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ぶっちゃけ予算おいくらっすか?

やっぱり気になるお金の話
デザイナーの福永さんからのご質問を頂きました。福永さんはいつもツイートを読んで頂いておりまして感謝感謝でございますm(_ _)m
交渉に関しては、前のnoteを参考にしてもらいつつ価格設定のお話もしたいと思います。恐らく更新するので日付を入れておきます(2020.04.22)

全ては予算で決まっている

大前提として一定規模の会社がどうお金を考えてるかと言えば、予算です。
売り上げ目標(予算)を年間や四半期、月ごとで設定しています。
また、販促などにしてもキャンペーン予算ってのがありまして、案件ごとに売り上げと利益の設定を行っています。なので、どんなに交渉しようと高名なクリエイターだろうと予算が全てで予算には逆らえません。(創業オーナー案件とかは、この限りじゃなかったりしますが)

交渉したら値段が上がったよってケースも当然あるとは思いますが、フリマの交渉で初めは厳し目の値段で言って、徐々に値段をすり合わせていくのに似てるのではないかと思います。
本当は10万円の予算があるけど、利益を出したいからダメ元で3万と言う。で、間をとって5万にして気分よく仕事をして頂く。
クライアントとの関係性で初期のワンオブゼムのクリエイターですと、このプライスが低いように思います。
逆に見積もりよりも多めに請求出して、なんてときもありますが、元々予算がなきゃ、こんな事は言えません。

以前はデザイン業界はどんぶり勘定と言われていましたが、今どきの会社ならば案件ごとに売り上げ、利益、アサインした人日、外注費等等全てデータで可視化されていますので無茶な交渉に応じる事はなかなか難しいと思います。行政等の仕事もした事がありますが、既に紙の仕様からサイズ、予算までずばり決まっています
もっともポスターB1サイズとテレホンカードが同じ予算だったりしますが笑

なので私の場合多いのがズバリの予算を聞いてしまいます。
依頼された案件に関しては、ぶっちゃけ予算おいくらっすか?と。
この時営業さんなりクライアントさんは正直な予算を言うとは限らないのも面白いです。

大手求人広告の子会社との仕事の話を以前書きましたがクリエイターランクによって予めギャラは決まっています。なので案件が来たら何も考えず、交渉も不要でした。
ここで書いた和菓子屋さんの5万円のパッケージも4万円のスケボーも同じです。動かせない予算というのは確実に存在します。
予算を伺ったうえで、あまりにも厳しいようならば断る事も視野にいれますが、予算にあったやり方を提案する方が双方メリットがあって幸せだと思っています。

超有名デザイナーと私のギャラ

和菓子屋さんではレギュラー商品のパッケージを超有名デザイナーに発注、季節ごとの企画商品の発注を私にしていました。
ここからわかる事はクライアントは予算によって人を使い分けてる、って事です。企画商品がレギュラー商品に昇格した事もありますが前提は企画でした。これも予算は動かない、動かないって話がわかる事だと思います。

ちなみに超有名デザイナーと私のギャラは概ね巨匠:私で3:1~4:1です(*´Д`)すげー
(企画商品がレギュラー商品に繰り上がっても、です)

今回の仕事は予算ないからsiroさん頼もう~
便利だからねって社内の声は聞こえてきそうです笑

著名なデザイナーは大手の案件をやってるのでギャラが高い。これ当たり前のことなのです。むしろ小さな案件をやってる私のような三流デザイナーの方が単価が高かったりします。

例えばカップラーメンでトップブランドのカップヌードル。
ちょっと前にカップヌードルミュージアムに行きましたが、素晴らしい場所でした。このカップヌードルシリーズは実は年間1,000億円売れています。卸値から考えれば年間10億個程度の出荷数でしょう。2016年には累計400億個売れています。

パッケージ代として0.1円貰ったら40億円、な訳はありません。
パッケージデザイン料はすでに単価でいえば0.000....円の世界でしょう。私の方が単価が高い、というのはそういう意味です。

見積もりは全て分解することから始まる

デザイナーならおなじみの見積もりかもしれませんが
印刷代4台×通し~銭
印刷代の明細は多岐にわたっていて、いつもすげーと思うのですが
・製版
・刷版
・色校(コンセンサス等も)
・印刷
・用紙
・加工
・運賃
加工なんかは断裁やら表紙のPPやらまで全て細かく明細が入っています。

このように自分の作業を分解していきます。
分解したら、次はどこが高いのか、どこを省けるのかも整理しておくと見積もりを合わせる事ができると思います。

デザインを分解すると(ペラのチラシの場合)

・クライアント打ち合わせ
・発注先打ち合わせ
・ラフ描き
・デザイン
・入稿データ作成
・撮影立ち会い(ラフ、指示書含む)
・テキスト入力
・コピーライティング等々が考えられます

デザイナーの場合たいてい時間を食うのが打ち合わせ、とそれに伴う移動時間ですね。ペラものなんかだとデザイン半日で終わったのに、打ち合わせと移動だけで1日(初回打ち合わせ・プレゼン)とか普通にあります。
分解すると、どこにコストがかかっているのか、どこを省けるのかの視点を持てます。

人件費を計算しよう

自分を使用者と経営者の視点で考えてみてください。これも分解すれば答えが出てきます。
例えば月給50万円欲しいよ、当然社会保険完備、ボーナス2ヶ月分!となれば年収だけで700万円になります。社会保険を国民年金と国保で考えると国民年金約20万円、7%の国保で約50万円で770万円が最低限のソフト(デザイン代、イラスト代)の売上目標となります。月に直すと641600円、22日稼働の8時間で時給3645円とわかります。実際稼働を22日で計算すると年間休日が96日とブラック企業並になるので、もう少し余裕をもたせてた方がいいと思いますが。

時給3645円とわかりましたが、これだけではデザインもイラストも描けません。アナログでさえコストはかかります。パソコンや周辺機器を購入しましょう。もろもろで50万円位は最低必要でしょう。パソコンと雑多な周辺機器では減価償却期間が違いますが、一式で4年償却とします。50割る4年で年間125,000円月に10500円ほど加算します。

給料と年金保険641600円+設備費10500円

これでパソコンが手に入りました。でもパソコンだけじゃ当然仕事はできません。作業するスペース=事務所ですね。
フリーランスは事務所兼が多いですが、仕事をするならば、そこはコストとして計算すべきです。クリエイティブ職は資料も必要だし一定の広さは必要でしょう。せめて1LDK位の広さは欲しいです。月10万円
プライベートと兼ねて半分事務所として使うならば、月5万円プラス。

給料と年金保険641600円+設備費10500円+家賃50000円

光熱費やプロバイダ、通信費も必要でしょう。
ずっと家にいるので電気代も馬鹿になりません。月40000円、電気代を割り引いて月に30000円。

給料と年金保険641600円+設備費10500円+家賃50000円+通信費光熱費30000円

勉強するため、スキルをアップデートするための本や勉強も必要でしょう。そのために予算を組みます。月10000円。
お客様と打ち合わせするならばプライベート以外の服も必要でしょう。月15000円。

給料と年金保険641600円+設備費10500円+家賃50000円+通信費光熱費30000円+本10000円+衣服15000円

これでざっくり売上目標が立ちました。年収700万円になるための売上です

月の売上目標757100円、年の売上は9085200円です。
ざっくり年900万売り上げて手元に入る給料部分が700万です。
正しい計算で弾いた要求される時給は4301円です。

この時給で月に12時間、月間22日で一年働くと売り上げは13,625,568円です!ごついですねー。ソフトのクリエイティブの部分だけで年収1000越えは厳しいですが、越えられない数字ではないと思っています。

自分のギャラ(時給)の出し方はわかったので、自分の作業時間を正確に分解して時間を出せれば見積もりを出す事ができます。

高い!こんな見積もり出せるの?って思われるかも知れませんが
会社員を考えてみてください。
以前私が借りていた事務所は坪3万円でした。家賃負担だけで月に70万円以上。当然コストに乗せます。年金負担も新人教育負担も採用費もあるんですからデザイナーの場合、この程度の時給なら法人相手には負けません

新人の頃アドメニューで見積もったら笑われた話

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出典:宣伝会議サイト
二十歳そこそこ2つ目の会社では新人なのにディレクターとして扱われて、右も左も分からない状態で仕事をさせてもらいました。
なので最高10日間泊まり、完徹3日という記録を樹立しています笑
ブラック企業もいいところ、ですが私の基礎体力はここで作ったので今でも感謝しております。
冒頭のアドメニューとは宣伝会議が出している業界では超有名な本です。
今でも参考にしたりはしますが、あくまでもこの料金表は業界でも天空の方々のための料金表と思って間違いありません。
なので広告代理店とはいえ、製版が母体のスタートアップに近い部署が出す見積もりではなかったのです。
フリーランスになって何度か電通博報堂さんと競合した事があります。競合と言っても高すぎて予算が合わないからって理由です。それだけ価格が市井のフリーランスとは違うと思います。

見積もりは原価方式と、価値方式

ここまで書いてきてわかると思いますが、私の見積もりはパッケージ等の長期間使う前提のもの以外はクリエイターの価値や期間や作成物の価値から出される見積もりではなく、原価方式で算出していますし多くのフリーランスのデザイナーさんにはこちらをオススメしています。
ただ同じサイズのポスター、同じ期間を使うとしても文字をレイアウトしたようなものと、凝ったビジュアルを考えたものでは、やはり価値は違います。そこは予算を聞いて、または予算を想像して原価に掛け目をつけて見積もりを作れば良いと思います。
価値が高いと思われれば、その時は無理でも予算が上がっていきます。

イラストレーターさんはカットを中心とした受注、作家性を求められた希少性のイラストの受注と仕事の仕方があったりしますが、デザイナーの場合の作家性ってとても難しいです。
グラフィックデザイナーの仕事は結果にコミットする、顧客の満足度にコミットするもので作風ではありません。信頼がプライスに直結します。
私は希少価値がある作家性がある!というデザイナーさんはアドメニューに載ってるような価格で勝負をするといいと思います。

請求書は○○万円で出して

予算は決まっている、確かにそうなのです。
例えば見積もり20万で出して仕事が終わりました。さあ検収に進もうとなったら営業さんから

今回見積もり20万で貰ってるけど30万で請求書切って

結構経験があります。
性善説で仕事をするのはよくありませんが、結果に満足頂けると予算の中で割増して感謝の意を示してくれたり、自分のブレーンとして扱おうとインセンティブを出してくれる方がいます。
これを繰り返してると双方の予算感がすり合っていくので、頓珍漢な見積もりってなくなっていきます。
なので似たような仕事でもクライアントによって結構値段に差がついたりします。

なので交渉するにも価格をあげるにも結局は結果を出し続けるという一歩一方の積み重ねが大事なのですね。

ヘッダー画像:フリー素材ぱたくそ
モデル:あまのじゃくさん


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