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TOC - 改めてフローについて考えてみる

こんにちは、渡辺薫です。
今回のnoteでは、改めて「フロー」について考えてみます。

「フローの改善」はTOCの中核的な概念の一つです。

ザ・ゴールの発表は1984年。Amazon創業の10年前です。当時大ヒット中のNECのパソコンPC-9801は、16bitCPU, クロック5MHz、メモリー640kBでした。日本でNTT以外の事業者が携帯電話のサービスを開始したのは1989年です。
クリティカルチェーンの発表は1997年。日本でもインターネットの商業利用が始まり、一部の企業ではT1回線(1.5Mbps)が導入されていましたが、ほとんどの個人はモデム接続でインターネットを楽しんでいました。最初のブロードバンド環境であるADSLの本格的な提供は2000年まで待たなければなりませんでした。

この時代の産業構造に基づき、ザ・ゴールではWIP(仕掛品)のフロー向上(DBR)そしてクリティカルチェーンではプロジェクトのタスクのフロー向上(CCPM)が中心に解説されています。皆様ご承知のとおり、DBRとCCPMは劇的な成功をおさめました。しかしながら、私は劇的な成功があったからこそ、DBMやCCPM適用にあたっての重要な前提条件への意識が希薄になってしまったのではないかと危惧しています。ここでわたしが指摘しておきたい前提条件は以下の2点です。

✔ DBRもCCPMもWIP(仕掛品/仕掛タスク)をタイムリーに加工リソース(人・機械・装置)に割り当てる手法である。加工リソース(人・機械・装置)は、割り当てられたWIPの加工を(若干の時間的な不確実性はあるとしても)完了できることを前提としている。

✔リードタイム短縮・納期遵守率向上だけが競争力(差別化)の要因とは限らない

もちろん、WIPのフロー向上の重要性はいささかも減少しているとは思いません。しかしながら、現在の産業構造において、

✔ 加工リソース(人を含む)は、割り当てられたWIPの加工を完了できることを前提とし、
✔ 競争力向上に向けてリードタイム短縮・納期遵守率向上にフォーカスする

という姿勢で経営を行うのは、あり得ないことだと、私は思います。

この20年間に多くの日本企業が以下のようなことを経験、実感していると思います。

✔  製品のデジタル化を進めた結果、従来の組織や人員では製品の開発が進まなくなった
✔ 大規模情報システム開発では要求開発や要件定義工程の遅延が大きい
✔ 情報システム開発プロジェクト失敗の原因の多くが要求開発・要件定義工程にある
✔ 「何をつくるか/どんな価値をつくるか」が競争優位上、重要になってきている

これらの問題を解決するには明らかにDBRもCCPMも無力です。

それでも私は、こうした問題を解決するためには「フロー」に着目するのが良い方法の一つだと考えています。フローに着目する、フローを改善する、だけですべてが解決するというつもりはありませんが、ゴールへの到達を阻害する要因を特定し、ゴールへ向かう組織の働き(明確な方向性をもつ大きな流れ)を改善することで、解決への一歩を踏み出せるはずだということです。

DBRやCCPMでは目に見えるWIPの流れに注目しました。現在の新たな課題の解決に向けては、簡単には目で見ることのできない「ナレッジ」や「ケイパビリティ」のフローに着目することが重要ではないかと、私は考えています。

7月28日(水)午後に予定している、私のチームカスタマーサクセスオフィサー(CCSO)就任記念のレクチャー(兼GSC創業20周年記念対談の第一回)では、ザ・ゴールが出版されてからの、産業構造の変化と、課題領域の変化を振り返り、今新たに取り組むべき「フローの改善」に関する考え方と実践例を、村上悟さん(GSC創業者&CEO)と議論します。お楽しみに。

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