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7インチ盤専門店雑記439「無法の世界」

自分の場合、このレコードはどこでいつ頃手に入れたかということが、レコードの印象や評価の中に入り込んでいることが多いので、一般的な評価と違ってしまうことも多いようです。音楽などというものは、思い入れも加わって、その人間の人生をどう彩ってきたかという価値もあるので、曲の評価は平均的な話でしかないと考えております。

ヘッダー写真のザ・フー「無法の世界 Won't Get Fooled Again」、いつ、どこで入手したか思い出せなかったんです。好きな曲ではあるのですが、思い入れが薄いというか、何か記憶の中で混乱が起きていて、自分は評価することを一時停止したまま40年ほど経ってしまったような状態だったんです。

実は手元に2枚ありまして、売りボックスに入っている方は割と最近に販売用として入手したことを憶えておりまして、もう一枚出てきたみたいな状況でした。もうろく爺そのものですが、でもあまりにキレイなので、相当前に手にいれたものだということは分かっておりました。とにかく、1970年代、ザ・フーの7インチ・シングルは全然手に入らなかったんですよ。

自分の場合、ザ・フーとの付き合いは結構長くて、中学生の時に「ライヴ・アット・リーズ」を買ってしまい、音の悪さにメゲて距離を置くようになったもので、他のブリティッシュ・ロックのバンドほど70年代には聴いておりません。映画「トミー」は高校1年生のとき、劇場公開時に観ておりますが、「よく分からない」というのが正直な感想でした…。

1975年の「スクイーズ・ボックス」と1978年の「フー・アー・ユー」の2つのシングルは大好きだったんです。その頃、シングル盤が手に入っていれば、おそらくもっと聴いたとは思うのですが、全然手に入りませんでしたからね。結局アルバムで買いましたけど、とにかくザ・フーの7インチ・シングルというのは、国内盤が発売されたか疑うほど手に入らなかったんです。

1980年にピート・タウンゼントの「エンプティ・グラス」というアルバムがリリースされまして、これも発売とほぼ同時に購入しました。このときもシングル盤は全く見かけませんでした。シングル・ヒットした「レット・マイ・ラヴ・オープン・ザ・ドア」という曲が大好きだったもので、聴き狂ったんです。この曲はラジオ番組でも紹介したのですが、…まあ評判は悪かったですね。「どこがいいの?」と何人もの方に言われました。まあ、私の好きな曲はそういう扱いを受けるものが多いようです。

この時期です。大学に入って、少し金銭的にも余裕が出た頃、ザ・フー関連のレコードは遡って買い集めたんです。その時期、再発盤LPは普通の値段でまだ手に入ったんです。オリジナル盤は既にかなりお高くなっておりました。

頻繁に出入りしていたのは、新宿とお茶の水のディスクユニオンでしたけど、他のお店も回って随分探しましたが、シングル盤でその時期手に入ったのは「無法の世界」1枚でした。…これですね。昔から持っていたらしい状態のいい「無法の世界」、ディスクユニオンのお茶の水の坂の途中にあった店舗で見つけたものでした。嬉しかったですねぇ。有り難すぎてあまり針を下さなかったように思います。そもそもアルバム「フーズ・ネクスト」収録曲では「ババ・オライリー」が圧倒的に好きでしたからねぇ…。それでも同じ時期の曲で、キーボードの音は同じですし、大事にし過ぎてなくしてしまったようなレコードだったんです。

結局日本人にはあまりウケないという世間一般の評価がバイアスになってしまいましたかね。フー好きにはやたらと評価される曲ですが、これが好きと言うと、また「どこがいいの?」と言われそうで、あまり話題にしなくなってしまいました。

ちなみにその後もシングル盤は探しておりまして、状態のいいものが少しは手に入ったものの、売らないよという値札をつけて売りボックスに入れていたら、何枚かは売れてしまいました。5ケタでもねぇ…、売れるんですよ。ホント手に入らなかったものですからね。


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