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詩)横浜の老詩人〜コロナ禍での久々の邂逅

横浜は いつも若さを求める街だ
中華街はドラゴンの悲鳴と雑踏
三国志は 胃袋の資本主義にねじ伏せられ
神さえも 商売繁盛が身上だ

さて この街で
老詩人たちの会合があった コロナで久々の邂逅だ

元気だったかい ああ  おまえこそ

老詩人は しゃんと背中を伸ばしていた
豪華な小判型の大皿には
一羽の鳳凰鳥が羽ばたいていた
ひとつとして 同じ料理はなかった

老詩人はうまそうに
一杯ビールを飲んで 唐突にいった

わたしに逢いたい人は もういない
わたしを待っている人も いない
たしかに そうつぶやいた

月がきれいな夜だった
丘の上の公園で
老詩人は
原稿用紙を広げ 詩を書くと
腕を組んで
目をつぶって
一度笑って 逝った

風が まあるく 一回だけふいて
老詩人が
さらわれていくと

喰えない 詩  

だけが 
残った

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