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「おしゃべりが苦手な九官鳥」(詩)



おしゃべりが苦手な九官鳥
縁側の籠の中で

今日も暮らしてる 

きっと あしたも 暮らしてる 

こうして ずっと 暮らしてる

「あら この九官鳥 おしゃべりしないのね」

人間どもは 九官鳥はおしゃべりだと

思い込んでるらしい

おいらの顔を覗き込んで にっこり笑う

愛想笑い

残念でした おしゃべりが嫌いな九官鳥もいるんです

しゃべるのが苦痛な九官鳥だっているんです

放っておいてくれませんか


雨がしとしと 朝から降り続く

目の前をねこがとおる

しょんぼりととおる

びっしょり濡れてとおる

あいつ ねこ語がしゃべれないねこ

九官鳥は一目でわかった

おまえもおいらと同じだ

なんにも違わないけれど

みんなといっしょに暮らせない

ねこ語がしゃべれないなんて

ほんとうは どうでもいいこと

どうでもいいこと


ある雪の降る日

ねこは うずくまってうごかなくなった

ちょうど九官鳥の籠の下で

さむかったろ

辛かったろ


おしゃべりが苦手な九官鳥

縁側の籠の中で

今日もくらしてる 

なにも昨日と変わっちゃいないが

昨日より今日は ちょっと無口になった

ちょっと無口になった


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