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疎ましがられても、話したり、伝えたりしないといけないことが経営にはあるんですよ、というnoteです。

当社には月に一度開催される全大会なるものがあります。スタッフ全員が集まって会社の方向性や、現在の数字の進捗などを共有する機会だったりします。

先月の全大会は僕が一方的に1時間くらい話したり、図解したりして終わりました。僕らの会社はここ2・3年で、社員数人の規模から30数名に増えたこともあり、事業の垂直立上げとともに組織づくりにも取り組んでいます。(今後数年で100名規模まで増やす予定です)

そこでの話しや、現在取り組んでいること、取り組もうとしていることを書いていこうかと思います。今回は自社の組織開発やインナーブランディングの話しです。

正論の言語化(解釈)は意外とダイジ

どんな話しをしたかというと、こんな感じです。
「僕は大人と仕事がしたい」という前提を置いたうえで、

・  社会のルール
・  ❶ ビジネスの基本
・  ❷ 組織の基本
・  ❸ 評価の基本

みたいな話しをしました。

上記の3つの基本が分かっていることが「大人」ということになるのですが、要はプロフェッショナルと仕事したいよねという話しです。
※弊社のスタッフがダメですよーということではないです!

この手の話しは出来ればしたくなかったというのが本音です。(こういう話しはとても偉そうなので・・・)

マネジメントをやっていると敢えて口にしない、言語化しないことも結構あります。ジャンルとしてはいわゆる正論というやつで、当たり前すぎて個人が受け取るには角が立ちすぎるからです。ただ、話さないと分からないのかな?とも思い、言葉と言い方を選びながら伝えました。理由は正論といえども解釈の仕方は人それぞれだからです。

僕も含めてそうですけど、やっぱり自分の無自覚に気付くのはとても大変です。自分は大丈夫なんて思っていても、自分自身のことなんて大して分かっていなかったりします。こういう場合は誰かが伝える必要があるのだと思っています。話す方も気持ちが乗るなんてことはなく、どんな場をつくり、そこにどんな言葉を選ぶと伝わるかとか、ド真剣に考えているわけです。

僕が即興で話しをしたように思っているスタッフもいるかもしれませんが、何をどんな風に話すかは何週間も考えていますし、全体会直前の数時間は一人でシミュレーションもしているわけです。

話しの真意がどれだけ伝わったのかは分かりませんが、刺さったスタッフもいたのではと期待しています。

エンパワーメントの土台づくり

組織やチームを作りビジネスをしていくには、チームメンバーが最低限知っていなければならない基本ルールがあります。そういうものを教わらないで育ってきているスタッフが増えているのかなと思っています。

これは個人が悪いというよりは教えていない、伝えていないこちらが悪いのです。当たり前の常識だから教えなくても大丈夫だろうと思っても、世の中の常識なんて移ろいやすいものだし、人によって解釈が違くて当然です。

教えていない、伝えていないのに相手に原因を求めても意味がありません。当たり前を言語化して伝えないことは、組織やチームを作っていく上での盲点というか落とし穴のような気がします。うちだけなのかも知れませんが、気を付けないといけないですよね。

僕らの会社のスタッフはここ2~3年の間に入社した人が多くて、バックグラウンドももちろん違うのだけど、全員が同じ方向性を向いてやっていけたらと思っています。

インナーブランディングで個をエンパワーメントするためにも基本ルールの徹底は大事で、ここがコミュニケーションの土台になります。

組織形成のステップを丁寧に設計する

個のエンパワーメントの対比として集団の凝集性というワードがしばしば出てきます。ここに集団の凝集性と生産性の関係性を表したマトリクスがあります。

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この図からは、生産性と集団凝集性の相関関係が必ずしもプラスでないことがわかります。成果規範とは、仕事の成果に対する集団認識のことで、ここが低いと高い生産性を上げることはできません。例えば「この程度でいい」とか「気楽にやればいい」的な意識が蔓延した組織が高い生産性を上げることはできません。

凝集性の高い集団だから生産性が高いわけではなく、どんな成果規範があるかが最重要なイシューになります。よって凝集性が高いことはある意味で諸刃の剣でもあるのです。

僕は成果規範の「統合」がなされていない状況で、いわゆるダイバーシティ(多様性)の推進を強化すると、逆に組織やチームのパフォーマンスの低下に繋がると考えています。組織を中長期的に伸ばしていくには以下の順序で進めることが必要だと思います。(立上げ時は特に)

❶ 成果規範の統合
❷ 集団凝集性の向上
❸ ダイバーシティの推進


心理的安全性のセットアップ

成果規範のバーが高く、且つ、凝集性の高い組織は理想ですが、落とし穴もあります。キーワードは「心理的安全性」です。

生産性の高い組織(凝集性×成果規範)でいることはダイジですが、それが持続可能性な状態であることは経営にとって何より大事です。

持続可能性とは何でしょうか?

組織やチーム、直属の上司が変わっても個がパフォーマンスを発揮できる状況が理想です。その理想的なパターンを繰り返し持ててはじめて競争力につながります。

キーワードは「心理的安全性」です。

グーグルが組織開発に必要な解を「心理的安全性」に見出したのは有名な話しです。詳しくは以下のコラムを参照ください。

先ほどの「生産性の高い組織」に「心理的安全性」を掛け合わせると以下の4つの象限でチームを整理することができます。

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単純に生産性だけを追いかけていても理想的なチームは出来上がりません。現在のような変化の激しい時代には、生産性に「心理的安全性」を掛け合わせ、個のクリエイティビティを発揮させる必要があります。そのクリエイティビティが次のイノベーションに繋がっていくというロジックです。

この辺りが現在の組織開発ブームの大まかな背景でしょうか。


「関係性の質」は本当に高まっているのか?

昨今の組織開発ブームの中での大ヒットは、ダニエル・キム教授の成功循環モデルかと思います。成功の質を上げるためには行動の質を上げるのではなく、関係性の質を上げることが大切と説いた理論です。

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この理論自体は正にそのとおりなのですが、心理的安全性が声高に叫ばれ、「関係性の質」に注目が集まる一方で、歪みというか、ハレーションが生まれているのも、また事実だったりします。

立教大学の中原淳教授は自身のブログの中で「関係性の質」について、日本では「関係性の罠」として機能しかねないと注意喚起しています。

(中略)「関係の質」を高めるということで「メンバーが仲良くなるだけ」が志向されてしまうと、そこに「メンバー間の同調圧力」が駆動し始め、「言いたいことが言い合えない」雰囲気になってしまう。これが「関係性の罠」です。本来ならば、メンバー間に「仲が良いこと」にくわえて、「言いたいことを言い合えること」が「関係の質」として定式化されなければならない。しかし「関係の質」の概念が、イコール、「仲がよいこと」としてだけ定式化されはじめると、言いたいことがいいあえず、かえって思考の質が高まらず、創造性が失われるのではないだろうか。(以下、中原先生のブログより転載)

心理的安全性を単にやっている振り、にしないために安全性を確保した先での「真剣モードの対話」が必要なのは言うまでもありません。


個がイキイキと成長する組織へ

仕事を楽しむ。

こんなキーワードも多く聞かれるようになりました。そもそも「仕事を楽しむ」とはどういう状態なのでしょうか。「楽しむ」のような言葉を使うと、年配の叩き上げのような方からは「仕事は遊びじゃないんだよ!」とお叱りを受けそうです。この辺の言葉の定義も組織やチームを作っていくうえではダイジな要素だと思っています。

「楽しむ」の言葉の意味を探すヒントとして、「シリアス・ファン」という言葉があります。「真剣に、且つ楽しむ」ことを意味しています。野球やサッカーなどの部活をイメージしていただきたいのですが、ただ単に苦しくてツマラナイ練習を延々やるのはしんどいですよね。

しんどいだけでなく、苦しくてツマラナイ状態は競技力の向上にも大きなインパクトを与えないそうです。その逆で「楽して面白い」状態も同じく競技力を伸ばす力が足りないようです。能力開発のストレッチが足りていないのがその理由です。

要は「苦しいけど、楽しい」状態が一番成長する状態と言えるのです。

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中原淳教授は「ダイアローグ 対話する組織」(中原淳・長岡健 共著)の著書の中でこう言っています。

「対話」とは、 (話の中身・真剣な話し合い)であっても、 (雰囲気・自由なムード)でなければなりません。つまり、真面目なテーマについての話し合いを真剣に楽しむ、 「シリアス・ファン」というスタンスです。シリアス・ファンとは簡単に言えば、 「真面目に物事を楽しむこと」です。これは、真剣にスポーツをやったときに味わう楽しみと似ています。

スポーツとビジネスとでは違いもありますが、人が育つという観点では共通項があるのではないでしょうか。

ド真剣に仕事に取り組みながらも、どこかに楽しさを感じることができる「シリアスファン」の状態でいることが重要です。そして、その状態を組織開発という設計の中でマネジメントを通してチームに組み込むことができるかが重要なポイントだと思います。

まとめ

組織やチームを作っていくには順番がとてもダイジ。

❶ 成果規範の統合
❷ 集団凝集性の向上
❸ ダイバーシティの推進
❹心理的安全性の確保
❺シリアスファンの再生産

まだ、ここに書いた全部をスタッフには伝えてはいないのですが、特に❶と❷については疎ましがられても、うるさい位に伝えていこうと思っています。

そんなことを考え続けた11月でした。

こんにちは。最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは僕のつたない経営や、インナーブランディングを行う中でのつまづきや失敗からの学びです。少しでも何か皆様のお役に立てたら嬉しいです。サポートはより良い会社づくりのための社員に配るお菓子代に使わせていただきます!