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ニュースの波にさらわれないために ~OFFしてみる勇気~

社会人として、最新のニュースを常にフォローすることは当然のたしなみ。アンテナを常に貼っていることがいいオトナの必須事項。

とはいっても、たくさんのアプリや情報源に登録して、1日に何度も届く通知に集中力を妨げられて困ったことはありませんか?通知のタイトルから面白そうなもの、役に立ちそうなものを拾い読みしたり、何となくテレビのニュースを流し見たりしておけば、ひとまず社会に役立つ知識を得て、デキる人になれると思っていませんか?……実はこの考え方は古くてばかげた考えになりつつあるといわれています。


と突然いわれても、急に毎日のニュースをみるのをやめるのをためらう人は多いかもしれません。今日から完全にOFF、とはいかないまでも、本当に必要な情報を選んで賢く生きていくために、メールマガジンやアプリを整理したいと思っている方の背中を押すために、実際にニュースのフォローをやめた人のレポートをご紹介します。

(ちなみにこの文章はテレビやインターネットのニュース番組をフォローすることについて書いてあり、ジャーナリズム全体を否定するものではありません。 )


ニュースをOFFして気付くこと:


1)気分が良くなる
ニュースをやめて気分がよくなる人が多いそうです。ニュースを見るのをやめると息が詰まるというニュース中毒者の方もいるかもしれません。ただ、残念ながらそれはニュースが新鮮で澄んだ空気を運んできてくれるとしたら、の話ですよね。実はニュースは世界で起こっていることの代表的なサンプルとは程遠いんです。

なぜかというと、ニュースの作り手はあまり正確さを重視していないからです。ニュースの選択には、私たちの否定的なバイアスが利用されていて、1)珍しい、2)恐ろしい、3)人気が出そうなものが取り上げられているので、ニュースを見て「世界の現状」を本当に理解できているとはいえません。

人間は古くから、怖いこと、腹が立つことに注意が向くように進化してきたわけですが、現代社会で恐怖や怒りが常に役立つわけではありません。ニュースから一度離れてみると、ニュースが意図的に人の感情を揺さぶろうとしていることに気づくはずです。

ニュースは「良心的な人の懸念」にこたえるために集められているわけではなく、報道は商品であり、売っているのは恐れや他のグループへの嫌悪感なんてこともあります。

世界で何が起きているか正確に知るためには、自分自身で情報を取捨選択し、理解する必要があります。たった数十秒~数十分で物事を深く理解することはできない、ということを頭に入れておきましょう。

2)ニュースを見て何かを成し遂げたことは一度もない
ニュースを見て何か達成したこと、ありますか?「常に情報を入手するのは当然」「世界で何が起こっているのか知っておかないと」「こんな問題を無視するなんて」でも、これって答えになっていますか?

「情報を得る」ことはすごいことのように聞こえますが、バスの時刻表を読むことも「情報を得て」いますよね。

ニュースをやめてひと月で、何を失ったか。結局のところ、数年分ののニュースは、自分の生活の質や、永続的な知識、他の人を助ける能力の向上に、何一つ役にも立たなかったことがハッキリします。ましてニュースに使っていた時間に何ができたか、と考えると。。。その時間を言語の学習や、興味のある問題について本やエッセイを読むことに使えたと思うと、がっかりしてしまいます。

自分がニュースの禁欲生活をしても、今よりも悪い内閣が任命されるわけもなく、災害救援活動は、いつものように着実に続けられていきます。「世界の状態」を監視するという自分の趣味は、実際には世界に全く影響しないんですね。

私たちはおそらく1日に手に入る情報がごくわずかだったはるか昔の、トレンドをとりあえず知っておくことが何かしら役に立つ、という観念をいまだに引きずっているのでしょう。

3)最新ニュースについての会話のほとんどは中身がない
「毎日の会話のタネになる」というのが、先ほど出てきた 「何が達成されるか」という質問に対する最低限、意味のある答えかもしれません。でも、ニュース断ちして、他の人が話しているのをよく聞いてみると、話の内容を本当にわかっている人はほとんどいないことに気付くかもしれません。

問題を機能的に理解することと、ニュースにざっと目を通すことは全く別物です。自分が特に詳しいニュース(専門分野や地元の情報)について、ほかの人が雑談しているのをたまたま聞いたことってありませんか?どう思いましたか?ちょっと報道を見ただけで雑な感想を言い合って、のんきな人たちだなぁ、本質はもっと違うんだけどな、と思うかもしれません。

自分の考えが本当は間違っていたとしても、ちょっと変わった意見、新しいような意見を言ってみると、何となく気分がいいものです。ニュースは私たちにそのための格好のネタを提供してくれるのです。問題についてよく知らないほど、大胆な意見を言いやすいんですよね。誰にでもわかるように調理されたニュースで得た薄い知識だけなら、次にすべきことがはっきりわかった気になるでしょう。でも、本当の専門家は、対立意見の兼ね合いや微妙な判断に迷った上で慎重で丁寧な回答をするはずです。

ニュースでざっと見ただけの人同士の雑な会話ほど無駄なものはありません。

4)「情報を得る」にはもっと良い方法がある
私たちは皆、十分な情報を元に生きていたいと思っています。ニュースももちろん情報を得る一つの手段ですが、一番いい手段だといえるでしょうか?

現代には「情報」のソースはたくさんあります。シャンプーボトルの裏側にだって情報が入っています。理解できるよりもはるかに多く情報が氾濫している今、その情報に自分の時間を使う価値があるかどうかを選択する必要があります。ニュースの情報量は無限大ですが、深さはどうでしょうか?本当にそれをみて「物知りで賢く」なっていますか?ひととおり興奮して後に何も残らないなんてこともありますよね。一年前の今日は何のニュースに驚いていたんでしたっけ?

ニュースを見るのに費やす時間は、他の方法で世界について学ぶことができなかった時間とも言えます。例えば、一つのトピックに関する本を3冊読めば、世の中99%の人よりも詳しくなっている、とも言われます。何年にもわたって一日中ニュースを見つづけても、せいぜい数週間も持たない莫大な話をうっすら聞いては忘れて、を繰り返すだけになってしまいます。もはやそのニュースが嘘か本当かも区別できないままに。

5)「気にかけている」だけで、何かをした気になっている
ニュースのほとんどは不正や大災害に関するもので、誰かが傷ついているのを無視するのは、当然気持ちのいいことではありません。ごく表面的なニュースでさえも、とりあげられた問題は(大体は)現実に起きていることです。そして事実はテレビを通して見るよりももっと生々しいものです。世界中で苦しんでいる人を無視なんてできない!と涙を流し、怒りに震えながらテレビを見ていませんか?……でも、悲しいかな、この「心配」は、自分の罪悪感を少し和らげるだけで、実際は誰の助けにもなっていないんです。

それどころか「少なくとも気にかけている」という感覚に満足して、実際の行動を起こさずに終わってしまうこともあるんです。実際には何もしていなくても、災害の動向を共感的に見届けているだけで、少なくともスイッチを切るよりも少し思いやりがあるように感じます。でも実際は、私たちの大多数は、テレビで取り上げられるかどうかにかかわらず、この世界で起こっている残虐行為の犠牲者に1ミリたりとも役に立っていません。しかもその事実を認識していないんです。何もしないまま、とりあえず役に立ったような気になっているだけなんです。

もしかするとこれが、ニュースを消すことができない最大の理由で、ニュースを見続ける最高のいいわけなのかもしれません。


……ここまで読んで、ニュースの登録を整理したり、テレビを漫然と見るのをやめてみようと思いましたか?

最近ではNHKのBlack Lives Matterの問題のアニメーションの偏見も大きな問題になりましたよね。皆さんは欧米での黒人の差別の歴史について、アジア人の差別についてどれだけ知っているでしょうか?日本での外国人への差別について、何か知っていますか?自分の地域に不便を感じている外国人やマイノリティの人はいませんか?

コロナウイルスの対策についてはどうでしょうか?感染者数のコントロールに難渋している国や地域になにか貢献しましたか?感染してしまった人、感染のリスクを冒して働き続けてくれている人はどんなことに困っているでしょうか?経済と感染リスクのバランスをとりながら、日々自分にできる最善の対応をしていますか?

新政権が高齢男性ばかり、といたずらに批判していませんか?新しい首相のこれまでの実績や政治理念を知っていますか?どんな人に未来の日本を任せたいですか?若い女性が総理になったら嬉しいですか?自分の上司になったら?自分の母、妻、姉妹、娘が政治家になりたいと言ったら、心から応援できますか?


私個人はニュースが絶対悪とは思いませんが、情報に真摯に向き合う練習を始めてみたくなりました。

何も、ニュースで取り上げられる問題の一つ一つを自分で解決する必要はありません。でも、無駄なニュースの時間を少しカットして、自分の興味のある問題のために必要な勉強や行動に使う、自分の仕事の質を上げて社会に貢献する、家族や周りの人が喜ぶことに時間をとる、など、ニュースよりも有意義と思えることに時間と労力を振り分けてみてもいいかもしれません。

ニュースをやめてみたら、自分はどう変われるでしょうか?


参考:https://www.raptitude.com/2016/12/five-things-you-notice-when-you-quit-the-news/

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