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小石を拾う

『すべてのひとに石が必要』

5月に京都と東京で開催された、ピーター・コールとデイジー・リーズのゲシュタルト・グループ療法のワークショップでは、グループの導入に「小石を拾って泉に投げ入れる」というイメージワークが紹介されました。

そのあと、個人セッションでもときどきこれを応用したイメージワークを使うことがあります。
外の課題や他者に意識が働いて、なかなか内面に気づきを向けることが難しい、
といったときにとてもいいヒントを与えてくれるワークです。

マインドフルネスへの導入にもなります。

(1)リラックスする
リラックスして座り、目を閉じて、呼吸に意識を向けます。
(2)風景をイメージする
森や草原、海岸など、リラックスできる場所をイメージしてください。想像の中で五感を使って、見えるもの、聞こえる音、香りや肌に触れる空気などを感じてみましょう。
(3)歩いて小石を探す
ゆっくりと足元に注意を払いながら歩きます。地面に散らばっている小石を探してください。色、形、大きさなど、さまざまな小石が目に入ります。なんだったら、膝をつけて、地面に顔を近づけて小石を探してみましょう。
(4)小石を拾う
気に入った小石、特に目を惹く小石を見つけたら、その小石を拾い上げます。
(5)小石を感じる
小石の触覚、冷たさ、滑らかさ、重さなど、手に伝わる感覚に注意を向けてください。
(4)小石と対話する
心の中で小石に話しかけます。自分の気持ちを伝えたり、小石がどこから来たのかを想像したりします。小石から伝わるエネルギーや、小石が持つ自然の力、古代の知恵に思いを馳せます。
(5)泉に小石を投げ入れる
小石を大事に持って帰ってもいいし、あるいは泉や池などを想像して、そこに願いや感謝を込めてぽちゃんと投げ入れてみてもいいでしょう。
(6)現実に戻る
ゆっくりと現実の自分の場所に戻ってきます。深呼吸をして目を開けます。
(7)振り返り
イメージワークで感じたことや気づいたことを振り返ります。

実際に、森や山で石を探してみてもいいかもしれません。

『すべてのひとに石が必要』という大好きな絵本があります(バート・ベイラー著)。

「友だちの石」を見つけるための10のルールが書かれた絵本です。

それは、こんなルールです。

1.できるなら山にいく。
2.石をさがしているあいだは誰とも話してはいけない。
3.頭が地球にふれるほどからだを低くかがめる。
4.大きすぎる石はえらばない。
5.小さすぎる石もえらばない。
6.さわって気持ちのいいかんぺきな石をえらぶ。
7.かんぺきな色をさがす(川の水にひたしてみるといい)。
8.どんな形の石でもいいが、ひとつだけでもすばらしく見えるものをえらぶ。
9.いつでも石のにおいをかぐ。
10.石をえらぶときには誰にも相談しない。

石のでこぼこやひび割れ、色合いをじっくり眺めているといろんな連想が浮かんできます。
よく見るとこの石は誰かに似ているぞと思うことも。
ぶつぶつと石と話をしていると、悩んでいたことがふと軽くなったり、何かに気づくこともあります。

何万年前の遺跡から、人の顔に似た石がたくさん発見されることがあるといいます。
きっとずいぶん昔から、「この石は死んだじいちゃんに似てるぞ」とか「あの娘の顔みたい」といったふうに人は石に誰かの面影を見てきたのだと思います。

石は、人々の記憶を刻み込むためにも用いられてきました。
もう終わってしまった、あるいは失われてしまったけれども、忘れてはいけないと感じられる出来事の記憶を保存するために、石碑が残されます。
お墓も石でできています。

ネイティブ・アメリカンの世界でも、石は記憶や知恵をもつ存在として捉えられてきました。
「石のひとたち(インヤン)」とあたかも人格(神格)をもっているかのように表現されます。

『ユング自伝』には、子ども時代のユングと石に関するエピソードが書かれています。
10歳の頃、ユングは筆箱の中に自分で刻んで作った人形を入れました。
そして川で拾ってきた石といっしょに、誰にも見つからないように屋根裏に隠しておいて、ときどきこっそりそこに行って人形と石を眺めていました。
自分がどうしてこういうことをしているのか、その意味ははっきり分からなかったけれども、ユング少年にとってその行為はとても大切なことでした。

Jung C.G.

ユングにとって、秘密の石は彼が自分自身を発見するための手助けをしてくれたのかもしれません。

親や家族でもなく、友だちでもない、けれども確かに自分のそばに確固として存在しているもの。
そんな石をユングは見つけて、筆箱に隠していたんじゃないでしょうか。
人間でも生き物でもないけれども、その石は、ユング少年にとっては大切な友だちだったのかもしれません。

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