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GP書き下ろし企画:政府一丸の食品輸出大作戦~日本のおにぎり世界デビュー

日本が誇るファストフード、おにぎりが世界中で静かなブームを呼んでいる。仕掛け人は農林水産省とJETRO。日本政府の後押しによる日本食品の普及活動が始動した。


はじめに


農水省による2022年のレポートには、日本の農林水産物や食品の輸出割合がいかに低く、国内市場に依存しているかが指摘されている。

こうした状況を変えるべく、日本政府は2020年に「農林水産物・食品の輸入拡大実行戦略」を立ち上げた。海外市場の嗜好を考慮した製品を生み出し、省庁の垣根を超えて食材の輸出を推進しようとする試みだ。

政府の後押しを受け、今世界で本格的に日本発の食品が紹介されている。

参考資料:輸出促進対策の概要「農林水産物・食品の輸出促進について」

>>>古市裕子:米国ニューヨークのおにぎり事情

岸田首相国連総会でNY来訪・対日投資イベントおむすび試食 (2022年・古市裕子撮影)


ニューヨークでは2020年9月から、日米官民共同の大々的な日本の食紹介企画が始動した。農水省、JETRO、そしてニューヨーク総領事館が一体となった大プロジェクトだ。その内容としては、


②     各レストランでのおむすび作りの実演と試食会

②  ニューヨーク市内の日本食イベントに出店(数時間で完売した)

③  ニューヨーク市内の子ども達に、日本のおにぎり弁当を配布し、実際に食べてもらう

こうした活動が実り、ニューヨークでは日本のおにぎりブームが続いており、日系の食料品店の前では、ランチタイムになると、おにぎりをほおばるニューヨーカーが目立つようになった。値段だが、日系スーパー、権米衛USAニューヨーク店では、高菜おむすび、梅おむすび、昆布おむすびが、それぞれ1個1ドル90セント(約280円)ほど。いくらおむすびは1個3ドル60セント(約540円)、エビおむすびは1個3ドル(約450円)。もっとも人気の高級シャケおむすびは、およそ2~3ドル(300-450円)。ニューヨークで購入できるスライスピザの平均価格が現在4ドル60セント(約690円)と考えると、手頃だ。


日本のおむすび普及イベントに参加した日系飲食企業からは、「今月は複数回、おむすび弁当をマンハッタンの企業や学校に配布した。顧客からの反応もよく、おむすびの認知度は確実に広がっていると思う」という声が上がった。また、「小学校に合計200個のおにぎり弁当を配ったが、直接子どもたちの<美味しい>というリアクションに触れることができて嬉しい。日本のおにぎりをもっと食べて欲しいと思う」というコメントもあった。



おにぎりの値段 権米衛NY店

>>>斎藤淳子:中国のおにぎり事情

中国の711やローソンでは、おにぎりはかなり前から地元のオフィスで働く若い人たちに人気となっていた。価格は6元前後で約120円。コンビニのおでんも人気なので、合わせて食べることも多い。

気になるおにぎりの中身だが、マヨネーズ系のツナマヨ、サーモンマヨ、エビマヨ、タレ味の焼き肉(鳥、豚、牛)やスパイシーなキムチ系などが定番だ。意外と大人気なのが、ウナギ巻きやウナギ入りのおにぎりだ。

中国のおにぎりは漢字で「飯団(爾)」と書き、団子にしたご飯!といった感じだろうか。ガツンと頼れるおにぎりは、中国の若者の食生活に入り込んでいる。

>>>中東生:スイスのおにぎり事情

スイスで販売されているおにぎりは、寿司コーナーに並ぶ(中東生撮影)

スイスの食料品販売は、その大部分を2大スーパーCoop(コープ)とMigros(ミグロ)が握っているが、おにぎりはその両方で人気メニューだ。スイスのおにぎりはなんと酢飯で握られている。スイスの消費者にとって、おにぎりはお寿司の一種なのだ。

具は(スパイシー)ツナ、鮭、ベジタリアン用、鶏の照り焼きも見かけることがあるが、ご飯はポロポロ。

日本人が経営する店でも、ラーメン屋の店頭におにぎりが並び、またおにぎりのテイクアウト店ができている。そこでは「酢飯でないおにぎり」が買える。ちなみに、筆者のイチオシは日本料理店「美味」で扱われているもの。海苔の風味も塩加減も最高だ。

まとめ

おにぎりはある種の「ファストフード」として各国の生活に定着しつつあるようだ。実際、米の輸出量だけ見ても、2018年の年間13,794億トンから、2023年1~9月には、26,188トンと、5年前の倍に跳ね上がっている。日本政府の目論見は見事叶いつつある。いつの日か世界中の人が、好きな「おにぎり」の具の話題で盛り上がる、そんな日がくるかもしれない。       

デスク:岩下慶一(理事)、寺町幸枝(理事)

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