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短編小説の本棚

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日常や現代ファンタジーの小説が多く含まれています。 たまに過酷なファンタジーもありますが、楽観的な作者の書くものです。 最後はきれいに纏まって読後は良いような気がします、たぶんで…
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#告白

【短編小説】告白されて困ったら両想い

【短編小説】告白されて困ったら両想い

 放課後を迎えると予想した通り、前の方の席にいた奏が長い髪を弾ませてパタパタと走り出す。わたしの机の横で立ち止まると、あからさまなモジモジを始めた。ゆったりとした白いワンピースを着ていてもよくわかる。ふくよかな胸の揺れに男子達は、おー、という低い声を上げた。
 わたしは心の中で遠慮ない溜息を吐いた。奏を無視して机に入れていた教科書とノートをカバンに収めていく。
 その時、奏は小声で言った。
「いじ

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結婚を前提に付き合ってください

結婚を前提に付き合ってください

 六月に入った。わたしは早々とYシャツを半袖に変えた。上から紺色のブレザーを着るので見た目は以前と変わらない。
 通学路を歩いている本人にだけ、違いがわかる。ほんの少し、涼しさの恩恵を受けた。
 今はどうでもいい。考えなければいけない問題は真横にいる。ちらりと目をやる。紺色のブレザーを着た木島 貴志が背筋を伸ばして歩いている。
 外見は悪くない。ナチュラルに流した髪が好ましい。眉は弄っていないよう

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