見出し画像

書けるときに日経日記 2021年8月3日

■全体感
環境問題や米中問題で、様々な主導権争いが起きている。
資本主義である以上経済的な成長が最優先に来るため、米中のデカップリングにしても、CO2の削減にしても、社会全体が望むように物事が進むわけではないということがよくわかる。

国としての判断以上に、個別企業としての存続や成長の課題があり、その原動力は経済的なものである。

このようなことを考えさせられる記事構成であった。


■今日の数字
・59%→中国の外貨準備のドル依存率。20年前は87%であった。

・15%→ IMFにおいて重要事項の実質的な拒否権を持てる出資割合。各国のGDPをベースに算出しているが、中国経済の台頭によって米国のGDP比率が現在の17%から低下することで将来的に15%を割り込むことが想定される。

・8%→ EUのCO2排出量は世界の8%にすぎない。

・9割→ EVの生産に欠かせないレアアースの加工で中国は9割近いシェア。リチウムとコバルトは6割前後。

・600億円→GCAの買収総額

・1.4→東京都内のコロナの実効再生産数


■所感
新型コロナウィルスの感染者数の増加が止まらない。指数関数的な増加と言うのは恐ろしい。
ワクチン接種の進行による重症化率の減少と、新規感染者数の増加スピードとの勝負。
そして新規感染者数の増加が指数関数的である以上、新規感染者数の増加スピードの方が勝ってしまう。

実効再生産数を抑える取り組みがどうしても必要になってくる。

EV基幹装置、主導権争い 業界勢力図一変も
車部品のジヤトコが量産、参入組は日本電産

エンジン車と比べて、EVはパソコンの部品のように水平分業型になることが想定される。

特にEUはハイブリッド車も含めたエンジン車の販売を2035年までにストップする。
自動車産業全体が、水平分業型になったとするとその中でわずかに残ったハイブリッド車の製造を垂直統合型の現場のエンジン車モデルで推進する事はなかなか難しい。

つい以前までは変速機メーカーとして存在感のあったジャトコは、2025年までにEVの部品の量産を始めると言う。
既にある程度見えていた未来に対して、既存の得意分野をある程度制限してでも大幅な投資を進めていく形判断がなされたのだろうと思うが、EV車においてもジャトコが主要部品を量産して提供することでEV車の業界においても主導権を握れるとすると企業として非常に素晴らしいことだと思う。

一方で、エンジン車の垂直統合された業界に属するティア1以下の無数の企業はジャトコのような会社ばかりではない。むしろそうではない会社の方が圧倒的多数であろう。
EV化シフトに耐えられず、事業転換がうまく進まないことも想定される。

以前の記事でもあったが、EV車はほとんどすべての電源が再生可能エネルギーで賄われる場合に限りクリーンディーゼル車などよりもライフサイクルにおけるCO2排出総量が少なくて済む。
一方で、通常の電源構成によってEVの電気が賄われる限り、ハイブリットいやクリーンディーゼルに対してCO2排出において有利であるわけではない。

単純に4億5000万人の市場を後ろ盾としたEUの戦略的なルール作りに支配されようとしているだけとも言える。

自動車産業に関わりのある労働者は日本の就労人口の約1割程度にのぼる。6,000,000人弱の人が自動車産業に関わっており、その人たちの雇用に密接に関わる事態である。
もちろんどう考えてもEV車の方が有利なのであればEV車にシフトするべきであるが、粘るだけ粘ってとともに、エンジン部品メーカーはジャトコのように事業転換も視野に入れた探索を推進する必要があることも確かだ。
今と同じようにエンジン車が売れ続けることがないことだけは確実に言えることなので、存続するとしても事業規模を相当新なければいけない。もちろんその中で残存者利得を得る企業も少しはあるだろうがそれを狙う企業が多過ぎれば単なる悲惨な状況しか生まないだろう。


シーノミクスのいま2 対立のはざま、悩む米企業

まさに中国の市場としての魅力が、デカップリングを実現させないであろうと思わせる具体的な事例の記事。

資本主義と言う経済的な成長を前提とした社会である以上、CO2の削減や中国の台頭に対しての牽制など、国家や地球にとって望ましいとされる動きを個別企業の経済的な成長と言う最優先事項が阻んでしまうと言うことである。

記事にもあるように、個別の企業は否応なしに自国政府との協調か自社の成長かの踏み絵を迫られる。そのような状況の中で自社の成長を選択しないと言うことが、競合他社からの競争力の減退を意味することになる。

それを政府が補助金によって固定する等は個別の企業の累積の経済規模の大きさから到底現実的ではなく経済的な成長を犠牲にする事はできない。
それを経済的な成長を補助金等によって補填せずに、個別の企業にデカップリングを強制すると言う事は、民主主義的な資本主義として破綻していると言わざるを得ないだろう。

中国は既に市場として魅力的な規模になり、そして米国を中心とする各国の有力企業とのサプライチェーンを含む複雑な取引関係を構築するに至った。
そうなった今としては資本主義を推進する以上、米国と中国の結びつきは維持向上せざるを得ない構造になっている。

日本企業においても同じことが言えるだろう。
日本と言う市場が少子高齢化や人口減少によって魅力が徐々になくなってくる中で、他国に子経済成長を求める上で、米国や中国といった今後も成長が見込まれて人口規模も大きい市場を無視することはできない。

その上で、どちらでも良いのであれば地政学的なリスクや政府との関係を考慮して、中国よりも米国を優先する動きは出てくるだろうが。
そういった地政学的な問題なども踏まえたM&Aの米国での発生割合を意識してGCAのM&Aはなされるのかもしれない。


M&A助言会社GCA、米投資銀が買収へ
600億円


外資系企業が日本の会社をM&Aする話はあまり聞かなかった。
特に今回のM&Aは、日本企業が米国で行うM&Aを1つの期待値としていると言うことで日本企業の潜在的な成長が評価されている取引とも言えるのではないか。

とは言え、このM&A自体が狙う収益源の主なポイント買い手は日本企業であれは米国内で起きるM&Aと言うことだ。
結局日本企業が、日本国内の市場ではなく海外の市場を拡大する動きをする中でトランザクションが生じて、そこからの収益を得るためのM&Aと言うことである。

日本としての市場の魅力と言うよりも、日本企業の成長性に対して投資が行われたと見るべきで、日本企業の成長は日本市場とデカップリングしていると言う事でもある。

事実、新型コロナウィルスの影響で中小中堅企業や飲食宿泊サービス等を中心とする企業が苦境に喘ぐ中においても、上場企業を中心とした大企業は好業績を上げており過去最高益や、業績上方修正などが相次いでいる。

これらの企業は、主に製造業が中心で製造する拠点と市場をその都合によってある程度自由に選べる企業である。
いち早く経済が回復する欧米や中国に市場をシフトさせて、経済回復の恩恵を受けることによって日本そのものの低成長からデカップリングした成長している。

そういった企業行動としては当たり前のことではあるが、日本と言う国からしてみると大手を振ってありがたいとは言えない状況の中で、その構造を見越したM&Aと言えるだろう。
もちろん、日本の対外投資が進めば所得収支の増加によって経常収支のプラス幅が増えるため、日本経済にとってもある程度は望ましいことではある。


「再生産数」宣言後も上昇 感染拡大の目安
都内1.4台、人出減らずデルタ型に勢い

変数の増加幅が、その変数自体に比例するものを指数関数的と呼ぶ。

新型コロナウィルスの新規感染者数は、まさにこの指数関数的な増加を示しており、この記事に記載している実効再生産数のべき乗で増加する。

実行再生産数は、感染者1人から何人にうつるかを示した指数であり、それが1を超えればべき乗によって増加量が急拡大する。逆に1を下回ればその分だけ感染者数が急減する。

ドラえもんで出てくるバイバインと言う道具で、栗饅頭が5分で倍になると言う話があったが、あれはコロナウィルスでいう所の実効再生産数が2を示している。
もちろん新型コロナウィルスは5分と言うわけではないので増加幅はバイバインほどではないが。

新型コロナウィルスの重症者数は、新型コロナウィルスの新規感染者数を踏まえた累積感染者数から一定の割合(重症化率を乗じて)で出てくる。

ワクチンの進行によって、特に重症化率の高い高齢者のワクチン接種率が上がっているため重症化率そのものは大幅に下落している。
ただ、さすがに新規感染者数がべき乗で増加している中で、ワクチン接種によって重症化率がべき乗で下落しているわけではない。
とすると、実効再生産数が下がらなければ重症化数は増加していくことになる。

東京は、重症化病床が150ちょっと程度しか存在しないためもうすでにキャパシティーオーバーが簡単に見えてくる。
やはり重症化病床及び重症化患者に対応できる人員の不足が悔やまれる。
重症者になるには、新規感染から10日程度の時間を要するとされ感染者数の評価から10日程度のタイムラグを経て重症者数が推移することになる。

やはりこのまま新規感染者数のべき乗の増加を放置すると重症者数で入院キャパシティーがいっぱいになることは目に見えている。
人出を抑えて実効再生産数を落としていく必要がある。

重症化率を下落させるためには、重症化する可能性が高い年代からワクチン接種率を高める以外にやり方は当面見当たらない。ワクチン接種を進行させながら、人の行動を抑えると言う今の施策以上に最適な方法は無いだろう。

重症者医療キャパシティーと、ワクチン接種の進行速度、これらがそれぞれ高まらなかったことが悔やまれるが現場は悔やんだところで変わるものではない。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?