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あすみ小学校ビレッジ ⒛お菓子な送別会 連載恋愛小説
「え~夏祭り2024を成功裏に終えることができた。みなの尽力に感謝する——と、村長がおおせです」
オサムに振られたスミくんは、とりあえずシッポを振ってみせた。
「短いあいだでしたが、たいへんお世話になりました。またすぐ会える気がします。湿っぽくならず、きょうは楽しみましょう!」
打ち上げは、龍次の送別会も兼ねていた。
「曲者たちをまとめ上げるのに骨を折った、いづみやさんに拍手~!」
「曲者ってりゅうちゃんのこと~?」
善は大人顔負けの合いの手を入れたあと「骨折してないよね…?」と泉のもとへ駆け寄った。
子どもも参加できるよう、日曜のお昼に商店街の定食屋さんでパーティー。龍次たっての願いで「おしゃべり天国ルミ」全面協力の「じゃんけん抽選会」を実施。
景品は、瑠美厳選の「わくわく詰め合わせ福袋」
各種珍味・チョココイン・べっこう飴・ポン菓子・きび団子などなど。
大人と子ども入り乱れての、血で血を洗うじゃんけんバトルがおこなわれた。
優勝は善、準優勝は龍次。仲良く健闘をたたえあう。
***
長女は、求められる役割をまっとうしがちだ。
しっかりしていないと、病弱な次女にかかりっきりの両親は気づいてはくれない。
洗濯や掃除、料理。小学校低学年から真似事はできるようになっていた。
とくに好きでもなく、上手にこなせるわけでもなかった。ほんとうは友達と遊びたかったし、漫画が読みたかった。
がんばればがんばるほど、ほめてもらえる。それだけがすべてだった。
社会人になってからも、その感覚が抜けていないことに泉は気づかなかった。
「ものすんごく、肩凝ってない?」と龍次に言い当てられるまでは。
その瞬間、心がほぐれた気がした。
自分は何者なのかよくわからない。誇れるものがなにひとつない。
今までだれにも言ったことがないのに、気がついたら龍次にもらしていた。
彼は真顔のまま「てきぱき」「聞き上手」「調整力」「フットワーク」「察する力」とすらすら列挙した。
鬱屈した気持ちをさっと打ち消してくれ、一緒にいると安らげる。
そんなひとが目の前から消えたら、自分はどうなるのだろうか。
(つづく)
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