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「複業メンバー」が7割。カウシェがとった、常識はずれの組織戦略

「採用の処方箋」は、スタートアップ企業に眠る採用・人事にまつわるナレッジを紹介していくシリーズです。

シェア買いアプリ「カウシェ」を運営する、株式会社カウシェ。2022年9月には累計ダウンロード数が100万件を突破するなど急成長中のスタートアップです。しかし、実はそのほとんどが「複業」のメンバーで構成されています。複業人材比率の高い組織で、なぜ事業を拡大できるのでしょうか。採用担当であり、ご自身も複業メンバーとして参加されている馬場良樹さんに話をきくと、「組織ビジョン」の大切さが見えてきました。

複業体制、背景にあるCEOの思い

──まず、カウシェさんで働いている複業メンバーは何名いらっしゃるのでしょうか。

約80名程です。正社員やインターンなども含めると全体で120名程なので、7割の方が複業として参加しています(2023年2月時点)。

カウシェは創業当初から複業メンバーが多い組織体制でした。開発が決まってから2ヵ月でリリースする必要があったんですが、当時は代表取締役CEOの門奈とボードメンバー2人の計3人しかおらず。そのため優秀な複業の方の力を借りながらリリースに漕ぎつけました。

また、弊社がこの体制をとる背景には「スタートアップのあり方を変えていきたい」という門奈の思いもあります。

これまでのスタートアップでの働き方といえば、家族や友人との時間などプライベートを顧みず仕事を突き詰めるスタイルが多かったと思いますが、弊社は当たり前を変えていきたい。門奈がかつてスタートアップ企業に2人目のメンバーで入って、200人までグロースする過程を見てきたからこそ、強く思っていることです。

スキルフルな方にスタートアップで挑戦していただくために働きやすさを意識して制度を整えています。その1つの手段が複業で参画いただくことですね。

馬場 良樹:レバレジーズに新卒入社し、全社MVPを受賞。その後支店統括者になり、支店連続達成・新卒中途採用に貢献。 2018年にfor Startups入社。 SaaSを始めとした成長産業のCxO採用の支援に従事。MVP・月間受注実績No.1を複数回受賞。 その後、カウシェにジョイン。

──「新しいスタートアップ像を作る」ための一環として、この体制をとっているんですね。

はい。ですが、ただ単に複業の方を増やしたいわけではなく、複業であっても個人の目標のもと、熱量をもって働ける環境にしたいと思っています。そのほうがカウシェ自身も伸びていくし、複業の方にとっても良い経験を得ていただけるんじゃないかと。

そのため漢字も「サブ、副(そ)える」という意味の「副業」ではなく、「複数」の意味を持つ「複業」で表しています。メイン・サブという区別ではなく、カウシェでの仕事もご自身の糧になるような働き方をしていただきたいなと思っています。

候補者を離さない、アトラクトの工夫

──どのような流れで複業を始める方が多いのでしょうか。

直接契約の複業の方は、9割の方がリファラルで入っています。あとはスカウトと自主応募で1割くらいですね。

──複業先をいくつか検討していて、その候補の1つがカウシェさんだった方もいるかと思います。複業先として選ばれるために実施している施策や工夫はありますか。

2つありまして、1つがPRチームによる発信です。カウシェでの働き方をnoteやPodcast、SNSなどで積極的に公開してくれているので、僕らがスカウトなどで声をかけるとなったときに、カウシェの事業やカルチャー、メンバーが理解いただけるようになっています。

もう1つは選考です。大きなミッションを担いながら働いてほしいので、複業の方であっても面接を3回ほど行います。しっかり熱を入れて私たちのことを伝え、アトラクトする。そのために回数を重ねています。本気で向き合ってくれていると私自身も門奈との面接で感じました。

また同時に、カウシェではメンバーが自ら働く環境を楽しみ、業務を推進できる「自律・自燃型組織」を目指しており、そういった動き方ができる方かというのも確認させてもらってます。

複業人材にオーナーシップを持ってもらうには

──正社員ではない方に、オーナーシップを持って「自律・自燃型」で働いてもらうのは難しいと思うのですが、そのあたりどのように工夫されているのでしょうか。

業務の渡し方目標設定の仕方を工夫しています。「あなたの業務はこれ。ではお願いします」のようにはせず、最初はCxO陣や各上長などと一緒にミッションを達成するための目標を作っていきます。経営層と同じ粒度でものが見れるようになり、いい目標を作るようになってきたら、メンバー自身で進めていく。チームや会社に慣れ、成果を出せるまでは基本的に伴走する形にしています。

あとは、情報の透明性を高めています。カウシェでは複業やインターンの方にも、ボードミーティングの内容や株主との対話内容も共有します。設定された目標への納得度が高まりますし、今の進捗がわかりやすくなる。複業の方であっても個人の目標・ミッションを自ら追っていただけるように、情報を取りに行ける環境を用意しています。

──複業の方にも昇給を認めていると伺いました。

ミッションベースで仕事をしていただいているので、時には「この方向性で大丈夫かな?」と不安に思われることがあると思うんです。昇給という事実はその方向性でOKですとわかりやすく承認することになりますよね。評価の明示は自律・自燃型で働くためのインセンティブになると考えています。

ちなみに昇給だけでなく、ジョブローテーションの制度もありますし、個人のWillと会社の状況がマッチすれば正社員転換も可能です。

──noteを拝見すると、正社員転換では課題選考があるようですが、これはどういったものなのでしょう。

たとえば「20xx年までにGMVを〇〇円にするために、あなたの事業部でできることは?」というようなお題に対し、ボードメンバーとディスカッションしてもらいます。

この選考はスキル確認の場でもありますが、我々にとってはアトラクトの機会でもあると思っています。

複業は正社員に比べて稼働時間が少ないケースもあるので、どうしても携わる仕事が相対的に小さいスケールのものになってしまう。ディスカッションのテーマ自体が今後数年以上かけて向き合っていく壮大なものなので、一気に目線が引き上がるんですよね。

普段の業務では一部分しか見えてないけど、カウシェに入ったらこの先こういう面白いことができるんじゃないか、と自分ごと化してワクワクしてもらえる機会にもなっていると感じます。これも「自律・自燃型で働ける新しいスタートアップを作る」ためです。

ちなみに、その選考で出したアイデアを正社員になって実現したメンバーもいます。作った課題を課題で終わらせず、入社後のロードマップにできるのもいいところですね。

大切なのは「思想と仕組み」

──カウシェさんのように複業の方をたくさん登用したい企業は、どのような点に留意すればよいでしょうか?

ハード面とソフト面があると感じています。ハードでいうと、やはりリモートワークが前提の組織である方がやりやすいですね。リモート前提であれば、全国もしくは海外の人もターゲットになってきて、人材の裾野が圧倒的に広がります。

ソフト面でいうと経営者の思想は大事ですね。弊社代表取締役CEOの門奈には、最初のリリース時に支えてもらった複業の方への感謝もありますし、スタートアップでの働き方の当たり前を変えていきたいという思いがある。このハードとソフトの2つがちゃんと掛け合わさることが大事なんじゃないかと思いますね。

先ほども挙げましたが、複業の方もSlackやドキュメントを完全に全部見れるようにするなど、自走して働きやすい環境整備をやりきるのも大事かと思います。

そのためにも、この時期のスタートアップでは珍しいかもしれませんが、セキュリティ研修もしっかりやっています。ここは様々な雇用形態の方を迎え入れる上で、外せない守りの部分。こうした細かいことまでやりきることも、多様な働き方を受け入れるためには必要ですね。

株式会社カウシェの採用情報


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