季節感バグ男とボスニア・ヘルツェゴビナ
よく分からず行ってみたらめっちゃよかった国ランキング、上位5位に入るであろう国の備忘録。
フライトで行くことになったボスニア・ヘルツェゴビナ。
得体の知れない国だったので、首都サラエボに着いたら他のクルーと一緒にとりあえず街に出てみることに。
待ち合わせの時間の少し前にロビーに降りる。
窓の外の雪景色が綺麗でぼーっと眺めてたら、インド人のクルー(男)がピッチピチ白タンクトップ1枚で現れた。なかやまきんに君もびっくり。
I only have this one エヘヘヘヘへへ
ちゃうねん。あほか。真冬のバルカン半島やぞ。
さすがに一緒に歩きたくなさすぎる。
筋肉自慢する場所間違えすぎてる。
見かねたパイロットが、お前絶対死ぬ、と言い放ち部屋に戻り、彼に貸してあげるために自分のセーターとジャケットを持ってきた。
神様パイロットのおかげで筋肉男の見た目が無事にまともになったところで、ご飯を食べにシティへ出発。
会話の半分以上が下ネタのシリア人 客室責任者。彼が歩いてる人を半ば無理やり捕まえておすすめを聞き出し、教えてもらったお店に入る。
さあまずは飲み物頼みましょう、となった時。
僕はアルコールは飲めないけど、各々好きなものを頼んでね、と客室責任者が一言。
素面で下ネタを永遠に話せる彼が飲めなくてよかった、と思っていたら、私も飲めない、私も飲めない、と、どんどん続いていくクルー達。インドネシア人、インド人、シリア人、この日のクルーは見事にみんなムスリムだった。
お水、スパークリングウォーター、クランベリージュース、と次々に頼んでいく彼ら。
うーわ、どうしよ。この雰囲気に従うのか、自分の欲に従うのか。
飲まないとやってられねえ!!うぇぇえ!!っていうタイプでは全くないけれど、地元のお酒が気になって仕方ない。ボスニアのワイン、って、響きだけでもう美味しそうやん。
飲み物頼まないとご飯にありつけない。さあ時間ない、どうする。
この時まだ注文をしてなかったのは、端っこに座ってたパイロット。季節感バグ男に服を与えた神。ドイツ人。彼ならいけるやろという偏見だけを頼りに必死でアイコンタクト (という名の圧) を送る。
彼はうなずいた。拍手。道連れ確保。白ワイン注文。
料理の名前、何ひとつ覚えてないけど絶品でした。未だに忘れられないレベル。
そしてワインもすごくおいしかった。
(欲に走りアルコールを頼んでしまったので、さすがにお酒の写真を撮るのは我慢した)
お腹も満たされて、お散歩。夕方の景色も綺麗。
この場所でピチピチタンクトップはやっぱりどう考えても絶対にあかんかった。
余分に服を持ってきてくれていたパイロット様に改めて感謝。
翌日は一日ドライバーさんに付いてもらい、筋肉インド人と、インドネシア人の女の子と私の3人で少し遠出することに。
待ち合わせ時間。彼はパイロットから借りた服をちゃんと着て降りてきた。本当によかった。
モスタルという地方都市に行きたいという希望だけを伝え、あとのコースはドライバーさんにお任せ。
明るくてカラフルで綺麗な建造物がたくさん並んでいるというよりは、どちらかというと「静」な感じの街並みではあるけど、好きだった。
ドライバーさんは要所要所で車を停めて、景色を見せてくれたり、国のことを教えてくれたりした。
キラキラなブルーの海も大好きだけど、この透き通ってないグリーンの水の色も良い。
一緒に行ってたあとの2人は、景色と一緒にお互いの写真をバンバン撮り合いっこしていた。このモデル写真ごっこみたいなのは本当にクルーあるあるで、私の写真撮って!って言わない方が浮くレベル。
私は数枚風景を納めたら満足で、あとは景色を眺めることに時間を使いたい。ドライバーさんが、君は世界を見るのが好きなんだね、って話しかけてくれて、この国のいろんなことを教えてくれた。
綺麗な場所だけじゃなくて、戦争の跡地についても教えてくれたし、連れていってくれた。
紛争の跡もまだたくさんある国。このドライバーさんは生き抜いて、こうして伝えてくれてることにすごく大きな意味があるなと思いながら聞いていた。
この国のこと、全然関係ないこと。気づけば途中から私はずっと助手席にいて、道中はドライバーさんと話していた。
出身国を聞かれたからどこやと思う?と言ってみる。
「なんとかスタン系の国。」って答えが返ってきた。適当すぎ。ボスニアの高田純次かよ。
すっかりドライバーさんと仲良くなった頃に、この日の目的地、モスタル到着。
素敵。好き。すごい好き。
私の大好きなトルコに少し似た感じもありつつも、でも独特。寒さも曇り空も全部が素敵に見えた。
お散歩を続けていると小さなモスクがあった。
筋肉インドがお祈りに行きたいと言うので、ここで待ってるから行っておいで、と伝えると、彼は突然目の前にあった水場のような場所で裸足になり足を洗いはじめた。
寒そうでしかなかったけどちゃんと清めてるんやなと思って見てたら、今度は急に水に頭を突っ込み、大型犬の水浴びよりも派手に体をぶんぶん振りはじめた。
そしてびっしょびしょになりそのままモスクへ消えて行った。
さすがにびっくりした。ドイツ人の神キャプテンがお貸ししてる服も当たり前に水びたし。
宗教のことは詳しく分かってないからいい加減なことは言えないにしても、人から借りた服ずぶ濡れにする信仰はさすがに知らん。
まだびっくりした状態でしばらく待ってたら、満面の笑みでヤツが戻ってきた。びっしょびしょのままで。
ただ、彼のおかげで飛行機のトイレが高確率で水浸しな原因の一つは解明できた気がした。
(飛行機のトイレ話はこちら。)
モスタルからの帰り道も数時間。
また時々寄り道しながら綺麗な景色を見せてくれるドライバーさん。
帰り道も私は助手席に乗って、ずっとべらべらお喋り。
いい人やったなあ。元気かなあ。
どうでもいいけど、今改めて見たらこのドライバーさん大きいなあ。(私173cm)
雪景色の中にぽつんってあるお店にも連れていってくれた。
暖炉囲んでみんなでコーヒー飲んだ時間もすごく良かった。
観光はもちろん楽しめるけど、100%観光地!っていう感じではないところも、澄んだ空と水の色が素敵なところも、ご飯がおいしいところも、人が優しいところもすごく好きになった国でした。
日本からだとなかなか行きにくい場所ではあるけど、いつかもう1回必ず行きたい。
この記事書くにあたってボスニアで撮った写真を見返してたら、ドライブ中の景色を動画にも結構残していた。
車窓からの動画を見ながら素敵な時間やったなあ、って思い出に浸りかけたら、「私がここで運転したら2秒で死ぬって誓える。」ってドライバーさんに宣言してる自分の声が入ってた。
あんな偏差値3みたいな会話を助手席で何時間もベラベラ喋っていないことを何年か越しに願いながら、今日はボスニアに想いを馳せて寝ます。おやすみなさい。