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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : ランチ屋のコンセプトとブランディング

ランチ屋はとにかく目の前のオーダーを捌くことに全精力を傾けます。いかに素早くランチを提供するかにメチャメチャ注力するわけです。ビジネスマンの昼休みを一秒でも無駄にさせないためにみんなで頑張ります。「ジンジャー混んでるけど早いから」と言ってくださる常連さんのお言葉が励みです。

もちろん、不味ければお客様なんて二度ときませんって。そこは暗黙の了解事項よろしく、「美味い物食わせろよ」と。週に4~5回いらっしゃる常連さんは、そこのところ徹底しています。まず、しゃべりません。滞在時間は相当に短いです。それでも、満足したという目線だけは送ってよこします。こちらも自然と頭が下がります。たま~に空いているタイミングでお話しすることくらいはありますよ。そんなときは、随分前からの知人友人のような感覚でしゃべったりもします。顔には出しませんけど、内心いい関係が築けたことが嬉しくてしょうがない瞬間です。

地元の方をメイン・ターゲットにしているランチ屋の経済観念は超ミクロです。1kmほど離れた場所にある木場公園でイベントがあってどうのとか言われても、「そんなに遠くの出来事関係なくねぇ?」と内心つぶやいています。本音を言えばもっともっと複雑かも知れませんが、地域のイベントもいろいろあって、町歩きのお客様や観光客を呼び込むようなイベントにお声がけもいただくのですが、正直言って無理です。ランチは地元の方で結構混んで、夜は音楽好きが集まってくるという、ターゲットがしっかり絞り込んであるお店ですから、そういったコンセプトの中でなら動けますといったところです。

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カフェを作るときにコンセプトはもちろん重要です。ブランディングの問題でもありますが、少々難あり物件やまるで商業性なしのロケーションといった物件でも、コンセプトさえしっかり打ち出してあれば、お客様はきてくれます。うちの場合は大通りに面したビルの2階ですが、入口が脇にあるだけで見つけ難いようで、やや難あり物件といったところです。しかしランチタイムや週末は結構混んでいましたし、音楽好きのお客様は地方や海外からもいらっしゃいます。趣味性の高いテーマを持っている店は、上手くやれば強みになります。ヘタすれば避けられます。敷居が高くなるからです。

よそ様のことをとやかく言う気は毛頭ありません。世の中には素敵なお店がいっぱいあって、昔はカフェ巡りが趣味と言ってもいいくらい、カミサンといろいろなお店におじゃましました。皆さんいろいろ個性を打ち出していて楽しい限りです。どういった飲食を提供するかという部分、味で勝負という部分では厳然とした物差しが存在しますが、コンセプトやブランディングの部分では、趣味が合うかという好き嫌いの問題もありまして、いろいろな価値観が共存する場です。決して単純な物差しではないところがカフェづくりの難しい部分でもあり、楽しい部分でもあります。

結局は自分の強みを生かせるコンセプトが最も強いと考えています。ウチの場合は、アナログ・レコードがいっぱいあるという点と、ブックカフェ的な利用もできる点でしょうか。一応フジテレビの「タイプライターズ」という物書きさんの番組でご紹介いただいたこともあります。加藤シゲアキ君のファンの皆様にはお世話になっております。元々は「いろいろなイベントができるようなハコが作りたい」というのが基本ですが、ただのハコではなく趣味性が強いので、利用される方も自ずと限られます。

今般コロナウィルスの感染予防のためにパーテーションを設置しましたが、どうしてもハコ利用のイメージが阻害されることになってしまいました。どのみちしばらくイベントはやりづらいでしょうけど、少人数が横並びであれば問題はなさそうですから、定員を絞ればいいことでしょう。結果として可動式のものにせざるを得ませんでした。ブランディングと言う意味ではまんま従来の踏襲ですが、コンセプトはバッティングということになりそうです。珍しい事例かもしれません。…ウチの場合、猫好きのお客様もそれなりにいらっしゃいますからね。

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さて、久々の仕込みは無事終了しました。42日ぶりの再開です。お待ちしております。

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