「無職底辺氷河期世代、死ぬことを思いとどまり少し働いてみる ~その⑥~」

ビジネスホテルの清掃をやめてから4ヶ月も経ってしまった。その時にもらった給料はとっくに底を突いた。気持ちは焦るがどうにもならない。とりあえず自分の食い扶持を稼がないと生きて行けない。最低でも生活費とガソリン代合わせて6万くらいは欲しい。

ジーパンも一着しかなくて洗い替えがない。涼しくなってきたので薄地の長袖の服がほしい。ヨレヨレになった衣類や着ないものをどんどん処分したせいか、毎年秋になると着る物に困る。夏用の半袖のポロシャツでは寒いし、冬用の長袖では生地が厚くて暑い。夏服と冬服は一応ある。しかし、秋みたいにまだ暑い時もあるし、陽が落ちて夜になると寒くなるという中途半端な季節が一番面倒くさい。長袖の薄地の服が欲しいけど2着しかない。ソックスも足りない。

先日、緑の看板のMバーガーの閉店作業のバイトの面接に行ったら、あっさり採用された。0時閉店後の深夜作業だからあまり応募がないのかもしれない。タウンワークをずっとチェックしていたが、長い間募集が出ていた。
店長は40歳くらいの優しそうな話しやすい人だった。店舗スタッフも募集しているがアルバイトが集まらないと言っていた。3月の卒業シーズンになると大学生のバイトさんが辞めてしまう(既に二人辞めることが決まっているとのこと)ので、スタッフを補充するのに骨が折れるようだった。

以前は深夜2時まで営業していたが、コロナ禍で閉店が0時に早まった。閉店作業は2時間くらい(掃除や機械のメンテが全部終わるまで)だが、深夜時給1,300円。毎日は入れないから、水金日曜の固定で週3日出勤することになった。月3万ちょいにしかならないので相談してみると、隔週くらいで出勤日数を4日に増やすようにシフトを組むと言ってくれた。ありがたい。

どんな仕事も初めての出勤、職場の人や雰囲気に慣れるまでは緊張する。
初日に出勤すると、店舗のスタッフさんは何も聞いていないらしくポカンとしていた。頼んでおいた仕事用の靴もないし、タイムカードも用意されてなかった。結構いい加減・・・。靴と帽子を差し出されて借してもらった。

同じ閉店作業で入っている女性に仕事を教えてもらった。シンクに洗う物が山のように入れられている。食材などを入れる大小様々な金属製の容器、トングやヘラ、ソースを入れるボトルなど。
ある程度汚れを落として業務用食洗機のカゴにどんどん入れる。食洗機にかけて熱湯で煮沸洗浄する。機械で洗浄中、また洗い物をしてどんどんカゴに入れる。食洗機の中の物が洗えたら、入れ替えてまた洗浄する。洗浄が終わった直後の容器は熱湯で洗浄されているのでかなり熱くなっている。それをふきんで簡単に拭き上げて、同じ容器を重ねて棚にどんどん片付けて行く。洗い物が終わるまでそれを繰り返す。営業中に使ったふきんやタオルは洗濯機へ投入。

洗い物が終わったら、お客さんが食べるホールの床の掃き掃除、モップがけ、トイレ掃除、ゴミ出しをする。簡単に言うとこんな流れ。他にも機械のメンテや揚げ油の交換、厨房の油だらけになっている床掃除などの作業がある。これを二人で分担してやっているらしい。
洗い物と店内の掃除を一人でやるには、2時間で終わらせるのは結構キツイ。時間との戦いだと言っていた。しかし、もし2時間を過ぎたとしても残業扱いでお金はつくから大丈夫だと店長が言っていた。

モップがけをしていて思った。モップの毛がかなり抜けていてペラペラ、真っ黒になっている。いったい何年使い回しているのかと思うくらいへたっているモップだった。
トイレ掃除は手を洗う流しをこするスポンジも、拭き上げるクロスもない。それでどうやってトイレを掃除しろと言うのか・・。何ていい加減な。店長は朝から夕方までしかいないので、夜はバイトに任せっきりで知らないようだ。学生アルバイトさんはよほど気の利く人以外はそういうことは言わないだろう。道具が足りない、道具をケチる、道具の質が悪いと、店舗は綺麗になるどころか、どんどん汚くなって行く。これは清掃業で経験済みである。

初日はシフトに入っている女性に教えてもらいながら一緒に作業をして、ちょうど2時で終わった。一人でやったら多分2時半とかになりそうだ。しかし、場数を踏めば要領良く、スピードも早くなるだろう。とりあえず初日はそんな感じで終わった。

久しぶりに働いて喉も渇いたので、帰りにチューハイを買って帰った。労働の後の酒は格別旨い(生意気にw)。
底辺無職(今日から無職じゃないけど)の氷河期世代は深夜作業で2,600円を稼いで、久しぶりに清々しい思いで家路に着いた。