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【日向坂文庫#6】『光』道尾秀介(表紙 影山優佳)


小学生の利一は、自然豊かな小さな町で、周囲の大人たちに見守られながら、個性豊かな友達と色々なことに挑戦し、経験を重ねていく。

大人の視点から語られる


中高生のお話なら、青春の輝きに心がぎゅっとなるかもしれないが、小学生のお話を大人が読んで楽しめるのだろうか、と思いながら読み始めたが、そんな心配は無用だった。

このお話は小学生たちを描いているが、大人の視点から語られるのだ。大人の私たちにも読みやすい。

また、各章の終わりにあるとある人物の回想も、このお話に深い味わいを与えている。

「少年たちの冒険エピソード」という、なんというかあっけらかんとしたものではなくて、もう少し深いというのか、翳があるというのか、そういうお話なのだ。


大人になると少し恥ずかしい気がする大切なこと

それに、小学生は、大人になった私が思うほど、子どもではなかったのかもしれないとも感じる。

人間に感光度というものがあったなら、その数値はきっと、年を経るごとに減少していく。


作中のこの一言にはっとした。小学生の頃は、周囲で起こることを全身で受け止めて、一つ一つにまっすぐな感情を抱いて生きていたはずだ。

この作品の利一たちの毎日は輝いている。大人になると少し恥ずかしい気がしてしまう、優しさや勇気、夢を持つこと、あきらめないことを彼らは大切にしていて、その素晴らしさを改めて実感した。

大人になって、見ないふりをすること、受け流すこと、自分に言い訳をすることなどが上手くなってしまったけれど、少しはあの頃のように、目の前のことをありのままに受け止めることを思い出したい


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