見出し画像

隔離生活日記@モントットーネ④ 45日目?

(上の写真は僕の大好きなシビッリーニ山地の夜空。あー泊まりに行きたい)

忘れないうちに、おととい15日の買い物リポートを書いておこう。今のところ村で営業が認められている店は生活に最低限欠かせない次の4軒だけ。
・パン屋さん
・新聞・煙草・園芸用品店
・精肉店
・スーパー

画像1

↑こちらはパン屋さん(PANIFICIO)。店名はまだ無ひ。いや、あると思うが知らない。誰も知らないんじゃないだろうか。この日は行かなかった。

先日の記事でも書いたように小さな村なので、規制で休業を余儀なくされているお店は少ない。こちらもざっと上げてみると
・バール&ピザ屋 La Rosita
・バール&レストラン La Brocca
・床屋さん
・美容院
・婦人服屋
・金曜だけ開いている謎のパブ
くらいかな。少ないけれども、バールが2軒ともやっていないというのはやはり痛い。イタリア人(特に男性)にとっては、多分、わが家の次の次くらいに大切な憩いの場だからだ。

バールはBARと書く。でも日本のバーとは違って、子どもからおじいさんまで楽しめる、お酒も飲めるカフェのこと。そう言えば、今回のイタリアにおけるCOVID-19の最初の集団感染にしても、チャンピオンズリーグだったか、北部のバールでたくさんのお客さんがみんなでテレビ観戦していたら、その中に感染者がひとりいて広まってしまった、という報道もあった。好きな人たちは盛り上がって、ハグしたり、叫んだり、喧嘩したり、あれは確かに超3密空間だ。

画像2

↑こちらが僕が毎朝、ローカル紙を読みながら朝食を楽しんでいたお店バール・ラ・ブロッカ(Bar La Brocca)——の閉まっている写真。僕の定番メニューは、「コーヒー+クロワッサンまたはシュークリーム等」で2ユーロか、「カプチーノ+ミニクロワッサン」で1.70ユーロです。

閉じたシャッターの写真をいちおう撮って、マスターのマウリツィオはどうしているかな、とぼんやりしていたら、二階にあるレストランLa Broccaのテラスから当の本人に水をかけられそうになりました。おちゃめな爺さんです。

画像3

窓の木枠のペンキを塗り替えていたそう。元気そうで何より。普段から彼はもう引退する、もううんざりだ、とよく愚痴をこぼしていたから、こうも長いこと閉めっぱなしじゃ、余計に老け込んで、いよいよ本当に閉店じゃないかと少し心配していたので。まだまだやる気だ。BRAVO、マウリツィオ!

ちなみにイタリア人の憩いの場の1位がわが家、3位がバールとしたら、2位はどこでしょう? 僕はマンマ(お母さん)の暮らす実家ではなかろうかと思う(町の中心にある広場、という答えもありですね)。ただ今の外出禁止令の下では、実家の両親にすら、特別な条件がない限り、会いにいってはいけないことになっている。もちろん感染の拡大を防ぐためだ。

たとえ実家が同じ市町村にあっても訪問は許されず、極端な話、家が隣同士でも、原則的には行っちゃ駄目。本当、みんなどうしているのだろう。親は要介護ということにして、実は会いにいってしまっている家庭も結構あるのではないだろうか。

決まりを守って実家には行かなかったとしても、うちの村にスーパーは1軒しかないから、買い物に行けば顔を合わせることもままあるだろう。もしかしたら、買い物の時間をあらかじめ決めておいて会ったりしているのかな。いちおうはソーシャルディスタンスを保って、挨拶のキスもハグも我慢するかもしれないけれど、せめておしゃべりくらいは楽しませろ、と。

本音を言えば、今回の外出禁止令にはどこまで本当に意味があるのかよくわからなくなる部分もある。特に田舎に住む人間からすると、都会を基準に作られたルールが全国に一律に適用されたひずみを往々にして感じる。普段だって表で誰にも会わないこともままある過疎の村なのに、どうして家にこもっていなければならないのだ、と。

ワガママなのは重々承知でも、こうした愚痴が出てしまうのは、やはり、この自分も、今の生活がぼちぼち息苦しくなってきたということなのだろう。

画像4

↑僕のよく登るシビッリーニ山地はうちの村からだとこんな感じに見えます。2000m前後の山々。前日に雨が降ったせいかちょっと霞んでる。この春は、残雪が消えてしまう前にあの高みへ帰ることはやっぱりできないのだろうな。

おっと、肝心のスーパーにたどり着く前にまたしても紙面が尽きてしまった。狭い村なのに。なんだかんだと話が膨らんでしまうものですね。ではまた次回。

**

4/24発刊予定の『コロナの日々の僕ら』はこちらのリンクからお買い求めいただきますと、貧しい翻訳者の懐にエスプレッソコーヒーにして1/2〜1杯分相当のお小遣いが転がりこむようです(まだ未経験ですが)。

同じパオロ・ジョルダーノの、やはり僕が訳しましたベストセラー小説『素数たちの孤独』はこちらです。この作品についてはまた何か書いてみようかな。イタリア語で読んで、文体に惹かれたのは初めての体験だったかも。

ここ3年ばかりはこちらの大作と取り組んできました。『ナポリの物語』4部作の第1巻『リラとわたし』です。第4巻『失われた女の子』は、2020年度日本翻訳大賞の最終選考に残っています。頑張れ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?