見出し画像
毛蟲
働くことは金持をつくる
貧乏な詩人よ、働かう!
毛蟲はたゆまず難儀して
豊麗な蝶になる 
アポリネール動物詩集(堀口大学訳)より


枯花

シクラメンの萎れたピンク
毎年咲くんだけどね
だんだん花が小さくなる
それらしく収まる 人も


空席

温もりを残している椅子
革の背もたれに肘掛け
主は先ほど出かけてしまい
椅子独りあちらの方向向いたまま

錆鍵

独りの時間が大切だと気づくのは
独りの時間が欲しかった忙し過ぎる日々よりも
独りになれる いやなりたくない今の方が
錆びた鍵 放置されたらもう使えない

分岐

男なんてやることがないから詩集を読む
石垣りんの詩集を読んでいたら
黒田三郎六十歳で亡くなったことが出て来て
黒田さんの死は遠すぎる とある 私は六二


毛蟲

どうやら僕は毛蟲ではなく 平々凡々の
ぼんやり蟲らしい 


この記事が参加している募集

振り返りnote

ほろ酔い文学

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します