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AmazonレビューのCMは小麦アレルギーの人を救うのか? -「買い物の数だけ、ストーリーがある。」米粉篇 A-

土曜日の昼、録画していたバラエティ番組を見ていたら、途中で流れてきたCMに、自分でも驚くほど心をかき乱されたので書きなぐります。

まず、該当のCMをご覧ください。
2018/5/7に公開され、同年5/19 18:00 現在 160万回再生を超えています。



最後まで観ましたか?
どう思いましたか?



「美しい話だ、自分も小麦アレルギーの子どもを助けたい」と思った人もいれば、

「大抵のものが手に入るAmazonは素晴らしい」と再確認したり、
「これからはレビューをもっと見てみよう」
と思った人もいるでしょう。

小麦アレルギーである私は最初
Amazonが小麦アレルギーを取り上げてくれるなんてすごい!
とシンプルに感動しました。

思わず巻き戻して2回観ました。

でも、2回目を見終わった直後からすごくもやもやしました。

小麦アレルギーが20歳で発覚してから7年経った私は、外食が苦手で毎日自分でお弁当を用意して会社へ向かう。
職場の同じ部署から人が辞めたおかげで仕事は増え、23時退社を1週間続けていたら土日の作り置きも食べ尽くし、小麦不使用のインスタントカレーと冷凍ご飯で木金の2日間をやり過ごす。
土曜の昼に起きて、洗っていない食器が2日分溜まったシンクと金曜日の朝にぶちまけてしまったインスタントコーヒーまみれのキッチンを眺める。
くたびれた丸の内OLが好みの人がいたらその場で投げキッスをしてしまいそうな日常。

CMで目線にたつ女性は、たまに会う小麦アレルギーの姪の子のために1度小麦不使用のパンを作ったら喜ばれたという素敵な思い出をAmazonレビューで発信する。


たった一度の、素敵な思い出。


2日分の食器を洗いながら、ぶちまけてから1日放置したせいで湿気を含んでこびりついたインスタントコーヒーの粉を掃除しながら、私の抱えたもやもやについて考えていました。

■私はどうなりたいのか


もっと広く、グルテンを気にしなくて良い生活ができる環境が整って欲しい。

その願いは変わらない。

つい最近、レーシック手術を受けた当日に夕ご飯を作る元気がなくて家で横たわっていたら、
2年以上同棲している彼に

「夕ご飯作れないなら買ってくるけど、近所のチェーン弁当屋のサイトで小麦アレルギーフィルターをかけたらお弁当がなくなっちゃった。サラダとかしか出てこない。どうしたらいい?」

と質問されたことがありました。
みんな大好き唐揚げを筆頭に揚げ物はもちろん、お弁当の下にひかれているスパゲティや、醤油など調味料にも含まれているから、ひとつのお弁当に対し小麦なしと表記することはできないといった背景でしょう。
だからアレルギーフィルターをかけると何もなくなってしまう。
※その日はスパゲティは食べないし、調味料くらいなら大丈夫という理由で焼肉弁当をリクエストしました。

グルテンアレルギーに悩み、日本語が母国語でない人が集うFacebookグループでは毎日誰かが商品パッケージの裏面の画像と「これは食べても大丈夫か?」という文書をセットで投稿する。

そんな不自由な生活が改善されたら良いと思う。心から。

だとしたらAmazonがCMで食事のたびに距離感を感じるアレルギーの人の様子を取り上げてくれたという事実は、本当にありがたい。


■じゃあ、なぜもやもやするの?

ここまで書きながらもずっと考えていましたが、

当事者の声が一つも入っていないからもやもやする

のだと思います。

毎日小麦アレルギーで寂しい思いをしている娘のケアに励むお母さんも出てこなければ、
自らの背負った不遇に声を上げる本人の姿もない。
目線が「叔母」という距離感もあって
「他人にいいことをした」
という叔母のたった一度の充実感しか描いていないから、偽善者のように映ってしまう。

食品アレルギーを持つ本人は毎日戦っていて、常に何かを諦めながらも、そんな状態の自分を受け入れている。
私は小麦アレルギーを持っているから、そういう静かな戦いも描いてほしいと、まぁ、本当に少しだけれど、ちらりと思う。

身近にアレルギーで悩んでいる人を知っている人ほど、このCMに対して不快感を持つと思うし、一方的な目線による違和感や不快感を持ってくれた人は一定数存在すると推測します。
そのこと自体はすごく嬉しい。でも、炎上はしないでほしい。

不快だという声が大きく上がっていないのは、
不快な気持ちがあったとしても、
食品アレルギーで不自由な思いをしている人が世界でバリューを発揮している企業に取り上げられることに対する安心感や嬉しさ
があるからだと信じたいです。

なんにせよ、日本の食環境に憤りを抱えていてもお腹は減るし、18時50分のいま、これから夕ご飯を作るためにこの記事を切り上げようと思います。
さて、何を作ろうかな。



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