うまくできずに落ち込む子ども。どう声をかける?
子どもの自己肯定感を育てるために、認める言葉かけを心がけている方が増えてきました。
そんな中、最近多いのがこちらのご相談です。
認める言葉がわかってきたからこそ、落ち込む子どもをどう認めたらいいのか、悩みますね。私も自分の子育てで1番悩んだことです。
■「そんなことないよ!」は否定の言葉?
お母さんお父さんとしても、辛いですね。
運動会前にミーちゃんは一生懸命に走る練習をしたのでしょう。
でも自分が思っていたようには結果は出せませんでした。
落ち込む子どもを見て、お母さんお父さんもなんとか励ましたいと言葉をかけましたが、
ミーちゃんは、なかなか立ち直れません。
「私なんて、全然ダメだ」
と言うミーちゃんに、お母さんは、思わず、
「そんなことないよ!」
と慌てて否定しましたが、これは認める言葉なのか、親としては悩みますね。
子どもの性格によっても、状況によっても「これが正解!」という言葉はありません。
でもたくさんの親子を見てきた私が言えることは、
落ち込んで悔しがる子どもほど、努力をしているということです
(落ち込みを親に見せるかどうかは別問題なので、落ち込んでないから努力が足りないというわけではありません)。
そして、その体験をした子どもは、その後、伸びる可能性が大きいということです。
つまり、その「体験」を「経験」に変えられるかどうかが、大事なのです。
ダメだったという「体験」を どう解釈し、次に繋げる「経験」にできるのか、親の言葉かけを工夫できるといいですね。次のマンガを見てみましょう。
■子どもの失敗をどうプラスにもっていくか
お母さんはひと言目に「悔しいね」と言い、ミーちゃんの思いを受け止めました。
そして「結果」ではなく、「努力」していたことを認める言葉をかけました。
お父さんは、ミーちゃんの努力が発揮されていたことを具体的に、伝えました。
さらに、足の速い子が集まったグループという課題の難易度を客観的に、伝えました。
子どもには、なかなか気づきにくいこの視点が、いちばん説得力があるのかもしれません。
つまり、努力したことは無駄ではなかったことを再認識できる言葉かけが大事です。
こうした言葉かけによって、足が遅いからという能力のせいにするのではなく、努力は報われないとがっかりするのでもなく、努力の差として解釈できれば、これからも努力できる子に育つでしょう。
年齢によっては、次の課題を子ども自身が見つける会話を重ねられるといいですね。
そして何よりも、失敗しても、叱られたり非難されないことで、それは失敗ではなく課題の発見の場になり次への挑戦になります。やがて、それが成功に結びつきます。
「体験」は事実、「経験」は解釈です。
徒競走でうまくいかなかったという「体験」を通じて、どう「経験」にするのか。
親の言葉かけで考えるきっかけにできるといいですね。
■うまくいかなかった時にかける言葉を準備しよう
これから、お子さんは、たくさんの挑戦と失敗を繰り返すことになりますが、その頑張りを知っているのは、親だけ。
結果ではなく、その努力を認める言葉をかけて、子ども自身が自分で立ち直り、歩き始めるのを見守っていきましょう。
そのためには「うまくできたときの言葉」ではなく、「うまくいかなかった時にかける言葉」を準備しておくことが大事だと思います。タイミングを逃して上手く言えずにいると、子どもをさらに追い込むことになりかねません。
平静を装ってさりげなく言うことができれば、子どもも失敗とは思わずに前に進むでしょう。
今日のコミュポイント
執筆:天野ひかり
マンガ:とげとげ。
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。