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コロナ禍の前に逝ってしまった父
最期の日 泣きながら妻が電話して来た
予感があったのに仕事に出てしまった
もう意識がない父に言い訳も出来なかった
あの日なぜ仕事に行ったのか 今も悔やむ

小田急線の普通に乗って藤沢へ行く
母親と娘が「じゃこれは?」と話している
センスの磨き方という本を二人で見て
こんな時間が永遠に続くと思うんだ
記憶にきっと残らない大切な時間

娘が高校生の頃 誕生日のプレゼントで一緒に靴を買いに行ったことがあった
横浜の店を一軒ずつ周り 最初の店で娘がとても気に行った靴があった
でももう一軒 もう一軒と周り やはり最初の店に戻り 
娘は考えた挙句結局靴を買わなかった
買わないで帰る娘は あの時なにを思っていたのだろう

僕はもうひとりの自分がどこかに生きていると信じている
僕と同じもうひとりが生きていて
傷つき血が流れていて 逃げられはない
もう一人の僕には
僕の今の生き方はどうみえるのだろう

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します