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読書感想 遠藤周作 侍
またしても遠藤周作です。心臓を射抜かれてしまいました。すんごいですねこの小説。
実在した人物達をモデルとし、彼らが書き残した手紙などをもとに書いた作品のようなので、結構事実に忠実みたいですね。それにしたって、登場人物の内面描写が秀逸過ぎます。
作物のあまり育たない痩せた土地の領主である「侍」が、ローマ法王へ親書を渡しにいくという「お役目」に抜擢されます。お役目さえ果たせば、もともと所有していた土地を返して貰えるという希望だけを頼りに、彼は使節団のひとりとして船に乗ります。
さまざまな政治的術策が交錯するなか、その渦に巻き込まれ翻弄される侍達の物語です。海を超えて、メキシコ、スペイン、ローマへと七年に及ぶ旅路の中、葛藤につぐ葛藤のはざまで成長していく彼らの心が奥深く描かれているのです。それ自体はそれほどド直球に書かれているわけじゃないのに、会話ややり取りの描写、更には周囲の環境の描写(異国の風景や海とか)が加わることによってとても胸に迫る文章になっていると私は思いました。あたかも自分がその経験をしているかのように思わせる、文字を追わずにはいられない描写力っていうんですかね?上手く表現出来ませんが……
作者は、日本人にとっての宗教とは何か、自分にとっての宗教とは何かという、信仰に対しての向き合い方を深く深く追求したのでしょうね。
俺は形ばかりで切支丹になったと思うてきた。今でもその気持ちは変らぬ。だが御政道の何かを知ってから、時折、あの男のことを考える。なぜ、あの国々ではどの家にもあの男のあわれな像が置かれているのか、わかった気さえする。人間の心のどこかには、生涯、共にいてくれるもの、裏切らぬもの、離れぬものをーー、たとえ、それが病みほうけた犬でもいいーー求める願いがあるのだな。あの男は人間にとってそのようなあわれな犬になってくれたのだ
ひろい世界、あまたの国、おおきな海。だが人間はどこでも変わりなかった。どこにも争いがあり、駆引きや術策が働いていた。中略
侍は自分が見たのは、あまたの土地、あまたの国、あまたの町ではなく、結局は人間のどうにもならぬ宿業だと思った。そしてその人間の宿業の上にあの痩せこけた醜い男が手脚を釘付けにされても首を垂れていた。
「あの男」「痩せこけた醜い男」とはイエスキリストのことです。
一文字も取りこぼす事なく集中して長編小説を読むすることは、(私には)なかなかない経験です。読んで良かったと心から思える素晴らしい作品でした。
読んでいただきありがとうございます。皆様の今日が良いものとなりますようお祈り申し上げます。
※朝4時に目が覚めて寝ぼけながら書いたものでして、文章がグダグダなところを修正しました。
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