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そこはパラダイス

少し前の話をする。



 そこはパラダイスであった。
 場所の話である。

 唐突に、あるいは藪から棒に、つまりは前触れもなく、何こさ言い出したのかと思われるのかもしれぬ。そう思われても一向に構わないのであるが。

 そこはパラダイスであった。
 本当の話である。

 ご存知の方はご存知なのであるが、現実にそういう場所が存在するのである。…嘘やと思うてるな? 嘘でない証拠を見せたろ…というのは、古典落語・住吉駕籠に出てくる酔っ払いが駕籠屋に絡んで云う科白なのであるが、そうでなくとも論より証拠とむかしから言うのであるから、ここでひとつ証拠を出そう。

ほらね。
パラダイス。


 そういうことである。
 論より証拠である。

 パラダイスにおいては、昼からアルコール類を飲んでも良いのである。なぜならばメニューにビールの一覧があるからであった。なんと素敵なところであろうか。うぇ〜い。そしてわたしは目移りして逡巡して、つまりはあれこれ迷うた挙げ句に、日本酒酵母を使用したという "5 daughters" を注文した。

LIFE IS
PARADISE


 チューリップ型のグラスは、泡を強調するための形である。ビールの泡といってもひととおりではなく、これはもっちりふるふるタイプの泡である。華やかな香りに気分が乗っていく。注文したものは小麦由来の風味があり、それだけでない複雑さは確かに日本酒にルーツを持つ…と思い、これはあとから気づいたのであるが、そうか、そういえば五人娘という日本酒があった。それが" 5 daughters "と名を変え原料を変え、目の前に現れたのである。うわっ、このブルワリーの本気度がマックスであることを今さら窺い知るわたしであった。気づくの遅いな。ぼさ〜っとしとんな、どんならんな。

 ランチピザのセットを注文し、そのピザはしらすとれんこんのものであったのだが、れんこんといえば、七色そよ風さんを思い出すのである。秋は収穫の時期できっとお忙しいことと思います。


 さて、パラダイスに居るわたしは。
 大きなピザ一枚、レモンが添えられていてそれを絞っていただくのであるが、しらすの塩気、薄くスライスされたれんこんの食感、とてもおいしかった。チーズもよい風味である。そして大きめのピザ一枚で、おなかがぽんぽんであった。画像は無い。ピザが大きすぎてレンズに収まらなかったからである、ということにしておく。致し方ないことである。

 おいしいものこそ、現地現物で、目で、鼻で、直接手にとって、味わって楽しみたいのだ。目で見て「おいしそう」。それはわかる。その通りである。しかしね、おいしいものには視覚以外の要素がたくさんあるとわたしは思うのです。それ特有のてざわり、歯触り、温度、香り、焼けるときの音、ちぎるときの音、誰かと訪れれば自ずと会話も弾む…、というように、五感が刺激され、目の前のおいしいものの魅力が増幅する仕掛けがたくさんあって、それが現地現物でものごとを確かめたい理由なのです。

 つまりわたしは、魅力あるものは自分で直接確かめないと気がすまないのであるよ(書籍だって理由はおなじである)。それはマインドだけはツーリングライダーであるわたしのさがでもあって、ちょっとしたところならヒョイと行くのである。世の中にはちょっとしたところであっても、ヒョイと行けないところが多くて困るのだけれども。

 そういえば、文章を書きながら中島みゆきの曲に「パラダイス・カフェ」というのがあったのを思い出した。


今日は、少し前にパラダイスを訪れた話であった。

おしまい。



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