とある民宿の男女共用風呂でのハプニング ひとり旅の思い出 1

僕は大学時代、ひとり旅をしていた。
大きなリュックを背負って歩いて旅する貧乏旅だったが、いろんな思い出がある。
僕がひとり旅を始めたのは大学1年生だった1980年のこと。
僕は北海道をスタートして南に下って行った。
このひとり旅は、就職してからも続いた。
広島の旅をした後、萩津和野の旅に出かけようと思っていたが、奥さんと出逢い結婚することになったので、そこでストップしたままになっている。
何時かこの続きをしたいと思う。
1980年代は今思えば、大らかな時代だったと思う。

その頃のことを少し書いて行きたいと思います。

差し障りがあってはいけないので具体的な地名等は書きません。
北関東の観光地にあった、とある民宿でのハプニングです。

その日の夕方、僕は宿泊先の民宿に到着した。
ところが、こんばんは〜と何回言っても誰も出て来ない。何回も大きな声で言って漸く民宿を経営していたおじさんが頭を掻きながら、面倒くさいなあ〜みたいな感じで出て来た。
チェクインを済ませると、そのおじさんは、
「夕飯は6時半から食堂で、朝飯は朝の6時半から食堂で。風呂は男女共用。何の札も掛かっていなかったら入っていい。黒の札が掛かっていたら入っていい、男が入っているということだから。ピンクの札が掛かっている時は女が入っているから入れない
自分が入る時に札が掛かっていなかったら、黒の札を掛けて入ること。風呂から出る時、他に誰もいなかったら札を外しておくこと、いいね。」

僕は夕食前に風呂に入りたかった。
風呂の入口を見ると札が掛かっていなかった。
僕は急いでタオルや石鹸を持って風呂場に行き、黒の札を掛けて入った。
3人くらいしか入れない風呂だったが、木の浴槽でいい香りがした。
僕はゆっくり風呂に浸かった後、3つあるシャワーのところで頭を洗い始めた。
すると、誰かが入って来て僕の隣りに座りシャワーを浴び始めた。
僕はシャワーで頭の石鹸を流し、ふと横を見た。

隣りの人も丁度僕の方を見た。
そして、お互いにビックリして固まってしまった。
僕の隣りにいたのは20代の女の人だったからだ。

その女の人は口を開けて茫然としていた。
僕も茫然としていた。
そして、僕は
「黒の札を入口に掛けておいたんですが・・」
「黒の札って?」
僕はおじさんが教えてくれたことを話した。
すると、
「私、そんなこと聞いてない。ここがお風呂だって教えてもらっただけ・・」
「でも、黒い札を掛けましたから。」
「私は聞いてないって・・」
僕がどうしようと思っていると、その女の人は
「これもう仕方ないですね。このまま、ふたりでお風呂に入っていましょう。」
「えっ?・・」
「私、高校の音楽の教師、男の子の裸はプールで見慣れているから。気にしないで。」
「僕は見慣れてないんですけど・・」

その人は、僕の言ったことを気にもせず、シャンプーで髪を洗い始めた。
これ経験してみないと分からないと思うが、
ここまであからさまにお互いに丸裸でいると、逆に変な気は起きないものだ。
僕が身体を洗い湯船に浸かると、その女の人は身体を洗いながら、
高校で音楽の教師をしていて合唱部の顧問もしている。
来月この町で開かれる合唱コンクールの会場の下見に来た。同じ高校の2歳歳上の体育教師の彼がいて
秋に結婚する。
と教えてくれた。

その体育教師がこのことを知ったら、僕はきっと、
ぶん殴られるだろうと思った。

僕が湯船からあがり出て行こうとすると、
その女の人は
「ピンクの札を掛けておいて。誰か入って来たら困るから。」
と言った。
僕は分かりましたと答えて、服を来て風呂場から出て、入口にピンクの札を掛けた。

僕の後輩が警察官の仕事をしていたが、夜、車のなかでエッチしているカップルを取り締まるのも彼の仕事だった。何とか風営法違反になるそうだ。
見つけて懐中電灯で照らすと、
男は慌てて大事な所を隠すが、
女の人は開き直るのか観念してしまうのか
何も隠そうとせず、そのままでいるそうだ。
彼は僕に
「鈴原さん、男より女の方が腹が座ってるっすよ。」
と言った。
確かにそうかもしれないと思う。

今の時代では、こんなわけにはいかないと思う。
1980年代の懐かしい思い出だ。





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