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子どもが悪口を言い出した!「効果的な止め方」3つのコツ

元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。

今回は悪口に関するお悩みです。

優しくて無邪気だと思っていたわが子が、お友だちの悪口を言い出しました。びっくりしてしまい、ショックも受けました。
自己肯定感のために、子どもの気持ちを認める大切さはわかっているつもりです。でも悪口を認めるわけにはいきません。どう分からせるべきでしょうか?

もちろん「お友だちの悪口を言ってもいいよ」と言うのは、認める言葉ではないし、解決にはなりませんよね。
今回のポイントは、わからせようと指示するのではなく、子どもが自分でわかる力を認めて育てることです。
まずは、NGマンガを見てみましょう。

お母さんの言っていることは正しいけれども、子どもは悲しそうです。

■親が思うよりも、子どもは現実を理解している

お母さんは訳がわからず戸惑っているうちに、「仲間はずれにする」「無視する」なんて言葉が飛び出すと、びっくりしてやめさせたいと思いますね。
 
お母さんが言ってることは正論です。子どもにわかって欲しい気持ちもよくわかります。
 
でも、言われたお子さんはどう感じるでしょうか。
「ママに話しても全然私の気持ちをわかってくれない、もうママには話さない。悪いのは、Aちゃんなのに。。。」
と悲しく感じて、お子さんの考えはそこで停止してしまう恐れがあります。
 
反対に、お子さんが「ママの言う通りだ、明日AちゃんBちゃんと話をしよう」と素直に受け止めて行動したとしたら、今度は、Bちゃんを怒らせてしまうかもしれません。すると自分でどう行動したらいいのか、わからなくなるかもしれませんね。
 
私たちは、子どもに正しいことを教えて、行動させようとしてしまいます。でもこれだけは覚えておいてください。子どもは私たちが思っている以上にずっと賢いのです。
自分で考える力を認めて、信じる会話に変えてみましょう。
OKマンガを見てみます。

お母さんはただオウム返しに聞いているだけですが、その後の子どもの変化は・・・?

■子どもが悪口を言い出したときの3つのポイント

このマンガの後日談で、ちゃんと3人でお話しして仲直りできたこと、そして実は、Bちゃんが以前Aちゃんに意地悪をしていたこと、娘さんも意地悪されていたことも話してくれたそうです。
 
親があれこれ考えて正しいことを教えこまなくても
子どもって、自分で考えて、相手の気持ちになって解決できる力を持っているのだなあと、とても感激します。
この方法で「子どもが自分で解決できる力があることを発見できた」と多くのお母さんお父さんから嬉しい声をいただきます。ぜひ、試してみてください。

ポイントを整理しましょう。

ポイント1 気持ちを受け止める

「何があったの?秘密って何?」といろいろ聞きたくなりますが、まずは、気持ち(この場合は、怒っていること)を受け止めましょう(以前のnote「とりとめのない子どもの話。どうリアクションしたらいい?」も参考になります)。
 
気持ちを受け止めるというのは、「怒ってるね~!」と茶化したり、黙認することとは違います。
受け止め方は、子どもの言葉をそのままオウム返しするだけで大丈夫です。
「いい」とか「ダメ」とかジャッジせずに、子どもの言葉を繰り返すだけで、子どもはわかってもらえたと安心します。

ポイント2 親が答えを考えない

いろいろ聞いた結果、親は正しい解決法は何かを考えたくなります。しかし考えるのは、子どもです。
話を否定されたり、遮られなければ、子どもは自分のペースでお話しできます。声に出すことで感情をコントロールできるようになり、言葉にすることで考えを整理できるので、話しやすい雰囲気を続けましょう。

ポイント3 信じてもらえると、自分で解決法にたどり着く

マンガの場合、「仲間はずれにする」「無視する」と怒りに任せて言ってはいますが、それは「いけないことだ」と、親に言われなくても子どもは十分にわかっています。それを言っても、大好きなお母さんお父さんに叱られずに、少し悲しい表情で受け止めてもらえたことで、子どもは落ち着きを取り戻し、自分の頭で考え始めます。
自分で決めたことには責任を感じることができます。仲間はずれ、無視する(この場合)と考えたけど、「本当にそれでいいのか?」「他の方法はないのか?」と考え始めるでしょう。
 
子どもの年齢や成長によっては、自分で解決法にたどりつけない場合もあります。そんなときはヒント(Aちゃんには何か訳があったのかもね)を出しながら、焦らずに信じて任せることで、自分で解決できる力を育んでいきましょう。

■悪口を言える家庭は健全な証拠

ある意味、お友だちの悪口を言える親子関係は、とても健全だと思っています。なんでも話せる安心感を育んできた結果ではないでしょうか。
 
家で言えずに、外で言うようになって問題が大きくなる前に、吐き出させてあげましょう。もちろん、親自身が人の悪口を言いっぱなしにしないように日頃の言動に注意したいですね。

<今日のコミュポイント>
「親がどうすべきか考えるより、信じて認めることで自分で考える力を伸ばそう」

マンガ:とげとげ。

執筆:天野ひかり

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。