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ハードな旅してたらガッツリ風邪ひいた (イギリス縦断の旅-21)

こんにちは。ゲンキです。
イギリス旅行記第21回は、旅で無理しすぎて体調ぶっ壊し編をお届けします。


~旅の概要~

普段から鉄道に乗って旅をしている僕は、鉄道が生まれた国であるイギリスを巡ることにした。本土最北端の駅「サーソー(Thurso)」から本土最南端の駅「ペンザンス(Penzance)」を目指す、イギリス縦断の鉄道旅。ここまでたくさんの人や風景に出会ってきたが、旅はまだまだ終わらない。今日も何かが僕を待っている。

(2023年3月実施)


19:17 Plymouth

最南端の終着駅・ペンザンスから2時間、イギリス南西部最大の都市プリマスに到着。今日はここに泊まり、明日は少し寄り道をしながらロンドンへ向かう。

今日は朝から晩まで雨が降っていて、しかも風が強くて凍えるような寒い一日だった。そんな日に屋外を歩き回ったからか、どうもいつもより体力を消耗したような感じがする。重い荷物を背負って雨で濡れたタイルの道を歩く。

今夜の宿は「プリマス・バックパッカーズ」。名前の通りバックパッカー向けの安宿で、一部屋最大8人ぐらいの相部屋。一泊3000円ぐらい。

チェックインを済ませ、部屋に荷物を置いて、すぐ近くのスーパーに夜ご飯を買いに行った。他にもお菓子や飲み物を購入。

Garlic Chicken Alfredo (冷凍パスタ)

欧米ならではの濃いめの味付けが美味しいパスタ。しかしその一方、この強い旨みが胃にのしかかるような、ちょっと食べるのがしんどい感覚も覚えた。料理ではなく、自分の体調に問題がある。食欲がいつもより弱い。なんか妙な寒気もする。
あんまり旅先で言いたくない言葉だけど、「風邪っぽいな」と思った。

ご飯を食べた後はすぐに寝る支度をして、なるべく早めにベッドに入った。







翌朝。
めっっっっっちゃくちゃしんどい。

こんな顔してたと思う

体がだるく、起き上がる気力も湧かない。寝ているだけで精一杯という感じ。平衡感覚がゆらゆらしている。体も熱っぽいし、体温計は持っていないけど体感37度以上の熱がありそうだった。まさかここに来て体調崩すなんて……。



いやちょっと待て。
最後に生野菜食べたのいつだ?

この1週間、肉とかパンとかポテトはよく食べていたけど、ビタミンを含むような野菜類は滅多に食べてなかったような気がする。ただでさえ外食は栄養偏りがちなのに、食文化が違うイギリスでそのことを完全に忘れていた。

最後に食べた「サラダ」(6日前)

それだけでなく、「イギリス縦断」という行程がそもそもハードだった。毎日ひたすら長距離移動を繰り返し、たったの1週間ちょいでロンドン→最北端→ロンドン→最南端というアホみたいな移動をこなしたのだ。いくらなんでも体力が削られるわけだ。

そうして免疫が弱っていた状態で、雨風に凍えながら歩き回ったことがトリガーになったのだろう。もっとこまめに野菜を食べていれば、もう少し無理のない行程にしておけば……と後悔が溢れるが、もうどうしようもない。しばらく横になって休み、少しだけ楽になった後で朝食と荷造り、チェックアウトを済ませて宿を出た。
あんまり動かない方がいいんだろうけど、今日は夜までに300km先のロンドンまで行かなければならない。駅までは歩ける距離だが、無理しないようバスに乗って移動した。

今がこの旅で一番きつい


プリマス駅

時刻は9時半過ぎ。体調はいくらかマシになってきた。
これなら少しぐらい途中で寄り道して観光できそうな気がする。とりあえずロンドン方面へ向けて移動を開始することにした。

ドーリッシュ(Dawlish)という町のあたりでは、車窓の右側に広々とした海が見える。このあたりの区間はこうして海のすぐ近くを走る場所が多く、このような美しい車窓が有名。線路のすぐ隣を人が歩けるところも多く、ちょっとした観光スポットにもなっている。このあたりにも降りてみようかと思っていたが、他にも行きたい場所があったので今回はスルー。

おばあちゃん危なくない?


10:50 Exeter St Davids Station

プリマスから1時間、エクセターという街に到着。乗ってきた列車はここが終点なので、一旦降りて乗り継ぎを確認しに行く。

装飾の凝った美しい駅舎

今日はブリストルという街へ行ってみたいと思う。ネットで調べた情報によると、この駅から11時頃にブリストル行きの列車が出ているらしい。乗り場を確認しようと電光掲示板を眺めたところ、おかしいことに気がついた。

ブリストル行きの列車情報が、どこにも表示されていない。


すぐに運行状況のモニターを発見したのだが、そこには衝撃の内容が書かれていた。

「3月20日から23日まで、トーントン経由の列車は全便運休」。
トーントンは、この駅からブリストル方面へ向かって伸びる路線上にある駅だ。
そして今日は3月21日

つまり、今日はブリストル行きの列車はやってこない。

予定崩壊。代行バスはあるらしいが、今の体調でバスに揺られたら間違いなく吐く。正直そこまでしてブリストルに行きたいわけでもない。かといって今すぐロンドンに向かうのはもったいない気もする。でもあんまり動き回りたくない。うーんどうしよう……。


12:00 Dawlish

結局、さっき通り過ぎたドーリッシュの町に戻ってきた。
もともと立ち寄りたかった場所だし、海沿いでのんびりしながら休めば風邪でもそれなりに良い過ごし方ができそうだ。

線路と海が近いので、波の被害を受けることが多々あるらしい

ドーリッシュの町には川が流れていて、その川沿いに公園や商店街が広がっている。こじんまりとしていて暮らしやすそうな田舎町だ。このあたりに生息している「ブラックスワン」が名物らしい。


とか言ってたら目の前に普通にいた。
こういう鳥って珍しくて見れたらラッキー的なやつじゃないのか。めっちゃ当たり前におるやん。しかも人に慣れているのか全然警戒心を感じない。

えっっっ雛連れてる!!かわいい!!!!!

ふわっふわ……


線路をくぐると、海沿いの遊歩道とビーチがあった。地元のお年寄りたちが散歩や雑談を楽しんでいる。昨日の雨模様とは違い、今日は太陽の光が暖かい。

とりあえず、昼のうちはここでゆっくり体を休めようと思う。ベンチに腰掛け、まずはさっきスーパーで買った昼ごはんを食べることにした。

すぐ後ろを列車が通過していく
とりあえず健康に良さそうなやつ。サラダとSUSHI

なんとなくイギリスの「SUSHI」を買ってみたが、なんか「寿司」とは色々別物だった。
まず真ん中の赤いやつ。赤身かと思ったらパプリカだった。米にパプリカ??
そして下のやつ。ゴマがくっついていて、中身はチーズと魚。魚にチーズ??
かろうじてサーモンは普通にサーモン巻きだった。

なんだろう……寿司っちゃ寿司なんだが、なんかちょっと違う。普通に生魚を米と海苔で巻けばいいのに、なんでパプリカとかチーズとか入れちゃうんだろう。あとアメリカの寿司とかもそうだけど、ゴマ散らすのって日本っぽさの表現なんだろうか。お互いに異国の食文化を理解するのって難しいなあと思った。


ご飯を食べた後、風邪薬を買いに薬局へ。Bootsはイギリスのどこにでもあるチェーン店。ネットで調べながら、効きそうなやつを探して購入した。

イギリスの市販薬は日本より強力らしいから、多少楽にはなるだろう。この錠剤は昼に飲む用の通常タイプと、寝る前に飲む用のカフェイン少なめタイプのセット。色がドギツくて不安だが、有名なブランドらしいからたぶん大丈夫。


薬を飲んで、ビーチの岸壁によっかかった。波の音に癒されつつ、太陽のおかげで暖を取れる。まだ体が熱っぽいので少し昼寝をした。体調に反して、気分は穏やかだった。

今度から長旅をするときは適度に休息日を入れるようにしよう……。



ブラックスワン見守りおじさん

2時間ほど海辺で休み、時刻は15時過ぎ。そろそろドーリッシュを離れ、ロンドンへ向かうことにした。何しろロンドンはまだ250km以上先だ。

エクセター行きの列車に乗り込む


15:50 Exeter St Davids Station

再びエクセターに戻ってきた。勘だけどたぶんここからロンドン行きの列車が出ているはず。

電光掲示板を見ると、ちょうど30分後ぐらいにロンドン・ウォータールー駅行きの列車がある。これに乗って行けば大丈夫だ。

ホームで列車を待っていると、みるみるうちに人が増えてきた。みんなロンドンに行くのだろうか。けっこう混みそう。この体調で座れないのはしんどいから、確実に席が取れるようになるべく端の車両を狙っていく。

発車時刻が近づいてきた頃、ロンドン行きの列車がホームに入線。早めにドアの前に陣取ったおかげで、無事座席を確保することができた。


16:33 South Western Railway

あとは座っているだけでロンドンに着けるのだからありがたい。この列車はエクセターが始発駅だったが、既にほとんどの座席が埋まっている。若者が多く、向こうの席からは楽しそうな話し声が響いてくる。

リュックを漁っていたらチョコが出てきた。これいつ買ったんだっけ。
体調は割と良くなっていたので、とりあえずこれを食べた。

問題はこっちだ。昨日プリマスのスーパーで見つけて衝動買いしたやつ。欧米で売ってる魔改造激甘オレオ。僕はこういうめちゃくちゃ甘いチョコが好きなんだが、よりによって風邪なのに2個×6袋とかいうまあまあな量を買ってしまった。しかも明日がイギリス最終日。捨てるのはもったいないので食べるしかない。美味しいけどさすがにキツい。

途中の駅で大勢の乗客を降ろしては拾っていく

車窓をスケッチする気力もなく、視線はただ窓の向こうとスマホの画面を行き来していた。

僕は当時、出発の少し前にリリースされたヨルシカの「アルジャーノン」という曲が気になっていた。名前の通り、この歌は小説「アルジャーノンに花束を」にインスピレーションを受けて制作されている。しかし僕はその小説を読んだことがなかった。名前は聞いたことあるけどどんな物語なんだろう、そう気になってネットであらすじを調べてみた。へえ、主人公の手記という設定なのか、面白そうだなと最初は思っていた。
しかし読み進めていくうちに、物語のあまりに切ない結末とタイトルの意味に胸が重くなった。こんなの風邪の時に読むべきじゃなかった。感動と切なさと悲しみと体調不良が混ざって脳がごちゃごちゃになってしまった。いつか健康な時にこの本をちゃんと読もうと思った。

帰国後「アルジャーノンに花束を」を読んだ。とても心に響く本だった


日が暮れて、あたりは真っ暗。
時刻を見ると、いつの間にか19時を回っている。エクセターを出てから2時間半、まだロンドンには着かない。だんだんお腹が減ってきたが、今手元にある食べ物は地獄のように甘いオレオだけ。仕方ないからそれをかじった。

ロンドン近郊に入ったのか、駅の間隔が短くなってきた。列車はエンジンを震わせ、高速で次々と駅を通過していく。

時刻は20時を過ぎ、なおもロンドンに向けて爆走する。「ロンドン行きの列車に乗れた」という安心感で時刻表を見ていなかったから、まさか3時間以上かかるとは思っていなかった。いや、普通なら旅人の勘でわかるはずだが、風邪がその感覚も鈍らせていたようだ。

そしてついに、カーブの先に大きなターミナル駅が姿を現した。今まで通過したどの駅よりも大きい。列車は速度を落とし、ゆっくりとホームに入っていく。



20:21 London Waterloo Station

エクセターから約4時間、どうにか終点のロンドンに辿り着いた。

この旅でロンドンに「到着」するのはもう3回目になるが、何度見てもスケールの大きさと人の多さには圧倒される。特にこのウォータールー駅はロンドンのターミナル駅の中でもトップクラスに規模が大きく、コストコ10個分ぐらいの広さはあると思われた。

駅の入り口も立派

ここまで来れば、あとは今夜の宿に向かうだけだ。
久々の赤いロンドンバスに乗って、もう少しだけ移動する。

色んな街を訪れたから、この赤いバスには懐かしさすら感じる



バスに揺られてテムズ側の北側に渡り、大英博物館の近くのラッセル・スクエアで下車。ここから10分ほど歩いて、ついに今夜の宿に到着。我ながら風邪の状態でやるべきとは思えない超ハードな移動だった。自分で自分に呆れた。

スマート・ラッセル・スクエア・ホステル

チェックインして荷物を置き、近所のスーパーでサンドイッチだけ購入。マジ疲れた。さっさとシャワーに入って寝よう。

これまで僕は、若さと体力があるからこそできるような過酷な旅ばかりしてきた(前作・日本縦断シリーズ参照)。でもやっぱり無理がある。ひたすら動き続ける旅は、休憩も無しに慣れないマラソンをするようなものだ。ましてや海外ではそれにもっと気を遣うべきだった。

ただ一つ幸運だったのは、体調を崩したのが旅の終盤だったこと。とりあえずロンドンには戻れたし、もし明日体調が悪くてもヒースロー空港から帰りの飛行機に乗れれば問題ない。

そう、長かったイギリス縦断の旅もいよいよ明日が最終日だ。


つづく






【次回予告】

第22回はイギリス旅の最終日・ロンドン編をお届けします。


それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!


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