あらびき桃太郎 - 8　「出発」

じい：「ってか受胎告知でもなんでもねぇじゃん!!!」
ガブリエル：「いいんだ。少し遅かっただけだ。にわとりが先かたまごが先かみたいなあれだ」
じい：「いやテキトーに逃げようとすんじゃねぇ!!ぜんぜん意味ちがうからなそれ!!」

ダニエル：「そいつか？ほぉ。それならそれで。初めからそうしろよ。別に誰だっていいんだから。上で観察しているぞ。LINEの返信溜まっちゃってるから今日はとりあえず帰るわ。バイバイ」

ダニエル：「あっ、痛っ！」

スーッと雲は閉じていった。
じい：「あんなのが天にいるんだ。もう神頼みやめよ。強く生きよ」

桃太郎：「なぁガブリエル、キューセイシュってなんだ？何するんだ？」
ガブリエル：「いいか桃太郎。お前はこれから旅に出るんだ」
桃太郎：「おう、出てるぞ？」
ガブリエル：「そして鬼ヶ島というところに鬼を退治しにいくんだ」
桃太郎：「してるぞ？」
ガブリエル：「さぁ行け桃太郎！旅立ちの準備はいいか！」
桃太郎：「だからもう始めてるぞ」

こうして桃太郎は天から任命され、救世主として正式に旅に出ることになりました。

桃太郎：「いや、アンタらついてこないの？」
じい：「え？だって旅ってだるいじゃないですか」
ばあ：「帰って寝たいしな」
桃太郎：「冷たいやつらだな」
ガブリエル：「おれはついていけないんだ。天使にも色々ルールがあって。下界での動きはけっこう制限されちゃってて」
桃太郎：「うそつけ。行きたくないだけだろ」

桃太郎：「なんかちゃんと理由がありそうだな。そんな感じだ」
じい：「実はそうなんだよ」
桃太郎：「なんだ」
じい：「なんか……アレなんだって。作画的にアレなんだって」
桃太郎：「作画的にアレ？作画ってなんだ、何の話だ？」
じい：「これから旅にいくじゃない？そしたらさ、仲間が増えるじゃない？たぶんイヌとかサルとかその辺」
桃太郎：「そうなの？なんでわかるの？」
じい：「そうなるとさ、もうもうパンパンなんだ。描くのがアレなんだよ。マチルダ的にアレなんだよ」
桃太郎：「マチルダってなに」
じい：「マチルダ的思想です」
桃太郎：「だからマチルダってなに？」
じい：「でもマチルダに納品する前にこれ書いてるから、マチルダの意向ではないんだ。マチルダがマチルダしようって言ったわけじゃないのよ。どちらかと言えば見切り発車でマチルダし始めたこっちが悪いって感じ。一旦マチルダしときたいなって。ここいらで一旦キャラをマチルダしとかないとヤバいなってわけ」
桃太郎：「ずっとなに言ってる？？」

こうして、桃太郎はなんやかんやで一人で旅に出ることになりました。少しだけ身軽になったような気がします。あぁ、いえ、桃太郎がではなくて。え？桃井は大丈夫ですよ。簡単なんで。描きやすいし、セリフもいらないですしね。

〈第9話に続く〉

イラスト：石川マチルダ