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【読書感想】選択的夫婦別姓反対論にみる性差別/ミソジニー:制度導入“不要”論に着目して(著:鈴木彩加)

夫婦別姓に関する論文を読んだので、その感想を書きます。感想です!!考察ではないです!!
下記で論文をまとめています。

 一読して、面白い分析&考察だと思いました!!
 選択的夫婦別姓は、反対派がいたんですね。賛成派が少ないから社会に声が届かないのかと思っていました。賛成派以外の人は無関心だと思っていたのですが、反対派がいたんですね!!

 反対派の意見の根拠として、「選択的夫婦別姓は不要だ」という論があるようです。その3つの論理としては、下記でした。

 ①日本という国に不要→日本の同姓制度は独自のものだ、伝統だ
 ②法/社会として不要→事実婚等で対応できているのに、わざわざ少数派のために変える必要はない
 ③個人として不要→経験したが問題なかった、困っている人は周りにいない

 これ、個人的に唸ってしまいました。選択的夫婦別姓については自分の中でホットトピックなので「なんで不要なの!!」と思ってしまいますが、それ以外のマイノリティに関するニーズであったら、同じような不要論を言ってしまうかも…!全然、ありうる!と、心の中で冷や汗をかきました。

 鈴木先生の結びに、こうした不要論には他者の観点が抜けていることが指摘されていました。即ち、自分はそうだったかもしれないけど、あなたとは違う他人はこういうニーズを求めているんだよ、という観点がない、と。そして、その観点を積極的に排除し、過小評価しているとも書かれていました。

 これについては、そうだよなあ…と思うと同時に、半径3mより外の他人を尊重するのってかなり難しいし、知的体力が必要なのではないかなと思いました。私はまだ出来ません。「えっそんな風に困る人がいたの…知らなくて、ごめんなさい」という罪悪感は一生感じ続けると思うし、想像も及ばない人がいることを受け入れる、その人のニーズをちゃんと聞き、ニーズを実現するように自分の行動を変える、というのはすごくハードルが高く感じる。。。実際に、アンケートデータの中で、「女性だけど・男性だけど、改姓して困らなかった」「周りに困っている人がいない」というようなものがあったそうです。

 ただ、鈴木先生が分析結果からおっしゃっているのは、他人を単に尊重できないというわけではなく、選択的夫婦別姓の反対派は積極的に賛成派を監視し、彼ら彼女らのニーズを不要だと矮小化・否定しているということでした。それがミソジニーの態度と一致すると解釈できるそうです。

 私個人としては、事実婚で結婚しており、選択的夫婦別姓に賛成です。今まで、親族や周囲の人に事実婚であることの理由を説明するための論拠づくり、話題探しみたいなことを主にしてきました。その一方で、反対派の意見はあまり聞いたことがありませんでした。そもそも、明確な反対派がいることをあまり知りませんでした。ただし、最近は本noteにまとめているように、2000年代以降の日本においてはジェンダーバックラッシュと言われることが起きていたことを知る機会もありました。反対派がいて、その人たちが政治的な活動をすることにより、ジェンダー平等が後退することもあるというロジックが頭の中で出来たところでした。良いタイミングで良い論文に出会えて今日もハッピーです。

 生まれ育った環境の中で、似た人を一人も見たことがないような人たちのニーズを、排除せずちゃんと聞いて、過小評価しないこと、そしてその人たちのために行動を起こすこと。

 これは一生、心がけて、続けていかなくてはいけない!


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