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粛々と、足るを知る

いつだったか、の🎞️

公開終了間際に何とか。
教えてもらってから、どうしても、どうしても、どうしても、
これだけは映画館で観ておきたくて。

満席。
すごい。

まさに、足るを知る。
粛々と、足るを知る。
そんな映画でした。

何の変化もない同じような毎日が続いていくことに対して、
潜在的恐怖心があったことを強烈に自覚させられてしまった…。

「もっと能動的に生きないと、同じ毎日をただ繰り返すだけになる」

「同じことを繰り返す日々なんて“愚”だ」
どこか漠然とこう思っていたんだということも強制自覚させられちゃった…。

今まで自分の中に見つけられなかった視点。
いや、良いように言っちゃったな。
“今まで見ようとしなかった視点“、が正しい。
同時に、「本当の心の強さ」って何なんやろ…とも思って。

誰から見てもわかりやすく、上昇志向で常に前を向いて、一歩でも半歩でも先へと努力し続けられる「心の強さ」と、
きちんと「自分が生きている世界」を認識した上で、ただ粛々とその中で誠実に生き続ける「心の強さ」と。

どちらの「強さ」もあると思うんだけど、私はどっちの思考に近いんだろうって考えてみた。
前者に憧れを抱きつつも、本当は後者を求めている深層心理に辿り着いてしまった…。

そこをズバリ指摘されたような“羞恥心”と、自分に対してのちっさい“怒り”みたいなのとがぐるぐるなって、それが今まで味わったことがない“切なさ”と“敗北感”に変化して、動揺。

そして「言葉で伝えることが大切だ!」って今までずっと思ってきたけど、下手に言葉があることで、相手から湧き出る自力の思考を邪魔しているんじゃないかと思えた中盤。
中1男子への関わり方で悩んでいた今だからこそ、ぶっ刺さりまくりました…。

私は今までこの口で何を伝えてきたんや、と。
うまいこと言葉を借りてただ自分の感情をぶつけてきただけやんか…、と。
ちょっと呆然としちゃった…。

リアルな日常の中で小さな幸せを見つける。
今目の前にあることだけに目を向ける。
相手の悩みは相手のもの。

こんなの、情報として山ほど見聞きして理解していたつもりだったけど、本当の意味で腹落ちしてなかったってことよね。
まんまとこれだけの衝撃を受けるということは。

知らない誰かの毎日が、他の誰かの日常の一部になってて、
自分の毎日も、また誰かにとっての日常の一部になってる。
それだけで成り立つ世界。

特別なことをしようとしなくても、
何かを生み出そうとしなくても、
ただみんなが日常をこなしていくことで生まれる美しい世界。

『住む世界が違うから』
この映画で1番刺さった言葉。
リアルに身震いしました。

この映画の中でこの言葉を放つことの意味。
もう本当、すごいな。

言葉だけ聞くと冷たく感じつつも、
なんてやさしい言葉なんだと思ってね。
同時にめちゃくちゃ残酷でもあるんだけど…。

ただそのままの自分で居続けることを受け入れてくれる世界。
価値観も経済力も思考思想も全く違う人間同士が交わることで生まれる社会。

社会生活を平等にしようとすることが、必ずしも『善』とは限らないんよね。
勝手に世間の目が、ある人の生活に「不足している」と感じたとしても、その自分にじんわりと幸せを感じている人もいるということを、忘れたらダメな気がする。

いや、難しい…
難しいな。
わからんな。
結局答えは出ーへんな。

そもそも常に何か答えを出そうとするこの思考そのものが、
私の中にもあるはずのパーフェクトデイズの邪魔をしてるんかもしれんなぁ…。

この映画を観ていろいろ考えたけど、結局言葉にするとどれも陳腐すぎて。
ただ心に静かに溜まっていった言葉にならない感情や感覚こそ、本質にちゃんと触れてる気がする。

まさに『感覚は道標(みちしるべ)』 
くるりのこのアルバムのタイトル、私の座右の銘になりそうなくらいちょいちょい私の日常に絡んできよります(好き)。

そんな感じで、ただひたすら静かに衝撃を受け続けたわけだけど、今この時代にこのタイミングで観られたことにものすごく意味を感じて、教えてくれた友人に感謝。

今この歳だからこそ観るべき映画。
劇場内、年配の方が多かったのも頷けるし、私もこういう感度を持った歳の取り方をしたいなぁって、じんわり思いながら映画館を出ました。

アマプラきてくれるかな…。
心がキュッとするときに、何回もまたゆっくり観たいな。


#PERFECTDAYS
#映画
#ヴィムベンダース
#役所広司

#くるり
#感覚は道標

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