外国人と仕事をする(3) 〜 肩書きの重要性について

 外国人と仕事をする上で肩書き(タイトル)を特に気にしている印象が古くからあった。営業の攻略法を議論すればこの手の話はCクラスに話さないとダメだとしばしば一蹴された。日本企業の場合はミドルアップダウンなのでキーとなる中堅社員を捕まえて地道に上に下にと組織を説得するのが一般的だと思うが、海外では営業がCクラス一本釣りを本当にやっているのかとモヤモヤした疑問を持っていた。

  まず何より海外の営業マンは組織の中で圧倒的に地位が高い。ヒラの営業で間接部門の部長クラスと同じ、あるいは発言権は少し上くらい持っている感触だ。そして肩書きは比較的自由に名乗りたいようにつけている人が案外多い。会社がしっかり決めているところもあるが、営業がしやすいようにとAccount ExecutiveとかSales Representativeとかを名乗っている人をよく見かける。日本の外資系企業でもこの名称をつけている人たちはたくさんいたわけだが、海外と比較すると日本のAccount Executiveは名前負けしていることが多い。海外のAccount Executiveは全てCクラスの階層に商談を持ち込んでいるわけではないが、日本と比較して2段くらい上の階層の人に商談を持ちかけている。

  なぜ2段上なのかを突き詰めると海外の場合、組織の権限が明確で予算と決定権を持っている人が既に決まっている。したがって商談で中堅層のマネージャに会いに行っても俺には権限がないからと話を進める前に頓挫する。いい人は権限のある人を紹介してくれるが多くはそれで終わるケースが多い。逆にその権限のある人に辿り着けると関心を持ってもらえればすぐに商談は進みやすい。ある意味、業績を上げるための施策を考えることが仕事なので上手にアプローチできればすぐにパイプラインに乗っけられるということだ。だが有象無象の会社のAccount Executiveたちがアプローチをしてきている中で気にとめてもらうにはそれなりのペインポイントを1発で仕留めないといけない(いわゆるエレベーターピッチというやつだ)。

  ということを繰り返しているためだと思うが、海外の営業は肩書きに見合った成熟した人が多い。また成熟をしていないと全く仕事にならないくらい難易度の高い仕事である。そんな営業マンたちをかれこれ100人以上のCVを選考してそこそこの数を採用してきたが、とても高い学歴の人もいれば、高卒の人もいたりするくらい幅が広い。ただ出世欲が強い人は多く、次はSales Directorになって、CEOになりたいという人は少なくなかった。そして海外では営業職は地位がとても高いのであながちキャリアパスとしても確立されている。

 一方、日本人は肩書きがあれば水戸黄門の印籠のように相手の態度が変わると思っている節があり、過去に部下から一人ならず二人から「Manager」のタイトルを名刺につけたいと懇願されたことがある。理由としてはビジネスマンとして相手にされない、お前に話す内容ではないと会議を断られたと言った理由だった。私としても支援はしたかったが肩書きをつけたところで本当にその問題は解決するのか疑問もあったので、よく知る外国人に彼/彼女をManagerに昇格させようと思うがどう思う?と聞いてみた。すると「本気か?やめた方がいいぞ」と返事がきた。よくよく理由を聞くと会話の中でのビジネスマンとしての成熟度がまだまだ足りないと思うとのことだった。

  特に個人主義の強いヨーロッパの人から見ると多くの日本人は子供にくらいしか見えないんじゃないかとしばしば感じるが、海外は成熟に応じた肩書きがあるのだと思う今日この頃である。 

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