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外資系企業の日本子会社が親会社から借入れをしている場合の税務上の注意点

外資系企業の日本子会社が親会社から借入れをしている場合の税務上の注意点

出資?融資?外資系企業の日本法人が親会社から資金を調達する際には、「出資」による方法と「借入れ」による方法が考えられますが、日本での税金負担を考える場合、利子の支払を受けようとするモチベーションが働きます。

なぜなら、日本子会社にとって、配当の支払は税金を減らす要因とはならない(損金とはならない)一方で、利子の支払いは損金にできるからです。

そうすると、親会社である外国企業としては、日本でのタ

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法人が海外で事業を行う場合は、「支店」と「子会社」どちらがいいのか  ~各国の法人税率ランキング含む~

法人が海外で事業を行う場合は、「支店」と「子会社」どちらがいいのか  ~各国の法人税率ランキング含む~

海外に進出する法人は、どういう形態で進出するのがいいのでしょう?
これは、海外展開を視野に入れたときに最初に悩む問題です。

各法人の状況にもよりますが、事業の規模という視点で考える場合、
海外駐在員事務所 → 支店 → 子会社

となります。

ただし、各形態それぞれにメリット、デメリットはありますので、形態別にまとめてみました。

海外駐在員事務所
駐在員事務所は、現地での市場調査などを目的と

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海外子会社への貸付金利の設定は慎重に

海外子会社への貸付金利の設定は慎重に

新型コロナウィルスの影響により、海外に子会社を有する日本法人は、運転資金や設備資金を貸付けるケースが増加することが見込まれます。

もちろん、無利息での貸付は「寄附」にあたります(例外的に法人税基本通達9-4-2の「子会社等を再建する場合の無利息貸付け等」という定めがありますが、ここでは、通常の経営状況の中での貸付の話となりますので、詳細な説明は省略します)ので、金利を設定して貸付けることが必要で

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国際税務戦略とは

国際税務戦略とは

タックスプランニングと言い換えてもいいのかもしれません。
いろいろなアプローチがあると思いますが、私が考える国際税務戦略は、「日本国内での課税の最小化」と「国外での課税の最小化」の合わせ技です。

これをすることで、連結ベースの損益計算書上の実効税率(法人費用/税引前当期純利益)に影響が出てきますので、実効税率の推移をモニタリングすることで効果の測定ができます。

では、「日本国内での課税の最小化

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日本への一時帰国が長期化している場合、日本で課税されます

日本への一時帰国が長期化している場合、日本で課税されます

日本から海外子会社に出向している社員が、新型コロナウィルスの影響により日本に一時帰国し、現地に戻れずにそのまま日本で現地業務を行っているケースが増えています。

このような場合、次のような課税リスクがあるので注意が必要です。
・駐在員個人の給与に対して20.42%の課税がされる
・その駐在員がPEとみなされ、駐在先の法人が日本で課税される

20.42%の課税2020年7月1日現在、日本は73か国

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国外中古建物を利用した節税スキームが封じ込まれます

国外中古建物を利用した節税スキームが封じ込まれます

2020年税制改正で、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の制度に特例が創設され、2021年以後の所得税から、不動産所得で損失が発生している場合には、国外中古建物の減価償却費を生じなかったものとみなされます。
そのため、高額な減価償却費を計上して損失を発生させる国外中古建物の節税スキームは封じ込められることとなりましたので、国外に建物を所有する個人は注意が必要です。

ついに来たか
国外中古不動

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個人の投資家も要注意なタックスヘイブン税制

個人の投資家も要注意なタックスヘイブン税制

タックスヘイブン税制は、2017年の税制改正で抜本的な見直しが行われました。3月決算法人は、今年2020年3月期の決算が最初の適用事業年度でした。
2017年税制改正が明らかになって以降、実務担当者のみなさまは、海外子会社の情報や必要書類をどのように収集していくかにご苦労されたのではないかと思います。
申告作業本当にお疲れ様でした。

さて、制度的にも実務的にも年々複雑になっているタックスヘイブン

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子会社の配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避は封じ込められます

子会社の配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避は封じ込められます

2019年12月の日経新聞に「M&A含む節税対策 意図的な赤字つくらせず」という記事が掲載されました。この記事では、ソフトバンクグループが2018年に買収したアーム・ホールディングス(HD)とアーム・リミテッドを使ったスキームが紹介されています。

具体的には、次のような流れです。

SBGは2018年3月にリミテッド株の4分の3をアームHDから「配当」の形で吸い上げ、これにより、アームHDの実質

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