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博士課程の研究室選びの落とし穴

こんばんは、マサキです。
本日は、研究室選びについて話そうと思います。研究室選びとなると、派手な研究成果があるとか、分野の第一人者の先生とか、そういう先生を探してしまいがちですが、私は良好な関係を築ける比較的若い先生を選ぶということが重要だと考えています。

イギリス大学院留学最大のデメリットは金銭的困窮なのですが、その次に挙げられるのが、指導教員が基本一人なので良好な関係を築けないと詰むということです。まさに同じことが以下のブログでも指摘されています。

研究業績が優れている事と、優れた教師である事は別です。むしろ、研究業績が優れている所は、学生を馬車馬のように働かせる可能性が高いので、過労に悩むかもしれません。また、発表が上手である事と、人間性が優れていることもまた別です。いくらYouTubeなどに上がっている講演の印象が良かろうと、実際に指導を受けるとパワハラ常習犯だったということもあり得ます。東大にいた時、ある研究室の教授は、自宅と研究室をカメラで同期しており、自分は家に帰っているにも関わらず、学生が夜まで仕事しているか監視していました。(所属している学生としては、監視というよりは質問しやすくて良いと言っていましたが、私は異常だと感じました。感じ方は人それぞれなのかもしれません。)私の指導教員は人格者で、今でも素晴らしい選択だったと思っています。オックスフォード合格も、先生の推薦なしには達成しなかったと思います。

また、いくら第一人者の先生であろうと、退官間近の先生に師事するのもあまり良くないことだと思います。PhDは卒業して終了ではなく、卒業後に研究者生活を送る上で、何度もお世話になる場面があるでしょう。また、産業界に行ったとしても、推薦状を書いてもらう必要がある場面も多いです。いずれにせよ、PhDを取る一つのメリットは、指導教員との強いコネクションができることなので、このメリットを活かせないのはもったいないです。若い先生であれば、長く友好な関係を築くことが出来ます。

とはいえ、そんなこと入る前に見分けるの難しいし、回避する方法もないのでは?と思うかもしれません。私なりに対処法を考え、実践したので共有させて頂きます。

1. 指導教員を2人にする

指導教員を2人にするというのは最も有効な手段になります。一人とソリが合わなかったとしても、もう一人の先生に師事すれば良いので、リスクが半分になります。オックスブリッジにおいて、この共同指導という形態は体感10%くらいの割合で存在します。オックスフォード機械学習PhDの先輩曰く、上手くいっている学生は大体共同指導の形態をとっているとのこと。私のケースでは、機械学習のエネルギー分野への応用という学際テーマを提案し、機械学習の教授と、電力分野の准教授の2人が共同指導教員で、2つの研究室に同時在籍となりました。これは、狙ったわけではなく、合格通知が来たら、結果として共同指導だったというものでした。しかし、振り返ってみると、以下のポイントがこの結果に結びついたのではないかと思っています。

1. 2人とも学部は同じ工学部
 情報工学専攻と、電力工学専攻で、専攻は異なるものの、同じDPhil in Engineering Scienceなので、入試のシステム上は同じでした。
2. 第一志望と第二志望の先生だったので、両方ともに入学希望を出した
 優先順位についての質問で、どちらの先生も非常に魅力的なので、どちらの研究室に選ばれたとしても光栄ですが、機械学習の理論自体に興味があるので、第一志望の研究室に行きたいです。しかし、作り上げた機械学習の理論は、実際に実験適用して、有用であることを証明したいので、第二志望の先生の実験設備を使用させて欲しい、と答えました。
3. そもそも2人の先生は、継続的に共同研究していた
 機械学習のエネルギー応用に関して、継続的に共同研究していて、そもそも教授同士が仲の良い関係にありました。これが一番大きかったのではと思っています。

2. 事前に学生に個人的にヒアリングする

やはり生の声に勝るものはありません。私は、その研究室に所属している学生と、同じ専攻に所属している学生の2人以上に状況を教えてもらいました。研究室のホームページから名前を検索すると、LinkedInやFacebookで連絡先を見つけることができるので、コンタクトを取ることができます。日本人であれば、関わりが薄くても話を聞いてくれることが多いですし、他の国の人でも自分と同僚になる可能性があると思うと真剣に聞いてくれます。やばい研究室は同じ専攻でも噂になっているので、大抵教えてくれます。

また、オープンキャンパスや、研究室の説明会など、オープンな場でこういう話を聞いても何も情報は得られません。人を集めるマインドセットで参加しているので、ネガティブなことを言いたくない心理状態だからです。素直に聞いても取り繕われてしまうので、心を開いてもらうことを勝ち得てから、真実を聞くことが重要です。そのため、個人的にSNSから連絡をとって話を聞く積極性は重要だと思います。

ちなみに、私の先生は両方とも前評判は非常に良く、人格者で有名なようでした。

3. 先生のSNSを確認する

これも有効な手段だと思います。特にTwitterは更新頻度も高いので、為人を知るには絶好のチャンスです。私の指導教員は、両方とも優しい人柄であることが伝わってきて、学生を褒めたり、就職のサポートをしたりする投稿を良くしていました。また、学会で出会った人のSNSを見ていても、先生を褒めている投稿を度々見かけ、人柄が良いことが伝わってきました。もちろん、これだけでは決定的な証拠とはならないのですが、価値のある情報ソースの一つだと言えます。

4. メールのレスポンスの速さを確認する

海外では、メールをすぐに返してくれる人は少数派です。送っても返事がなく、何度もメールを送らなければ反応してくれない事はザラにあります。何なら、複数回メールされない用事は重要でないと判断する、という信じられない基準を持っている人すら存在します。ちなみに、ケンブリッジで客員研究員させた頂いた教授は、非常に優しくて良い先生だったのですが、メールを全く見ない人で、電話以外方法がなく、非常に苦労しました。部屋に行ってもいないので、一日3回ノックをするということを2週間続けたこともあります。研究室全員コミュニケーションは困っているようでした。(でも、なぜか研究業績はすこぶる良い研究室でもありました。放任主義でも上手く行くトップレベルの自立した学生が集まるような、正のフィードバックループが回っているのでしょう。)すぐに返事くれなくて悩んでいる人は以下のように多く存在します。

だからこそ、すぐにメールを返信してくれる教授というのは、指導をきちんとしてくれる、学生に真剣に向き合ってくれる人として信頼できます。私の指導教員は二人ともすぐにメールの返信をくれる人で、基本的に24時間以内に返信をくれます。CCに入れたメールでもきちんと読んでくれていて、気になることがあればすぐにメールをくれます。見つけるのは大変ですが、特にコロナ禍では、リモートワークも多いので、こういう先生が良いと思います。メールを返信するのが早いのはそれだけ暇だという可能性もあるでしょうが、どちらかというと、相手を大事に思っているかどうかだと思っています。(二人とも研究業績は世界トップクラスです。)私の指導教員ではありませんが、学生の優秀さによって、返事の速度が露骨に違う人もいました。いずれにせよ、メールの返事が早いに越した事はありません。

最後に

研究室選びは、どんなに準備しても最後は運です。理屈抜きで、直感で分かる時もあります。また、イギリス大学院留学の最大のデメリットである金銭面の問題に関しては、以前のブログに書きましたので、読んで頂けると嬉しいです。
後悔のない研究室選びとなることを祈っています。


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