第二次予備校 春期講習(授業編2)

波乱含みの授業について

この日の現代文は午後1ではなく、午後2時限からです。午後1時限は、入れ替わりで古文と漢文です。実は、一番勉強が苦手なのは、この授業なので特に勉強していました。

私「係り結びの法則は、ぞ、なむ、や、か、こそ・・・」

M「うん?る、らる、あれなんだっけ。」

あちこちで苦悩の声が聞こえてきました。カ行変格活用、ラ行変格活用など色々と呪文のように皆はつぶやいています。名物女性講師Nさんは、2日目にして鬼の厳しさを出してきました。角刈りのD君に対して怒りをさらけだしたのです。

N「貴方、2日目なのに宿題してないじゃない。やる気無いなら出てく?」

D「すいません。英語で手一杯でして。明日やります!」

ヘラヘラしながら明るく伝えたつもりが、ふざけたように受け止められてしまいました。

M君も2日目同様に英語は寝坊して欠席。しかも3日目の古文の授業は途中からやってきました。

M「あ、すいません。徹夜してまして。今日から本気出します!」

声だけは大きいので、やる気は見えそうですが、N先生には通用しなそうでした。

N「今日からねぇ。20分遅刻してますよ。貴方も出ていく?うん?」

(この先生の授業だけは、背筋がピンとなるなぁ。。)

Y「ねぇ、この先生怖くない?前の所のT先生あんな怖くなかったじゃん。」

授業中、後ろで話しかけてくるYでした。確かに僕らを繋げてくれたT先生は、とても優しい人で突き放すタイプではなかったです。N先生は、どちらかというと自分についてこれるかを常にチェックしているようでした。そこで、突き放すことによって相性の良し悪しを抱かされる様子です。

N「智聖君、平家物語のココ読んでみてください。」

私「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす…」

テキストには、フリガナもあるので読みやすいなと思った瞬間。先生の顔は目が笑っていない怖い笑顔でした。

N「じゃあ、最後の理とあらはすの因果関係教えて。」

(え、なんだよそれ。知らねーよ笑)

少し苦悩したところ、頭を働かせてなんとか言い切りました。横を見ると、ガングロギャルのTが応援しているかのように、目で合図をしてくれます。Yもシャーペンで後ろからツンツンしてきました。

私「盛者必衰の意味を理に掛けて、表現しているのではないでしょうか。」

N「あー、半分正解かな。いいですか、ここ冒頭部分なんですけど」

「これから学ぶ源氏物語もそうですが、簡単な所でも入試問題として出してきます。」

先生は、そのまま模範解答を書いていきました。

『盛んな者もそのまま衰えるという、この世の道理を表している。』

「さて、理はことわりですが、原理、道理という言葉もありますよね。もし、選択問題でこういった出題されたらどうしますか?」

1,盛んな者がそのまま衰えるという、この世の道理を示している。
2,盛んな者がそのまま衰えるという、予測、恐れの感情を表している。
3,悪い事をした人が駄目になって、良い事をした人が盛んになっていく原理原則。

一見、読むと似たような単語と流れがあるので違いがわかりません。正解は当然1ですが、2~3はなぜバツになるかを教えてくれました。

「最後の゛あらはす゛を見てください。すがありますね。」

「他動詞のあらはすは、サ行4段活用で言うと、2番目、3番目のす。つまり連体形か終止形を意識しましょう。」

「文章の終わりにあることによって、゛あらはす゛を示している。として解釈するんです。」

つまりは、終止形にしていくことによって、問題文を帰結することが出来る。となれば、2の予測と感情を表すは似て非なるものだが、間違えの正答率として上がるわけです。3は、全く古文を勉強していない人になる答えです。悪い人の話題ではありませんし、原理原則は、あくまでもルール。道理はプロセスなので違いますよね。

N「ただ、当てずっぽうでやってる生徒さん。ホント多いんです。」

「智聖くん、貴方は発展クラスだからO先生の授業受けてるでしょ?」

「だからちょっと意地悪な質問してみたの。けど、受けてるだけあっていい回答だわ。」

有名な現代文の先生は、論理的に文章を説明する人なので、N先生の説明もよくわかります。

(なんか、俺だけ聞く質問違うんだよなぁ。)

例えばD君などには、基礎的な原作者の名前とか時代の名前とか聞く程度でした。

ガングロギャルのTにおいては、面白い問いかけも。

「ねぇ、貴方お化粧とか好きでしょう。源氏物語の時代みたいな眉毛知ってる?」

そう言うと、磨呂のような面白い眉を書き出したりして当時の流行など教えてくれました。例えば美大やデザインの学校では、教授などこうゆうところから出題する話もあるとか。

常に1つの視点ではなく、文化、時代背景、因果関係など細かく考えさせる指導方法。まさに現代文のN先生と同じです。

N「本来は、発展クラスで教える内容もあるんだけど、いずれはクラス分けで上る人もいるわけ。」

「潜在能力を高める授業を心掛けることで、本番に勝てる力が出来るのよ。」

(納得だなぁ。これは、小論文にも通ずる内容だ。)

最終日ですが、とても熱量のある内容でした。

小論文の基本

最終日の現代文は、4月から開講する小論文の体験授業がありました。これは、現代文を履修している生徒のみ行われる特別講座です。基本的には、推薦入試用。しかし早慶クラスや他方の一部の大学においては、受験科目として必要だそうです。

講師は、現代文発展クラスのO先生。理事長もたまに顔を出しに来るようです。先日書いたわかりやすくビジュアル化した板書きをモチーフにしています。

O「まず、皆さんは学校の先生から起承転結のルールから学ぶかと思います。」

「起承転結は、確かに大事なことですが、私の現代文にいる生徒は、違和感を感じませんか。」

「起きる。承る。転がる。結ぶ。こういった日本語が出てきますね。では、聞いていきますよ。」

先生は、ささっと書き始めました。名簿を見ながら質問する様子。出席番号で決める様子でした。

O「では、1番のAさん、それぞれ出てきた言葉で他に置き換れる言葉をイメージしてみて下さい。」

Aさんは、同じ発展クラスにいる真面目そうな女の子です。育ちが良さそうで知的な子でした。

A「起こる。承認する。転校する。結ばれる。です。」

先生は、満面の笑みで答えを聞いています。

O「はい、注目です。全部るが付いていますね!」

「では、5番の智聖さん。これ文法で言うと何形でしょうか。」

「名詞なのか動詞なのか、はては形容詞なのか。教えてください。」

(予想外の質問に驚いた私でした。)

私(起こる、承認する、転がるは、動詞になります。)

(結ばれるは、助動詞ですかね?)

先生は、神妙な顔で答えを聞いています。

O「起きると起こるでは、コレ意味違いますよね。」

それぞれの文字に線を引いています。

O「はい。今智聖さんが答えた言葉を皆さんよく見てみましょう。」

「起きるは、自分から。起こるは、何かを予測する雰囲気ですけど、他動的なもの。」

「つまりは、動作という所で、自発的か他動的か、さらには、今か未来か過去なのか。」

「時系列と人間のする動作から見えてくる場面など変わりますよね。」

先生は、何を言いたいかというと論文のコツとして通常は起承転結の流れを学校では教えていきます。その上で、どのように理論的に考えるかが鍵であると伝えています。

ただ、これはあくまでも初学者向けの話であって、日々見ている文語、単語、動詞、名詞を含めながら起承転結に絡めて行く必要性が大切さを説いているのが先生のご意見でした。

O「ある論文を読みますと、筆者の意見が賛同しているのか、反対しているのか見分けがつかないモノもあります。」

「現代文で言う事実の部分ですね。ココをまず重要視すること。」

「冒頭部分が、百科事典に書いてあるテンプレ文であれば、ファクトの部分です。」

「こういった論文では、最後に結ぶためには、筆者の予測と他の引用している所と対比をしてから書いています。」

O先生は、たくさんの解説しながら細かく論じていました。特に結ぶ部分である終わりのところです。承と転にするにはこうしたスタートの法則を大切にしていると伝えています。なるほどな。と思いながらノートに写していきます。

実践問題

O先生「では、この文章を読んでみて要約する事の練習して下さい。」

「古代より地球は、青い星と言われています。青は、淡い色、蒼い色とも言えます。それは、各大陸の周囲に海が存在しています。海は、大陸を囲んでいることでそれぞれの領土などを主張するための線引きになります。」

「しかしながら、青く透き通る色とは反対に何故線引が必要なのでしょうか。何故主張が出てくるのでしょうか。それは、どこの国であっても領海を守らなくてはいけません。」

「特に領海は、一次産業の防護から不法侵入を防ぐため幅広い抑止力を求められます。接続水域はさらにそれが広がります。」

「例えば、日本では日本海、太平洋、オホーツク海が大きな海洋地域となっています。太平洋は、アメリカ側。日本海は、アメリカ側ではなくアジア近海。そして、北方領土を見渡すと、ロシア連邦に。」

「これらの海岸沿いでは、バケーションで使われる海水浴、サーフィンなどのスポーツが有名です。第一次産業では漁業が日本では盛んの業種です。但し、どこの海域であっても『排他的経済水域』というのが存在します。」

「所謂『排他的経済水域』とは、漁業、天然資源、それを開発するための調査をするためのもの。とは言え他国の船なども、近年無国籍を装う偽装船に扮して出没しています。」

「このように、『綺麗な色』及び『青い色』としてイメージされている近海は、大変厳しい対象として見なされる『領海の主張』や我々の楽しみである『余暇の一部、食べていくための産業』が存在するのです。」etc・・・・。

(なるほど。青と海がテーマにはなっているが、国と国の主張や線引、そして利益の部分まで細かく書いてあるんだな。)

(起点としては、地球を第三者目線で言えば、青い星。何故、青いのか?という所は気付きやすいテーマ。そこを海としてフォーカスしている。読みやすいな。)

O先生は、こうした海と青をテーマにした自作のコラムなどを作ってきており、生徒の読解力を鍛えるために要約させる練習を今後もしていく様子でした。

最後に書いた文章を提出してこの日は終わりました。


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