プレゼンテーション1

広報担当は ブランドの代弁者 -メディアが見たイメージ戦略 vol 9- :『PRIR』寄稿記事

※本記事は『PRIR』 1月号(2006年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。

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2019年9月14日現在の所感

この記事を書いた頃、まさに「広報担当者は企業の顔」というか表現は良くないですが「企業マスコット・ガール」「企業タレント」のようにメディアに登場し、取り上げられていた時代。そこまでいってしまうとどうなの?と正直思っていた部分もありましたが、その企業と外側をつなぐための役割をしていて、企業メッセージを伝え、他者に理解を促す任務がある広報担当者は、まさに企業やブランドの代弁者。そして、それはその企業やブランドに社員として勤めている人に限らず、外部広報やPRを引き受けている人にも言える事。

その人とそのブランドが重なり、「あの人が携わっているのであれば」とチャンスが巡ってくるなど、信用の積み重ねによる揺るぎないブランド力の向上が何より重要だと思う今日この頃。

欧米では、「会社を作ったら最初に雇うのは広報」と言われるが、日本はまだまだ広報は二の次三の次。なので、企業ブランディングと社長広報に最も近い筆者の仕事も、よほどの企業でない限り「もっと弊社が有名になって、メディアに出るようになったら是非お願いしなくちゃ!」とおっしゃる経営者の方も多い。そのような時「ごめんなさい、順番が違います。正しく世間に認知してもらい、信用を高め、成果を上げるために弊社のコンサルティングがあるのです。今だからこそ尚更重要なのですけどね(苦笑)」とわざわざ申し上げるような、無粋なことはしない。なぜなら、きっと彼らはそのようなことを言われたくもないだろうし、言ったとしても彼らの耳には届かない。人間は聞きたいことしか聞こえない生き物だから。そしてこの仕事を始めて25年のキャリアを通じて言えるのは、「もっと有名になってから」とおっしゃった方々もその企業も、その後名前を聞くこともメディアでお見かけすることもないからだ。もちろん有名になったり、メディアに出ることが全てではない。知る人ぞ知る素晴らしい仕事をなさっている会社も企業も沢山ある。そういう方々は、「有名になったら」などという言葉を筆者に投げかけること自体しないのだ。

「経営者の意識がその企業を作る」、これこそ真理ということだろうか(苦笑)。

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連載「経営トップのイメージ戦略」 では、テーマを「経営トップ」に置 き、企業のトップエグゼクティブは、 企業の顔であり、企業そのもののイ メージや体質をあらわすことを、ア ピアランスに関するさまざまなポイントからお伝えしてきました。

この「経営トップのイメージ戦略」とは、経営トップ自身のイメージ戦略という意味だけではありません。ご 自身が経営する企業のイメージを、 どのようにマネージメントし、そして、経営トップ以外で、企業やブランドイメージに直結する役割の人々に、どのように意識付けをするか。これも経営トップが行うべきイメージ戦略なのです。

そこで今回は、その存在が企業や ブランドイメージと大きく連動している任務を担う、広報担当に焦点を当ててみました。広報に対して、経営トップがどのように期待をし、どうあることを望んでいるのか? エスティローダー グループオブ カンパニーズ取締役副社長の山口信和氏は「広報担当はブランドの代弁者」だといいます。エスティ ローダー社の扱うブランドの中でもアラミス、スティラ、オリジンという、個性やターゲット層の全く違う3ブランドを統括されていらっしゃるお立場から 「広報は自分が扱うブランドのコンセプトや商品、それを取り巻くライフスタイル への深い理解と共感が欠か せない」との重要なメッセージをいただきました。

メディアはもちろんのこと、一般ユーザーに近い場 所での活動や、現場では実務をこなす広報。しかもご自身がアイコンではないにもかかわらず、関わる周囲 の人々からはその行動や言動、アピアランスのすべてが ブランドイメージとして受け取られる大切な役割です。そのような立場に必要とされるのは、その商品やブランドのターゲット層となる人々がどのようなものを好み、興味を示すのか? そして、どういう感性を持っているのかを知り、それらに対してアンテナを張り、対象者と共有できる知識とマナーを持って行動すること。それが広報担当のイメージ、ひいてはブランドイメージや企業イメージに直結するのです。

例えば、大人の男性向け衣料ブランドの場合、対象者が日常当然のごとく見聞きする社会的な情報やその衣服が取り入れられる場にみずから。出向いて、身をもって知ること。そしてヘルシーなものを扱うブランドで あれば、そこが提案するスタイルを、自身の日常に取り入れ、良い結果が得られた証明がみずからであるよう にすることなど。

それは、顧客からの共感と信頼を得られるように伝える情熱と、自分の立場と相手のニーズを理解し意識するという冷静さを兼ね備えた、高 度なコミュニケーション。それができたとき良いイメージが得られるのです。そしてこれらの事柄が分かりやすい形で自然と現れ、周囲からイメージされやすいのがアピアランス。自分の立場と、担うブランドイメー ジ、そしてTPOにふさわしい装いや言動をきちんとわきまえられていることが鍵です。

経営トップに望まれるイメージが「揺るがない威厳」であるとしたら、広報担当に必要なのは「誠実」、 「バランス感覚がよい」イメージ。そして、直接会う多くの関係者やユーザーにまた会いたいと思わせるイメージこそがブランドの代弁者である 広報担当には必要です。

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