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シリーズ「大人のための最先端地学」がはじまります

ジオリブ研究所所長、ジオ・アクティビストの巽です。

 これからの持続可能な人類の発展には「自然との共生」が必要だとよく言われます。そのためにはまず、私たちが暮らす日本列島、そして地球が、どのように誕生して進化してきたかを知っておくことが重要だと思います。そんな思いから、地学、特に固体地球や地質の最先端を紹介するシリーズを始めることにしました。

 今年2021年は、あの忌まわしい東日本大震災から10年目になります。最近はすっかりコロナ禍に振り回されている私たちですが、こんな時でも、いやこんな時だからこそ改めて地震大国に暮らしていることを忘れないようにしないといけません。
 決して地震や津波だけではありません。この国では火山噴火や豪雨による災害も頻発しています。
• 日本およびその周辺では、世界で起きるマグニチュード6以上の地震の約1割が発生している。2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以降はさらに高い割合になる。
• 日本には111、地球上の活火山の約1割が集中する。
• 日本は例年、インド、米国、インドネシア、中国などと共に、自然災害発生国別ランキングの上位常連国である。
• 日本の災害被害額は、東日本大震災以前でも世界の総被害額の約1割を占める。

そう、我が国は世界有数の「災害大国」なのです。

地震と火山分布のコピー

 この国が世界有数の災害大国となっている原因は、次のようなものです。
• 地球表面を覆う十数枚のうち4枚のプレートが日本列島周辺に分布し、互いに鬩ぎ合っている。
• そのうち、フィリピン海プレートと太平洋プレートが日本列島の下に沈み込む。これらのプレートの特性と相互作用によって日本列島には大きな歪みが蓄積して、地震が多発する。
• 北海道、東北、中部、関東、伊豆・小笠原、それに九州地方では、プレートが高速で沈み込むのでマグマの生成が活発である。
• 日本列島はアジアモンスーン地帯に位置し、降水量が多い。

 このような状況は今後も変わらないのですから、地震・火山噴火・豪雨などの災害が将来も必ず起きます。そればかりか、将来には未曾有の災害が私たちを襲うことは以下のことから明らかだと思います。
• 人口・機能の集中する地域を襲う首都直下地震南海トラフ地震は今後30年に80%程度の確率で発生する。
• 日本列島には未確認の活断層が多数存在し、これらは直下型地震を引き起こす。
• 人間活動に起因する可能性が極めて高い地球温暖化は、豪雨・水害を多発かつ巨大化させる。
• 最悪の場合この国を壊滅させる超巨大噴火は、今後100年に約1%の確率で発生する。

 しかし残念なことに、災害大国ニッポンではこれらの事実を踏まえた対応が十分に取られてはいるとは言えないのが現実です。やはり目の前の生活や経済活動が優先されているのでしょう。しかしこのままでは、この国は遠からぬ将来に必ず大きな打撃を受け、最悪では日本という国家、日本人という民族が喪失してしまうことすらあり得ます。
 こんな事態に陥ってしまわないようにするには、この災害大国に暮らす私たちが、災害が起きる原因をよく理解した上で、今後の対策をみんなで考えることだ大切です。政治や行政に頼っていてはいけません。なぜならば、彼らもこのような悲惨な将来は予想していない、または予想したくないからです。

 ここで述べたような災害については、高校の科目の範疇でいうと「地学」で学ぶべきものです。ただ現状では大学の受験科目に指定されていない場合が多いこの科目は、あまり多くの人たちが受講していません。
 このシリーズでは、この災害大国に暮らす人たちにもう少し「地学リテラシー」を身につけていただき、私たちの子々孫々もこの国で豊かに暮らしていけるようにみんなで考えていくために、「地球」「日本列島」の研究の最前線をお知らせして行きます。

さあ、一緒にジオリブしましょう!



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