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タカラジェンヌになりたかったあの頃

私の10代を語るうえで、なくてはならないものが「宝塚歌劇」。

上京して1年。先日、やっと東京宝塚劇場での観劇の夢が叶いました。
東宝はどの公演も倍率が高く、なかなかチケットが取れませんでしたが、たまたまツイッターを見ているときに貸切公演の申込受付を見つけて、すんなりと観劇の運びに。

かっこいい〜!大劇場と全然違う!

観劇したのは、月組『応天の門』『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』。
月城かなとさんがトップになってから初めての月組観劇でした。
劇場で観るのが久々で、どこでどれを買っても全く同じのプログラムの匂い、オケさんのチューニング、開演アナウンス、ドーランの香り・・・すべてが人生を捧げてヅカオタをしていた10代の頃を思い出し、ホロホロと涙が・・・。
最後に見たとき、まだ3番手だった彼女が0番で組子を引き連れ、最後に1番大きい羽根を背負って降りてくる姿に、古のオタクはまた大号泣。
初観劇時、初舞台生として口上をされていた風間柚乃さんが、知らぬ目にどっしりとした風格とオーラのある男役さんになられ、実質3番手的立ち位置にのし上がられているのを見て、「宝塚はひとときも目を離せないな、、、」と。
大好きで、崇拝している稲葉太地先生のショーが観られたのが、何よりの幸せでした。先生って本当にラテンや海がお好きですよね。
懐かしの星組『パッショネイト宝塚』で使用されていたお衣装を、月組子たちが着てる~~~!とこれまたうれしい演出でした。

お金はあるのでチケットをください

しばらくズブズブの(?)ヅカオタはしていなかったものの、「すみれの花咲く頃」を聴けば一瞬であの頃を思い出し、宝塚が今日の私のかなりの部分を作り上げているのだなと再認識しました。

そして、本日は宝塚音楽学校の合格発表。
毎年、春の風物詩といわんばかりにニュースで報道されていますよね。
私は、毎年この時期になると色々なことを思い出し、考えるのです。

私には何人か宝塚へ入団している知人や友人がいます。
ニュース番組で合格者としてインタビューを受ける友人。一緒にオタク話に花を咲かせたあの友人。彼女が “あっち側”の人になる ――
あのときの何とも言い難い感情はいまだに覚えています。
彼女は今、当時好きだったスターと一緒に舞台に立ち、注目の若手としてトップ路線まっしぐらです。

身長の低い私は、その時点で門前払いなのですが、受験資格のある年齢のオタクでしたから、もちろん一度は憧れました。

唯一無二の世界観を持つ劇団で、あの煌びやかな舞台に立ち、宝石のような衣装を身にまとい、多くの人に夢を与える。
それを実現できるのは、宝塚歌劇団以外のどこにもありません。

宝塚受験のドキュメンタリーは古いものからすべて観ましたし、関連書籍もすべて読みました。
そして知れば知るほど、容姿や実力以前の問題で、私にはどうも無理な道らしいということが分かり始めたのです。
親にさらっと交渉したこともありましたが、言うまでもなく却下。
受験資格のある最後の年、つまり高3のときには、悔しいとも切ないとも言えない、これまた何とも言い難い感情になったものです。

どんなに宝塚を好きになって、貢いだとしても、私がこの舞台に立って、“あっち側”の人になることは一生ないのだなと思うと、素晴らしい舞台も純粋に観られないときがありました。

この気持ちはどうしたら昇華できるだろう。

あのとき、真剣に自分の内面と向き合いました。
「タカラジェンヌ」という職業を抜いて、私がしたいことは何なのだろう、と。

「人に夢を与える」「人を幸せにする」「人の人生にいい影響を与える」

直接励ましの言葉をかけられたわけではないのに、エネルギーが漲ってきて、人生まで変えられてしまった。
同じ人間なのに、他人の人生をそんな風に良い方向に変えられてしまう人って、まるで現実世界の魔法使いだ。真の “インフルエンサー”だ。
煌びやかな衣装は着れずとも、この人生でそれだけは叶えてみたい。そんな人間になったときに、お客さんでいっぱいの客席は見れずとも、どんな世界が見えるのか知りたい。

自分の夢の根本はそこにあるのだと結論づけました。

宝塚は中3~高3の4年間しか受験することができず、約20倍の倍率の中から40人だけが入学を許されます。そして名前やセリフのある役をもらえる人はさらに一握りです。
現実離れした豪華絢爛な舞台と謎のベールに包まれた世界観だけが、宝塚歌劇という「夢の世界」をつくっているのではなく、入りたくても入れなかった多くの少女たちにとって永遠に「夢」であり続けるということも、宝塚を「夢の世界」たらしめる理由なのだと思います。

小さいときから宝塚に人生を捧げても受からない人もいれば、人に勧められ受けてみたら一発合格の人もいます。そういう世界です。
この世には、どんなにお金を積んでも、どんなに血を吐いて努力をしても、手に入らないものがあります。
美しきものは時に残酷さをはらんでいるのだと感じます。

あれから月日は流れ、今の私は「子どもにはバレエを習わせたい」だとか「最近は娘役さんも背が高い」だとか、その程度でライトに宝塚を観ることができます。
しかし、音楽学校の合格発表を見るといまだに思います。
「こんなに自分の “夢” に純粋に熱中できる環境やメンタルがうらやましいな」と。
その「うらやましい」は、今の私なら少しだけ解消してあげることができます。

私は今、自分の人生に対して誠実に向き合えているのだろうか。
傷つくことを恐れて初めから逃げていないだろうか。
何も犠牲にせずすべて中途半端にしていないだろうか。

タカラジェンヌになりたかったあの頃の私は、今も私の中で生き続けているようです。

私にも私の持てる力で「人に夢を与える」「人を幸せにする」方法があるのでしょう。

それが何かはまだはっきり分かっていないけれど、それを追究することから私は逃げてはいけない。

私は私の新しい道で夢を叶えていくからね。

合格されたみなさま、本当におめでとうございます。
初舞台での口上・ロケットを心から楽しみにしています!


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