説明する理論として知られる「積極的分離理論」について、私自身の頭の整理のため、私なりの解釈を書こうと思います。また正確さをある程度犠牲にして、分かりやすいカジュアルな表現で書いてみます。なので正確に知りたい方はこちらの記事などを参考にすると良いかと思います。

「積極的分離理論」とは1960年代にカジミュシュ・ドンブロフスキという精神医学者が唱えた理論で、ギフテッドと呼ばれる平均よりも顕著に知性の高い子どもたちや十代の若者たちがたどる発達の過程を5つのレベルに分けて示しました。

レベル1:Primary Integration 「初期統合」
このレベルでは食べたい、寝たい、といった生物学的な欲求や、「テストで良い点を取って褒められたい」「かけっこで一番になって目立ちたい」というような承認欲求をベースとした人格が形成されます。いわゆる「普通の価値観」のことで、多くの人は疑問を持たずにこのような価値観を受け入れて大人になっていきますが、ギフテッドと呼ばれる子どもの場合はこれに疑問を持ち、レベル2へと入っていきます。

レベル2:Unilevel Disintegration 「水平基準の分離」
このレベルでは皆んなが従っている「普通の価値観」に従うことに疑問を持ち始めます。「なぜ先生の言うことを聞かなくてはいけないのか?」「なぜ宿題をやらなくてはいけないのか?」など、あらゆる疑問に対して答えを求めようとしますが、納得のいく答えが見つからず思い悩みます。そして「普通の価値観」に素直に従えないことを周囲の友達や先生から否定される経験をすることで、自己肯定感が下がることも多くあります。

レベル3:Spontaneous Multilevel Disintegration 「複数基準の分離」
このレベルでは「自分の価値観」を見出して、それに沿って判断、行動するようになります。例えば「学校の先生は生徒一人一人のことをちゃんと考えないから尊敬できない。そんな人の言うことを聞く道理はない。」というように、明確な倫理観と論理を持って行動をするようになり、そのようなアイデンティティの形成により自信も生まれてきます。しかし自分の論理や価値観へのこだわりが強い状態とも言えて、それゆえに理不尽な価値観やルールを押し付けられることも少なくない学校や社会にうまく適応することが難しいため、人間関係などの問題が尽きません。

レベル4:Directed Multilevel Disintegration 「意識的な複数基準の分離」
このレベルでは具体的な経験から「自分の価値観」に執着することが自分を苦しめていくことに気づき、自分と異なる価値観の背景にある、色々な立場や考え方を理解するようになります。例えば学校の先生に対しても「 先生という仕事はめちゃくちゃ激務で大変らしい。そんな状況だと生徒一人一人に目が行き届かなくても仕方ないよな。じゃあ自分が困っている友達を先生の代わりに自分が助けてあげよう。」と自分とは異なる他者の考え、立場、背景を認めた上で、利他的な行動を選択するようになり、このレベルになると人間関係などで生じる問題が徐々に起きなくなっていきます。

レベル5:Secondary Integration 「二次統合」
ここではレベル4での具体的な経験から形成された、多角的で柔軟な思考力や、利他的な価値観がより高度に抽象化され、新たな人格として統合されていきます。

例えばレベル4で経験した先生との関わりにおける具体的な気づきから、「自分と先生とで起きていた対立も、この世界で起きている戦争も、本質的な原因は同じである。それは自己の利益や価値観に固執し、相手の立場を鑑みることの出来ない人間の愚かさ故である。では自己の利益や価値観への囚われを人類として乗り越えるにはどうしたら良いのだろうか?」など、より高次元で普遍的な思考をするようになっていき、社会活動、学術研究、芸術などの活動として昇華されていきます。

このレベルまで来ると天から与えられたギフテッドな才能が最大限に発揮されることになります。

以上が、積極的分離理論に関する私の個人的な解釈になります。

私自身、現在dialogueというオンライン対話サービスを立ち上げに取り組んでおりますが(その経緯はこちらの記事から、サービス概要はこちらから)、そのサービスの価値を再考する上で、この記事を書くことはとても良い機会になりました。

レベル2の状況に陥り、悩み苦しんでいるギフテッドの子どもが多くいるだろうと思います。このような子どもの場合、まずはその子の話を聞いてあげて共感と承認をしてあげることが大切だと思います。

そして徐々に心の傷が癒やされてレベル3の状態になり、ある程度の自信や元気を取り戻してきたら、次のステップに移りこの社会での生き方を模索する段階になるでしょう。

その段階において知的な対話を通して幅広い教養を身につけて、社会を俯瞰する視野に立って物事を見ることで、子どもの価値観や論理とは一見異なる考え方の背景にある思想、社会情勢などに思いを馳せる。

そんな体験の中で、レベル4、レベル5への子どもが成長していく過程(具体的な体験談はこちら)を、子どもに寄り添ってお手伝いしていくことが、我々のミッションだと再認識しました。

それでは、また。

オンライン対話サービス dialogueについて

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