見出し画像

子会社の配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避は封じ込められます

2019年12月の日経新聞に「M&A含む節税対策 意図的な赤字つくらせず」という記事が掲載されました。この記事では、ソフトバンクグループが2018年に買収したアーム・ホールディングス(HD)とアーム・リミテッドを使ったスキームが紹介されています。

具体的には、次のような流れです。

SBGは2018年3月にリミテッド株の4分の3をアームHDから「配当」の形で吸い上げ、これにより、アームHDの実質的な価値を大きく目減りさせました。

その直後に、SBGは買収した時よりも大きく価値が落ちたアームHD株の8割弱を同じくSBG傘下にあるソフトバンクビジョンファンド等に売却して、赤字を発生させました。

この赤字を他の事業で生じた黒字と相殺し、SBGの法人税負担はゼロとなりました。

これまでは、このような取引に違法性はなく、制度の抜け穴となっていましたが、2020年税制改正においてルール化されましたので、このスキームをご検討されていた場合、注意が必要です。

なお、海外子会社からの配当金の95%を所得に含める必要がない(受取配当金益金不算入)点に変更はありません。


~実務家向けポイント整理~

本制度は、特定支配関係を有する子法人(法人及びその関連者が株式等の50%超を保有する子法人)から受ける配当等が株式等の簿価の10%相当額を超える場合に、簿価から益金不算入相当額を減額するものです。

スキーム整理

適用除外
次のいずれかの要件に該当する場合には、子法人から株式等の簿価の10%を超える配当等を受けたとしても、適用されません。
1. 内国普通法人である子法人の設立の日から特定支配関係を有することとなった日までの期間を通じて、その発行済株式の総数等の90%以上を内国普通法人等もしくは協同組合等または居住者が有する場合
2. イに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額がハに掲げる金額以上である場合
イ) 配当決議日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における特定関係子法人の利益剰余金の額
ロ) 配当等を受ける日までの間に特定関係子法人の株主が受ける配当等の総額
ハ) 特定支配関係発生日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における利益剰余金の額に一定の調整を加えた金額
 ※上記1,2の適用を受けるためには、適用除外要件に該当することを「証する書類」を保存することが必要となります。
3. 特定支配関係発生日から10年を経過した日以後に受ける配当等の額
4. 対象配当金額が2000万円を超えない場合

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?