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なんやその態度は!ええ!
少し身体が大きくて動きの鈍い店員に 客が怒鳴り続ける声が店に響く
立ち食いうどん屋の店内で 店員が立ちつくしていた

「お客さん帰ってくれるか」
「なんやおまえ、客に向かって帰れと言うんかあ」
「お客様は神様とちゃうんか!なに考えてるや このボケ」
「うちはお客さんより店員の方が大切なんや。金は要らんから帰ってくれるか」
「なんやと そんな態度でええんか ネットでおまえの店のこと書いたるからな」
「書くならどんどん書いてもろてええで。どうぞどうぞ」
「こんな店 二度と来るかあ!」

「さあ仕事に戻って戻って」

今なあ、ほんまに人の確保苦労するんや
もう客は神様の時代ちゃうで
従業員が神様や
弟の口癖だった
立食うどん屋が
支える経済の末端に
あいつはちゃんと
プライドを持ち
働く人の盾になる矜持を
その胸に

今日は2020年に58歳で逝ってしまった弟の三回忌
コロナで会えなかった親族が久しぶりに集まり
不謹慎かもしれないが
にぎやかに会食
コロナで外の食事も久しぶりと
弟の写真の前で
おしゃべりして

もし生きていれば
と考えてしまう
リストラを拒否して部下を庇い
自分が退職する生き方を選んだおまえ
苦しくなるのはわかっていて
その道を選ぶなんて 
韓国ドラマの主人公じゃあるまいし

もういないんだなあと
一人でビールを傾け
おまえを思う


2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します