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異邦人 étranger

あれは昔々、とおいむかし。
まだ賞も何も貰ったことはないけど志だけあって、いつかはどこかに掲載したいと本気で願って精進していた、無位無官な1990年代にあった夢酔のおはなし。
ある年の、夢酔は京都にいた。貧乏暇なしでも何とかしたくて、夫婦で行ったのさ京都まで……電車賃浮かすためハンドル握って……!!
新幹線に乗って「そうだ京都行こう」なんて云ってられるほど裕福じゃなかったんです (´;ω;`)ウゥゥ

失礼、取り乱しました。。

車で行けば京都の名水を積んで、美味しく曳き立て珈琲とか、出汁の利いた煮物になるとか、

とにかく身体に良さそうな気がする

ということで、空っぽのペットボトルなどを搭載していったわけだ。

でも、昼間はできるだけ観て回りたいのですよ
学生やら何やら、当時は外国人も少なかったけど、それでも混んでいた
昼間に水汲み専念するのは不毛でした。

で。

夜、自由に出入りの出来た名水を求めてドライブだ!

梨の木神社とか、よかった。
そして、24時間誰かしらが必ず参詣散歩息抜き酔い潰れ等、とにかく人がいたのが、八坂神社の境内でした。

不夜城と呼べるのは八坂さんだけおす

あれは午前3時ころでしょうか。
真夜中でも八坂さんの境内は蝉時雨でした。
水を汲んでいたら、声を掛けられたんです。明らかにホームレスのような方に。話をしているうちに我が生活圏8キロ圏内で、ちょいむかしに就労していた方と分かりました。普通にサラリーマンされていたそうです。
「で、どうして京都へ?」
直球ストレートでズバリと切り込む。
「京都はね、人が住んでる土地なんだ。今までいた場所は、人の暮らせる場所じゃない。京都に来て、初めて人の住んでいる場所に辿り着けた気がしたんだよ」
御免なさい。おっしゃる意味が分かりませんが、それでも久しぶりに誰かと話が出来たのでしょうか。話は止まない。弾んでいる訳ではありませんが、傍目にはそう映るのかもしれない……。
20分くらいして、やっと解放されてから水を汲む。もう、どこかで、新しい朝の雰囲気が漂い始める微妙な時間です。

夜が、朝に溶け込んでいきます

今でも、ときどき思うのです。

あの人は生きていた人だったのでしょうか。

もう、顔さえ思い出せません。でも、不思議と嫌な気にならんかったのです。
普通、恐いですけどね、ホームレスから声掛けられりゃ…… Σ(・□・;)/

そんな夏の京都の出来事が、今でも時々思い出されます。

このお店に最後に寄ったのは2014年。連絡つかんけど、閉めてしまったのだろうか。

いつか。
そうだ京都行こう。
ただし今度は新幹線で酒飲んでいきたいっす。。。