短編小説 糞餓鬼 最終回 狂乱社会編
萬田氏が夢で出会った糞餓鬼の活躍で、社会に蔓延していた不条理のいくつかは解決された。
このような状況の中、萬田氏は今日も図書館で昼寝をしているのだが、今日は違った、昼寝なのに糞餓鬼が現れたのだ。
糞餓鬼は痩せていた。
そして、切実に、今にも泣きそうに、ウーウーウーと唸った。
その唸り声を萬田氏は、自分なりに訳した。
世の中の理不尽を退治するために、やって来たのに、なぜ批判されるんだ。
萬田氏は、糞餓鬼の心中をはかりながら音を介さない話し方で話を始めた。
糞餓鬼よ、世の中の全員が賛成する事など有りえない、今日本に1億2000万人の人がいる、人それぞれみんな違う、1億2000万通りの考え、生活がある、世界でなら80億人の考え生活がある。
賛成されたり批判されたりで当然だ。
くよくよする必要はない。
世の中1億2000万の身勝手があっても、1億2000万の納得する真実、正義など無いのだ。
だから気にすることは無い。
私は糞餓鬼、あんたと会うまで、理不尽に立ち向かう事は無かった。
しかしあんたと出会って、初めて理不尽に立ち向かう勇気を見た。
糞餓鬼に勇気をもらった、ありがとう。
ここまで来たんだ、糞餓鬼よ、二人で少しでも理不尽を少なくする生き方をして行こう。
と、一気に音のしない言葉で話しかけた。
しかし糞餓鬼はまだ俯いていた。
恐らく便を投げつけた実力行使について、
元首相の話した、力による現状変更は認めないと言う言葉を気にしているのだと思った。
萬田氏は続けて言った。
力によると言うのは、兵器、軍隊を差しているので、便ではないよ。
と言うと糞餓鬼は、ニカッと笑い、顔を上げた。
翌日、浴衣を来た都知事は、浅草の風鈴市で、恒例の柄杓で打ち水をして、夏に向けての省エネパフォーマンスをし各テレビ局が放送した。
その直後に銀座で大事件が発生した。
銀座四丁目の道路に、肥溜めを天秤棒で担いだ糞餓鬼が現れひしゃくで糞尿を、バラ撒いたのだ。テレビ局の現場レポーターが駆けつけて、各社テレビは実況中継で狂乱した。
この事件に、一番慌てたのは厚労省だった。硬便、普通便の投てき予防に重点を置いて策定した対策の下痢便対処政策は崩壊してしまった。つまり液状に成っていても、下痢便でも、ひしゃくで投げ捨てられるのである。
ここに来て、対策は便尿の囲い込み管理対策にシフトした。
対策として、ぽっとんトイレには、一名以上の警備員の貼り付けが義務化され、農家の肥溜めは、各農協単位で集団管理される事となり、臨時に近くのプールを接収して大規模肥溜めとして、24時間の警察管理もしくは、自衛隊の管理とすることが決まった。
また自動的に超党派の下痢便ピーピー議連は、解散となったが、K党の作った大便タベタベ議連は解散を見送った。
トイレ座り込みは、屎尿の不正使用を防止する観点からボランティアにより継続された。
萬田氏が世の中の喧騒を他所に、図書館で昼寝をしている時だった。
図書館の館内放送で、受付に呼び出された。
萬田です。すみません。つい、うとうとしてしまいました。
受付の男性は、怪訝な表情で、内閣府からお電話です。と言った。
電話の用件は、今月開かれるG7の会議にゲストとして是非、ウクライナ侵略戦争を終戦に導き。且つ、K国より拉致被害者全員を救出した世界平和の功績者の糞餓鬼さんを招聘したいとの事と、議長国のトップとして首相が、ご意見を伺いたいとのことだった。
翌日、糞餓鬼は通訳の萬田氏と共に官邸に赴き忌憚のない話に
首相は耳を傾けた。
一カ月後日本のしまむらで開かれたG7サミットは、初日に参加国首脳全員が水着になって、特設された肥溜めに入り和気あいあいで糞餓鬼の特別講演を聞いた。
最終日に以下の共同宣言が、採択された。
〇.世界平和のため参加各国は、糞まみれになって、LGBTを国情に合わせ継続審議する。
〇.世界平和のため、兵力の均衡化を図り核兵器の先制不使用を宣言した世界各国には核兵器を無償で供与する。
以上を、世界平和しまむら宣言とする。
おわり。
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