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読書感想 萩原朔太郎 猫町

萩原朔太郎は、日本近代詩の父と呼ばれる詩人です。この作品は、萩原朔太郎の数少ない小説みたいです。青空文庫で読みました。

薬物中毒のため療養している主人公が、散歩しているうちに猫ばかりの不思議な街に迷い込んでしまう話です。

街の様子が、とても細かく描写されています。読んでいると、自分も同じような空間に迷い込んでしまったような、不思議な感覚になります。

ドカン!というインパクトはないですが、
あとからあとからじんわりと、
ああ、そうだね、そういうことあるよね……
という感情が湧き上がってくる、噛めば噛むほど味が出てくる作品のように思います。(意味わからん)


見慣れている街の風景が、見る角度やその時の気分でやけに美しく見えるときがありますよね。田舎に住んでいると、そういうことがよくあります。(私だけかもしれないけど……)

そして、こういう幻影のような街に迷い込んじゃう話、現実世界でもたまに聞きますよね。 
子供の頃に偶然見つけた場所にもう一度行こうと思ってもどうしても行けないとか。
たしかちびまる子ちゃんにもそのような実話エピソードがありましたもんね。


そういえば私も似たような経験があります。
23歳くらいのとき、急に太ってしまって、実家の近所を夜ウォーキングしたことがありました。歩いて15分くらいのところにある野球場を目指して、週3日くらい歩いていました。

 その野球場付近は閑静な住宅街で、坂があちこちにあって、迷路みたいに入り組んだ細い道ばかりでした。
そしてそこは美しい豪邸が並んでいる、なんとも風情のある、幻想的な、不思議な場所でした。学校とは逆の方向にあったので、近所ではあるのですが、あまり足を踏み入れたことのない場所だったのです。

その後実家を出て、しばらくその道を通ることはありませんでした。

しかし、最近その道を歩く事があったのですが……。

なんだろう、全然昔と違うの。
単に家々が古くなったとか、建て替えられたとかじゃなくて、何から何まで全然違うんですよ。あそこにあったあの家は?あれ?こんな古いアパートあった??ここ竹やぶじゃなかったっけ??
みたいな。


どういうことなのかさっぱりわからなかったので、考えることをやめました。

でもやっぱり不思議で、時々ストリートビューでその付近を見てみるのですが、納得いきません……。

私は極端な方向音痴なので単純に道が違うとか、街並みを美化して記憶してしまったとか、おおかたそんなところだろうと思うのですが。

もしあの道が異世界だったとしても、普通に納得ができるくらい、幻想的な街並みだったと思います。
きっともう、魔法がとけてしまったのでしょう。 

「猫町」を読んで、そんなことを思い出しました。





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